春鬼を殺せ1
ドクタケ城の近くまで来たがりんはすぐに入らず高い場所へと上がる。
上からドクタケ城の様子を見ると忍者隊がいたる場所へと配備されており容易には忍びこめそうもない。りんは裏口をみる。そこには見慣れた姿が見えた。それは警棒をもった山ぶ鬼の姿だった。
「やっぱりドクたまも私を探しているみたいだ・・・」
りんはドクタケ城の裏口へと向かう。辺りをうかがいながら、門のそばに寄る。
人が近づくのを感じた山ぶ鬼が杖を構えて物音がした方をみつめる。小さな声で山ぶ鬼は呼び掛けた。
「あなた誰?」
「・・・春鬼」
りんは門の影から出てくる。山ぶ鬼はりんの姿をみて安心したようだった。
「春鬼くん・・・!」
笑顔を向けたのもの一瞬。彼女はすぐにりんをにらむ。
山ぶ鬼は近づいてきたりんに杖を突いた。突然の攻撃にりんはひるんでその場に屈みこむ。
「よくぬけぬけとやって来たわね!覚悟!」
そのまま容赦なく杖を打ち込もうとする山ぶ鬼の一撃をかわす。
慌てて距離をとり山ぶ鬼と向かい合う。
「・・・この森の先には行かせないわよ」
「え?森?」
そうして杖で指したのは裏口から続く森の細道。
なぜ彼女はいきなり森の先など言い出したのか、りんは首をかしげた。
「この森の先に行かれると、忍術学園の方に出てしまう!その前にあんたをここでやっつけるわ!」
「いや、山ぶ鬼・・・」
情報をだだもれしていると言いそうになってりんは気づく。彼女はそこの森へと逃げろと言っているのだ。
なぜそんなことを言うのかと考えていると再び勢いのある杖先が振りかざされる。逃げろと言う割には容赦のない攻撃にりんは冷や汗をかく。何度か山ぶ鬼の攻撃を避けて転がる。りんは山ぶ鬼と距離を縮めてその肩をつかみ身体ごと投げる。
「きゃぁ!」
「ごめん!」
山ぶ鬼はぽふっと地面に身体をつけて起き上がるとすでにりんの立ち去った森の方をみる。彼女は一瞬山ぶ鬼の方へと振り返ったがすぐに山ぶ鬼に言われた通り杖で指した細道の方へと走り去っていった。その背中姿をみてほっとする山ぶ鬼。あの先にはドクタケ忍者もおらず、後は残ったドクたまの皆が誘導してくれるはずだった。
「春鬼くん・・・」
去っていくりんの姿が消える前に、最後に山ぶ鬼が叫ぶ。
「気を付けてね!」
その言葉を背に、りんは森の奥へと駆け抜けていく。
その細道を抜けると枝分かれの開けた道へでた。りんはとっさに立ち止まり、考える。この道は自分が通ったことのない道なので、どちらへいけばいいかわからない。
「って、そもそも私はどこに向かってるんだろう・・・」
山ぶ鬼の言われた方に逃げるようにここへ進んでしまったので冷静に考えて自分はどこへいけばいいのかわからない。その前にしぶ鬼にも会わなければいけないのだ。
「やっぱり戻った方がいいのかな・・・」
血迷った考えが浮かんだとき、木の上からとつぜん降りてきた赤色の忍者服。追っ手かと刀を構えて相手をみると、それはいぶ鬼だった。
「帰っちゃだめだよ!」
そういって彼は懐からくないを取り出す。
「みんな君が来るのを待ってるんだから。春鬼!」
素早くくないをふるいりんを襲ういぶ鬼。その動きはりんでさえも追い付くのが精一杯だ。普段はのんびりと温厚な雰囲気のいぶ鬼だが、その立ち振舞いは厳しい鍛練を受けてきたりんでも引いてしまうことがあるぐらいだった。お互い黙って何度も攻防を続けると険しい顔をしていたいぶ鬼がふと笑う。
「君との生活楽しかったよ。僕ずっと君が帰るのを待ってるから」
その瞬間、いぶ鬼の力がふわりと抜ける。その隙をりんは逃がさずいぶ鬼の身体を押し退ける。その力に抵抗する様子もなく、彼はその場に倒れこんだ。りんはその姿をみて、身体が固まる。
「いぶ鬼・・・私は君にひどいことしてばかりだ」
「・・・やっぱり春鬼は優しいや。ほら、誰も来ないうちにはやく行けって!右のほうだよ!」
倒れたままいぶ鬼は顔をあげて言う。いぶ鬼はみんなが待っていると言っていた。
後ろ髪を引かれる思いになりながらもりんは右の道を走った。走りながらようやく彼らの目的がわかってきた。目指す先は彼らがきっと教えてくれるはずだ。
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