出城をつくれ1
「はぁ〜出城作りか〜」
いぶ鬼はドクたまの集まった部屋のなか、刀の手入れをしながらふとぼやく。
「忍術学園を攻撃するための出城作りでしょ?」
山ぶ鬼がそうしぶ鬼に聞いてくる。そのしぶ鬼は、昨夜ドクタケ忍者隊部隊長の木下穴太に言われた事を思い出す。
『この出城ができれば、ありったけの火薬と大砲を用意して、忍術学園を一網打尽にできる・・・しぶ鬼、出城の出来はドクたまにかかっているぞ!』
「・・・て言ってたし、やるしかないよね〜」
渡された設計図の出城はとても簡易的なものでドクたまでも設計は可能そうだったがそれを一週間でつくれと木下穴太はいったのだ。一週間の期間、5人で出城を作るのはなかなか難しい。なので期間を延ばして欲しいとりんはそうしぶ鬼にお願いしたが彼は半分諦めたように答える。
「きっとそのあたりの事は部隊長も何にも考えてないと思うし・・・一週間を変える気はないと思うよ。とにかく適当に出城っぽいものを作ればいいんじゃない?」
「え・・・適当すぎでは?」
ドクタケはそんなもんだよとふぶ鬼もやる気なさげに言う。
「そもそも、忍術学園を倒す計画もうまくいったことがないし・・・」
「そ、そうか・・・とりあえず、その出城作りは明日からなんだよな?じゃぁその場所を今日でも確認していかないか?」
りんの提案にいちばんに反応したのはいぶ鬼だった。やけに気合いが入っているいぶ鬼に周りは疑問に思った。
「どうしたんだよ。気合い入ってるじゃん」
そんな言葉にいぶ鬼はいいだろ、とぶっきらぼうに答える。しかし周りはいまいちやる気がでないようで、りんの下見に付き合う気持ちも無さそうだった。いぶ鬼は立ち上がり、りんの元へ寄る。
「じゃぁ、春鬼と僕だけで行こう」
「うん。そうしようか」
りんも立ち上がり、いってくると三人に言うとやはりやる気の無さそうにいってらっしゃ〜いと声がした。
ドクタケ城をでて、部隊長からもらった地図を頼りに山道を掻き分けて登る。しばらく林を歩くと見晴らしのよい平地に出た。見通しがよく、ちらほら桜も咲いている。山に囲まれたその景色のなかには大きく広い建物があった。りんは指を指していぶ鬼に聞いた。
「あれが忍術学園?」
いぶ鬼はうんと頷いた。その表情はなぜか出発する前の様子と比べるととても落ち込んでいるように見えた。するといぶ鬼はふっとりんに言った。
「春鬼、僕みんなの前ではあんな風にしてたけど、実は出城なんて作りたくないんだ」
「ええ?そうなの?」
「うん、君に話を聞いてほしくてここに来たんだ」
いぶ鬼の狙いはりんと二人きりになるため。彼はドクたまには聞かれたくない話をするため、ここまで来たのだった。
りんといぶ鬼はその平地に座り込み、しぶ鬼の話を聞く。彼はぽつりぽつりと語り始めた。
「実は忍術学園に仲のいい友達がいるんだ。同い年の金吾っていうんだけど・・・」
「うん」
「休日は一緒に過ごすこともあって、金吾といるのは楽しいし、大切な友人なんだけど・・・僕はドクタケで金吾は忍術学園、敵同士だからなかなか大っぴらには会えなくて」
二人は立場上表立っては会えず合間を縫い、ひそかに会って仲良くしていたらしい。
「僕がドクタケ忍者になったら、金吾は僕のこと嫌いになって、もう会ってくれないかも。ましてやこんな出城なんか作ったら・・・」
はぁ、と深いため息をついていぶ鬼は肩を落とす。大事な友人がこの出城のせいで失ってしまうかもしれない。りんは優しい言葉も考えたが、ここはあえていつも通り、彼女が幼い頃から突きつけられた教えを彼に伝えることにした。
「しかたない。だって忍の世界はそういうものだから。友と思っても明日には敵になるかもしれない。いぶ鬼、君はもっと自分が忍者だという自覚をもったほうがいい」
「わかってる!わかってるけど・・・」
いぶ鬼は泣きそうな顔をしている。きっと自分の立場と本心がうまく折り合いがつかないのだ。
「しっかりするんだ。出城を作る気があるのか?無いなら明日は来なくてもいいんだ」
「・・・」
いぶ鬼はしばらくうつむいて考えたがりんを見て、決心したようだった。
「・・・僕は・・・ドクタケ忍者だから、出城、作るよ」
ぐっとこらえるようにいぶ鬼は言い切った。そして、取り繕うように笑みを浮かべる。
「春鬼、僕の話きいてくれてありがとう。・・・君みたいな人がドクタケ忍者でよかった。じゃないと僕、迷ってたかも」
りんはそんないぶ鬼を、どんな気持ちで見ていいのかわからなかった。いぶ鬼は下見もしたし帰るよ、そういって踵を返す、悲しさのまじるいぶ鬼の背中を見て、りんはドクタケ城へと帰る足を止めた。
「俺、もう少しここを調べてみる。いぶ鬼は先に帰っててくれ」
「わかった」
いぶ鬼の背中が見えなくなるまで見送り、りんは改めて平地と、そこから見える景色を眺めた。
「忍術学園、か」
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