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りんは忍術学園の鐘楼を目指し、しばらく山道を下ると開けた道へでた。正面に門があり看板には「忍術学園」と書かれてあった。りんは塀を登り侵入しようとすると怒った声が遠くから聞こえた。

「あ〜!塀を登って侵入するのはやめてください!」
「バレた・・・あの、一応忍者ですから」
「忍者でもダメです。学園に入るなら入門票にサインしてください!」

事務員と名札のある少年にばっと塀の下から入門票と筆を渡される。どうやら入門票にサインをすれば入れさせてもらえるらしい。忍者の学園と聞いていたので警備が厳しいと思っていたりんは拍子抜けした。さらさらと名前に春鬼とかき事務員に渡した。

「はい・・・確かに受けとりました。あれ?君はドクタケ忍者?見たことないけど」
「ドクタケ忍者研修生の春鬼です。金吾くんに会いに来ました」

見知らぬ人物から金吾、と聞いた事務員はおや、と驚く。しかしそれ以上かんがえないのか、案内してくれることになった。

「金吾くーん、君にお客さんだよ」

長屋のような場所を通され、事務員が名前を呼ぶと部屋から木刀を持った少年がやって来る。りんをみるなり、誰?と言ってきた。

「ドクタケ研修生の春鬼です。いぶ鬼と共にドクタケ城に研修しています」
「いぶ鬼と知り合いなの?・・・もしかしていぶ鬼になにかあったの!?」

悪い想像をした金吾はりんにそう訪ねてきた。その相手を本気で心配する様子をみて、どうやら本当にいぶ鬼の友人らしいとりんは思った。

「違います。・・・いえ、案外違わないかも。ええっと」

りんが、事務員をちらりと見る。あまり広く知られたくない情報だと悟った彼はにこりと笑ってその場を立ち去った。

「僕はこれでもどるから。帰るときは出門票を書いてね〜」

二人になると、金吾は自分の部屋にはいるように言った。りんと金吾は部屋の真ん中で互いに向き合う形になる。改めてりんは、ここまで来た用件を話す。

「今、ドクたまはドクタケ忍者になるためにドクタケ城に研修生として学びに来ています」
「そうなんだ・・・まぁ、そんな時期だよね。僕も実習はあるし」
「そこでドクタケ忍者部隊長に忍術学園を倒すためにドクたまで出城をつくれと言われました」
「ふーん・・・出城ね。忍術学園を倒すための・・・」

落ち着いた金吾の様子にりんは驚く。忍術学園の生徒は皆こんなに冷静なのだろうか?そんなことをかんがえると金吾は、ん?と考え直している。

「出城?忍術学園を倒すため?」
「はい」

一瞬二人の間に沈黙が続く。

「ええー!?忍術学園をたおすために出城をドクたまがつくるの!?」
「え、今理解したんですか!?」

冷静かと思いきや理解力が低すぎて反応が遅れただけだった。この金吾に若干心配しつつもりんは続ける。彼女は懐から二つの紙を取り出す。

「これは出城の地図と設計図を写したものです。これを金吾さんに託します。ドクたまは一週間でこれを作り、火薬庫を設備し、大砲をかまえ、忍術学園を総攻撃するそうです」

金吾はそれを受け取り、険しい顔になる。恐ろしい作戦を知り、すぐにでも先生に伝えねばと思った。しかし、大きな疑問もある。それはこの目の前にいる春鬼についてだ。

「君はドクタケ研修生だろ?どうしてこんな大事な情報を僕に教えるんだ?目的がみえないまま、この情報を信じてもいいのか、わからないよ」

りんは金吾の言いたいことは最もだと思った。あまり忍術学園の生徒に多言をしたくなかったが、この作戦を信じてもらうためには仕方ないと、りんは事情を語ることにした。

「・・・いぶ鬼が悲しんでいたから」
「いぶ鬼が?」

りんはうなずく。

「大事な友達なのに、敵として襲うのが辛いといっていました。とても悩んでいたから・・・ならいっそこの出城作戦が失敗してしまえばいいと思いまして」

建前はいぶ鬼だが、真意は作戦の失敗をさせることだった。この出城が出来てしまえば忍術学園と戦いになってしまう。それでは忍術試験に合格できないと思ったりんは忍術学園にこうして情報を漏らすことで戦う前に手を打ってもらうことにしたのだ。そうすればいぶ鬼も直接戦うことはない。りんはこの時はそう思っていた。

「いぶ鬼、僕のことを考えて迷ったんだな・・・わかった」

金吾は紙を大事に懐に入れた。りんの言ったことを信じてくれたようだった。

「この事は忍術学園の先生にも伝えるから。えと、春鬼くんだっけ。その計画、必ず阻止するから」
「はい。では私はこれで帰ります・・・」

すっとその場を立ち上がり、部屋を出ようと踵を返した時、金吾から低い声でぴしりといわれた。

「・・・嘘なんだろ?いぶ鬼が心配だってこと」
「・・・何でそう思いますか?」
「君は別のこと考えてる。冷たい目だ。ドクタケなんかよりもずっと」
「・・・では失礼します」

のんきそうに見えた金吾はりんの本性を見透かしていた。彼女は正義感は強いものの、人と関わる上での大事な物を見落としている一面があった。

(ドクタケよりも冷たい・・・か)

出門票にサインをしてりんは忍術学園を出る。なにはともあれ、これで忍術学園はドクタケの出城を破壊するために何か手を打つはずだ。そうすれば戦いは先伸ばしになる。自分はドクタケ忍者として忍術学園に不意をくらったそぶりをしていれば、情報を漏らしたことは察せられないはずである。

「あと、すべきことはひとつだな・・・」

りんはふと空を見上げた。そこには鳶の夫婦が互いに青空に弧をゆるやかに描き、呼びあっていた──



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