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朝日が昇っている。ここはりんの忍の里。あれから休まずドクタケ城を去ったりんは無事に自分の故郷に戻ってきたのだった。
約三ヶ月ぶりの故郷。彼女が旅だった頃はまだ桜の花が咲く前の頃だった。今では目が冴えるような緑が生い茂っている。りんの体は疲れきっていたが休むわけにはいかない。足はこの里の長である小柴の元へ向かっていた。

「りんです。ただいま里に戻りました」

家の門の前に立ち声をかけると門から見知った家来の小僧がでてきてりんの姿をみて慌てて小柴を呼びに言った。しばらくすると小僧が戻ってきて部屋に上がるように門を通らせる。
広い部屋に通されると、その上座には小柴が座っている。りんはその場に向かい合うように座り頭を下げた。

「・・・戻って参りました」

りんの言葉に小柴は頷く。

「よく帰ってきましたね。でも、少し早いように感じるね」

小柴の言う通り、りんが帰ってくるには約束の日よりも二日早い。それはなにを意味するか、小柴にもわかっていた。

「はい。三ヶ月という日数を、守れませんでした」
「戦をしたのかい」
「いえ・・・私の正体が知られてしまい、やむ終えず逃げてきました」

小柴は怒るわけでもなくただりんを見つめる。その瞳にりんは真っ直ぐ見返す。

「そうか。ここまで来るのは大変だっただろうね」

りんは決めたのだ。自分は始めこそ一人前の忍者になるために、任務のためにこの課題を受けた。しかし彼女はもはや課題などは気にしていない。そこで出会った仲間に再び会うために、りんはもう一度、自分の目指すべき忍術を学びなおすつもりだ。

「失敗したのに落ち込んでいないのはどうしてだい?」
「課題を経て、学ぶものがありました。私はまだ未熟です・・・落ち込んでいる場合ではないと、思っています」

小柴はだいぶんと短くなった髪型になったりんの姿に、様々なことを察する。実のところ、定期的に魔界之小路から伝達が届いており、彼女の生活や様子は聞いていた。

そして小柴の目的はドクタケに戦をさせないというものだけではなく、りん自信の変化を試していたのだった。りんは里や親の教えを鉄則とし、正義感はあるが、人にたいして無機質のように育ってしまった一面があった。小柴はその一面を危惧し、今回の課題をりんに託したのだった。

「・・・魔界之小路先生の仰有った通りだった。りん、あなたは変わりましたね」
「はい」

りんはその言葉に素直に頷く。小柴は穏やかな笑顔を見せた。里の長である小柴はりんには笑顔を見せたことが一度もなかったのでその笑顔を茫然として見てしまう。

「何を驚いているのですか。課題には失敗したのです。あなたは。これからもこの里でしっかり精進するのですよ」
「は、はい!」

そう、彼女の本当の課題はこれからだ。いつか迎えにくる彼のために、りんは一人前の忍者になり・・・彼の側で共に戦うのだ。さながらそれは、大名と軍師のように。

りんは小柴に挨拶を終え、屋敷を出る。彼女の親にも帰ったことを伝えねばならない。りんはひとつおおきな伸びをして再び歩き出す。教えの融通の聞かない親ばかりなので、恐らく説教が沢山来るだろうなとりんはすでにくたびれる思いだ。

顔を上げると、高く昇った太陽が彼女を照らしていた。昔は冷たい鉛のように見えたこの里が今ではとても優しく思えるのだった──。


春鬼を殺せ ─完─




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