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そうして二人は掃除道具を一式借りて掃除を始めた。まずは天井にはってある蜘蛛の巣をとろうとりんははたきを天井にのばすがぎりぎりで届かない。それを見たしぶ鬼が僕がやるから、とはたきを変わろうと手を伸ばした
「・・・すみません。私は背が低いから・・・」
「いーよ気にしなくて、代わりに掃き掃除お願い」
しぶ鬼自身も、ふぶ鬼にくらべれば背は低いが、平均的な男性ぐらいの背丈はある。自分より小柄な春鬼をみて、少し同情した。
(でもすごく強そうだし・・・今後のことも考えて関係は良好でいないとな)
冷静にそんなことを考えているうちにしばらく経ち、掃除が終わる。辺りは夕暮れになっていた。今後の予定ではこのあと、八方斎の忍者隊会議があるらしい。きっと、そこでは今後の彼らの行動が把握できるはず。戦をさせないためにもりんは八方斎の信頼を得ることを始めるべきだと考えた。
そんなことを考えているとしぶ鬼が声をかけてくる。
「春鬼くん。僕さ、一応ドクたまのなかではリーダーやってるんだ」
「リーダー?しぶ鬼さん、立派ですね」
立派といわれ、少し照れたように笑うしぶ鬼。
「まぁ、なんか自然にそうなったんだけど。父がドクタケ水軍の準備室室長をやってるのもあって・・・」
「ドクタケは水軍もあるのですね」
ならば海に出ることもあるかもしれない。しぶ鬼との交流をしていれば、水軍の情報も手に入りそうだ。
「うん。とりあえず、これからよろしく」
「はい・・・しぶ鬼さん」
そっと手がさしのべられる。りんはどうしたらいいのかわからず、それを見ていた。
「握手!一緒に仕事する仲間だし、同い年だし、敬語はいいよ。気軽に話してくれ」
「あ、・・・あぁ。わかったよ。改めてよろしく、しぶ鬼」
りんは仲間という言葉がよくわからなかった。彼女は厳しい忍者の里で厳しい親の元で育ち、友達や仲間を作ったことがない。忍に馴れ合いは不要だときつく言われて育ってきただけに目の前にいるしぶ鬼やドクたまのような、互いが気持ちを共有し笑い合うような感覚に、うまく対応できない。
「おーい、しぶ鬼、春鬼、忍者隊会議があるってさ〜」
遠くからふぶ鬼の声が聞こえる。二人が部屋を出るとふぶ鬼ははやくはやく!と廊下をかけていく。
「八方斎さまは遅れるとすぐ機嫌が悪くなるから、急がないと!行こう春鬼!」
「うん!」
急いで会議室に向かうドクたま達。部屋の前まで来て戸を開けると山ぶ鬼がすでに来ていた。他のドクタケ忍者隊はドクたま達の後ろからぞろぞろとやって来ていた。
「ふー、ぎりぎりセーフ!」
「ほら、皆はやく座ったら?」
四人は山ぶ鬼のまわりに座る。すぐに後からやって来たドクタケ忍者隊。最後に首領の八方斎がやってくる。片手に大きな地図を持っており、それを部屋の中央へ広げた
「今回、集まったのは現在進めているA城を討ち落とす計画についてだ。A城はB城とも仲が悪くいつも戦をし消耗が激しくなっているのは以前話したな?」
八方斎はその凶悪な顔でA城とB城を地図で指差す。
「その隙をみて目障りなA城へ奇襲をかける事になった。B城との戦で疲れきってる最中に我々が奴等を襲うのだ・・・」
「さっすが八方斎様頭がでかい・・・じゃない、冴えてます!」
隣で聞いていた大黄奈栗野木下穴太は八方斎の考えに賛同する。りんはその作戦を聞いてさっそく戦をしようとしているドクタケに思考をフル回転させた。皆がA城とも戦をするつもりで話を聞いている最中、りんがはい、と手を挙げた。
「なにかな研修生の春鬼」
