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りんはしぶ鬼の言う通り真っ直ぐ林を抜けるとふとみたことのある道へ出た。そこは以前にも寄った事のある忍術学園への道だった。

りんの視界の先に人影が見える。ゆっくりと様子をうかがいながら近づくと、それはドクタケ忍術教室の教師、魔界之小路だった。

「来ましたね。りんさん」
「はい・・・彼らに、ドクたまに助けられました」

りんはうつむく。正直りんは魔界之小路に合わせる顔がなかった。元は彼の依頼でやって来たりんの課題。それが最後で失敗してしまった。その姿を見て魔界之小路はりんの肩をぽんぽんと叩く。それは落ち込むなと言う彼なりの励ましだった。

「りんさん、私はむしろ感謝してます。彼らは『ただのドクタケ忍者』にはなりたくないと言ってましたから。君のお陰ですよ」
「・・・」

それでもなお黙っているりん。その理由を魔界之小路は知っていた。恐らく彼女は里の事を考えているのだろう。小柴との直々の約束を果たせなかった自分はきっと見限られるだろうと不安になったのだ。しかし、小柴はそんなことで彼女を見限るような者ではないと魔界之小路は知っている。

「君はもう一人じゃないんだから。胸を張って里に帰りなさい!」
「一人じゃない・・・」

ひたすら里や両親の教えにそって、一人前の忍者を目指していたりん。しかし今は違う。ここにはドクたま達が待っているのだと言うことをりんは思い出した。再び彼らに会うときは自分だって強くならなくてはいけない。

「そうでした。私、すぐに里に帰ります。魔界之小路先生・・・いままでありがとうございました!」

りんは深々と魔界之小路に頭を下げる。そして彼女は再び駆け出した。自分の任務を全うするために里へ向かって走り出していた。彼はそれをあたたかな目で見送っていた。そう、彼女のお陰で彼らはこれからのドクタケ忍者があるべき姿を知ったのだから彼は彼女に本当に感謝をしていた。

魔界之小路は辺りを見回す。ドクタケ忍者達はここまでくる気配もなく、彼の護衛がなくともきっと明日の朝には彼女も無事に里につくだろう。魔界之小路はドクタケ城に戻るために、彼女とは反対の道をゆっくりと歩いて行った。


場所は変わり、ドクタケ城ではドクたま四人が戻っていた。彼らは木野小次郎竹高のいる大名の間で四人は頭を下げていた。いつもは和やかな空気のドクタケ忍者だが、この時ばかりは気が張りつめている。

「表をあげるがよい。ドクたま達よ」
「はい」

彼らはゆっくりと頭をあげて竹高とその隣に立つ八方斎を見る。八方斎は一歩前へ出て、彼らをぎろりと睨んだ。

「春鬼は倒したか?」

その問いにしぶ鬼はれっきとして答える。

「はい。八方斎さまのおっしゃるとおりに、始末して参りました」
「しかし証明はできんな・・・それは本当か?」

やはり八方斎はドクたまの仲間であるりんを本当に殺したのか怪しんでいるようだった。彼らはまだ忍としては未熟であり、共に過ごした仲間をそう易々とは殺せまいと思っていた。しかししぶ鬼はそんな八方斎の問いただしにも動じずに淡々と答える。

「はい。こちらをもって参りました」

彼が取り出したのはりんの髷をくるんだ物だった。それを見た八方斎は近寄りその髷をまじまじとみた

「うむ。確かにこれは春鬼の髷だが・・・首をもってこない限りは・・・」

ちらりと八方斎は竹高の顔をみる。竹高は先ほどから顔色を全く変えていない。

「殿、春鬼の行方を追い、確実に亡きものにしたのか調べる必要があるのではないでしょうか」

八方斎は竹高に春鬼の追跡を提案をした。さすがのしぶ鬼もその提案にすこし反応をする。とっさに四人は竹高の顔を見た。竹高はその髷をじっと見つめて一言言った。

「必要はない」

「はいっ!ただいま忍者を派遣して・・・ってえぇ?」

八方斎は竹高は当然春鬼を追跡するものだと思っていたので予想外の言葉にずっこける。

「なぜです。ドクたまに春鬼を始末できるようなことはできないと思うのですが・・・」

竹高はゆっくりと立ち上がりしぶ鬼のそばに近づきその髷を取り上げた。そしてにやりと笑う。

「なぜ、とはこちらが言いたい。この通り、この者たちは証拠を持ってきたであろう。春鬼は死んだ。ドクたま達の手によって始末したのだ。そうであろう?しぶ鬼?」

いつもの眼差しを向ける竹高。その先に含まれた意味をしぶ鬼は知ることができない。しかし、渡りに船だと彼は頷いた。

「はい。仰有る通りです」

その言葉を聞いて竹高はその場にいる皆に告げた。

「この通りだ八方斎。春鬼はドクタケ忍術教室の研修生たちによって亡くなった。これ以上の詮索は無意味である。よいな」

はぁ、と八方斎は渋々頷いた。ドクたまも全員が心底安心した。これでりんもこれ以上ドクタケに追われることはないのだ。竹高に部屋を出るように言われたドクたまたちは早々に部屋を出ていった。竹高の部屋には八方斎と竹高の二人になった。ドクたまたちが立ち去ったのを確認して、八方斎はため息をつく。

「まったく・・・殿は甘いですぞ・・・」
「なにを言っておる。浅はかであるぞ。八方斎」

竹高はその場にあぐらをかき座り、りんの髷を握りしめる。

「春鬼は、ドクタケに必要な存在である。あれを殺すなどと、もったいないであろう」

そう言う竹高は心底嬉しそうだった。その様子をみて、八方斎は黙る。竹高は気に入ったものは必ず手に入れるどこまでも強欲な武将である。そこまで春鬼を求めるならば、八方斎も今回の件は見逃すことにしようと思ったのだった。

自室に戻る途中、先頭に立って歩いていたしぶ鬼はふと立ち止まった。周りが不思議そうに彼をみる。

「どうしたの、しぶ鬼」
「竹高様は全てをご存じだったんだ」

おそらくりんがくせ者だったということも、自分達が真実を言っていないこともすべてお見通しなのだろう。しぶ鬼は竹高の読めない瞳を思い出す。

「恐ろしいお方だ・・・いつもは変だけど」
「?」

突然呟いて再び歩き出したいぶ鬼を周りは不思議そうに見ていた。



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