「作戦内容は概ね理解しました。しかし今A城を攻めるのは危険と思います。これはあくまで私の考えですが・・・」
「構わん。話しなさい」
りんは深呼吸する。半分本当、半分は予想。つまりはったりだ。とりあえずこの戦を八方斎に考え直させればよいのだ。しぶ鬼は心配そうにこちらを見ている。
「確かに表向きはA城とB城の仲は悪いと聞きますが、なぜか仲が悪いという評判しか聞かないのは少し怪しいと思うのです」
「というと?」
「喧嘩には必ず勝った負けたがでてくるものです。しかしこの二つの城にはそれがないということは・・・」
「A城とB城は仲の悪いふりをして、実は仲がいいかも・・・てこと?」
ふぶ鬼がぼそりと呟く。
「じゃぁ、この地図の位置関係からしてこの二つの城の目的は・・・ドクタケ城!?」
地図を改めて見ると、A城とB城の近くにはドクタケがある。もし、この2つの城に攻められてはさすがに戦が強いと言われているドクタケ城でも押されてしまうだろう。
八方斎はなるほど、と春鬼を見る。
「では今は攻めず、A城とB城を調べる必要があるな・・・ふふふ、春鬼、よい推理だ!将来が楽しみだな」
八方斎は春鬼の話を聞いて上機嫌になる。その後、話は戦をすることではなくA城B城の情報を集めることへと変わった。りんはほっと安心する。どうやらすぐに戦をする方向ではなくなったようだ。
話がまとまり、会議が終わる。ドクタケ忍者隊が全員出ていき、ドクたまはわっと春鬼を囲んだ。
「春鬼がいきなり手をあげたときはヒヤッとしたよ!」
しぶ鬼がそういうと周りも頷く。
「A城とB城が本当は仲がいいかもっていう推理、すごいじゃないか!プロみたいだったよ!」
「八方斎様も感心してたし、すごいわ!」
次々と誉められりんは謙遜する。
「い、いや、たまたまそう思っただけで・・・実際はわかんないし」
「でも春鬼の話を聞いてあの堅物な八方斎様が考え直した訳だし、春鬼くんはすごいよ!な、ふぶ鬼!・・・ふぶ鬼?」
ずっと黙ってふるふると震えていたふぶ鬼がサングラス越しではわからないが眉間にシワを寄せてりんを見ていた。
「武術も得意で戦術にも長けたドクたま・・・」
「ふぶ鬼、怒ってるの?」
「ううん・・・今なら・・・今なら忍術学園のやつらも楽勝だなって!」
その言葉に一斉に彼らは笑う。
「確かに」「強くて賢くてかっこいい春鬼くんを自慢したい〜!」
なぜかとても嬉しそうなドクたま達に呆然とするりん。ひとしきり笑ってけろりとした山ぶ鬼が部屋を出ようとする。
「さってと、次は夕飯の時間よね。あたしいちばん〜!」「あっ、山ぶ鬼まてよ」
彼らはそのまま立ち上がりわいわいと騒ぎながら部屋を出ていく。部屋にはしぶ鬼とりんだけがのこった。
「はは、誉められちゃった・・・」
「ドクたまはお互いライバル意識とかまったくないから・・・ましてや相手は八方斎様だし」
でも、としぶ鬼は腕を組む。
「春鬼なら将来ドクタケの隊長になれちゃうかも」
「よしてくれよ。自分は今日ドクタケに入った研修生だよ?まだまだわからないことはたくさんあるから・・・じゃ、俺もいくよ」
そういってりんも部屋を出る。一人残ったしぶ鬼は、言葉ではああ言ったものの、どこかでわずかに違和感を感じていた。
(どうして、春鬼はあそこであんなことをいったんだろ?)
ただ、黙って聞くこともできたはずだ。しかしそれをせず、あえて助言した。ドクタケ城の為だといえばその通りなのだが。しぶ鬼は考えてみたが、その答えはでなかった。その前に彼もお腹が減ってしまったからだ。
「やめやめ。ぼくもご飯たべにいこーっと」
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