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「・・・小梅?まさか!」
嫌な予感が三木ヱ門をはっとさせる。和尚に一瞥し、銃をかかえ小走りで地上へもどる。しかし地上にも小梅の姿はない。全力で駆けて寺の外へでると、男二人がかりで荷車に小梅を乗せて遠くへといってしまっていた。
「小梅!」
「み、三木ヱ門〜!」
目を凝らすと彼女は両足両手を縄でくくられており身動きが出来ないようだ。そうしている間にも距離が離れていく。
荷車を全力で引く二人は三木ヱ門が戻ってきたことを察したようだった。小梅は二人に抗議する。この二人は元々は地下で出会った老夫婦が化けた者で、どこかの城の忍者のようだった。小梅にはなぜ自分を連れ去るのかがわからなかった。
「ちょっと!私を捕まえてどうするつもり?」
「あの男からお嬢さんを引き換えにして銃を手にいれるためだ!」
「我々の足は俊足!この速さには追い付けまいよ」
確かに男二人の荷車を引く力は強く移動も速い。それにいまだ小梅を商人の令嬢であると思っているらしく、あの銃が三木ヱ門の手にわたると知った忍者二人は小梅を引き換えに銃を奪うつもりらしかった。
「あのね・・・三木ヱ門も私も忍者のたまごなの!彼は学園長先生から大事な仕事を任されてるんだから、私を追いかけるわけないでしょ」
小梅はあくまで忍者としてそう判断した。三木ヱ門もきっと割りきって自分の任務を優先させるだろうと思っており、彼女もそれが当然だと思っていた。顔をあげると三木ヱ門の姿は遠く、小さくなっていく。彼はその場に立ち尽くし、こちらを見ていた。
一方三木ヱ門はおもむろに和尚から渡された木箱を素早くあけて火縄銃を手にする。常備している黒煙火薬と弾丸をなれた手つきで充填し、火縄をつけ静かに構えた。
「これしきの距離なぞ、臆するに値しない。僕をなめるな!・・・頼むぞ!」
いつものように意識を集中させて引き金を引く。すると直ぐに砲撃したので三木ヱ門は驚いてその銃を改めて見た。
「引き金をひいてから発砲が速いぞ・・・それに銃身のぶれも少ない!なんて撃ちやすいんだ!!」
三木ヱ門の放った弾は荷車の車輪に命中して勢いよく崩れる。男達は外れてしまった車輪をみて慌てていた。
「うわー!あの火縄銃、こんな距離まで届くのか!?」
衝撃音がまた響く。もう一方の車輪も破壊され、荷車はもはやうごくことができなくなってしまった。
小梅はこしころという携帯できる小型の鋸で拘束していた縄をはずして立ち上がる。
「貴方たちの負けね!」
「くそ・・・このままでは捕まってしまう・・・兄者、逃げよう!」
「あぁ!退散〜!」
二人の忍術はそのまま素早くその場を立ち去る。小梅のもとへ駆け寄ってきた三木ヱ門は小梅の肩を寄せた。
「無事か!?あいつらに乱暴されてないか?」
「大丈夫だよ・・・。あの人たち、あの火縄銃と引き換えにするためお嬢様の私をさらおうとしたみたい」
そうか、と三木ヱ門はほっと息をついて彼女から離れた。いつも火器のことばかり考えてるとばかり思っていた小梅は、自分を助けにやって来てくれた三木ヱ門に感動してしまった。
「三木ヱ門ありがとう!大事なものを持ってるのに、私なんかを助けてくれて・・・」
「馬鹿いうなよ。私だけ無事でお前を無視できるか!」
真剣にそう答える三木ヱ門に小梅は少し胸の奥がなんともくすぐったい気持ちになる。
「う、うん。やっぱり三木ヱ門、優しいね」
小梅の言葉に三木ヱ門もぎこちなく目線を外す
「そりゃ・・・その、お前、無鉄砲なところがあるし・・・そういうところが火器に、にてるから・・・」
「えー!私が火器に似てる?」
「なんだその顔は!誉めてるんじゃないか!ったく。歩けるか?学園にもどるぞ」
小梅が怪我がないことを確認すると三木ヱ門が銃を抱えゆっくりと歩く。小梅はその後ろ姿を着いていった。
もと来た道をもどる道中、小さな村を通る。通る人も地元の者ばかりで、静かな時間が流れている村。そこで三木ヱ門は立ち止まり、小梅に手を差しのべた。小梅はその手をじっとみて黙っている。
「あー・・・あれだ。忘れないうちに書いておくから。ほら、あのシート」
「お嫁さんシート!?サインしてくれるの?」
「大きな声で言うな!恥ずかしいだろ。・・・一応こうやって銃を手にいれることができたしな。約束だ」
小梅は喜んで三木ヱ門にシートを渡す。携帯している筆で彼は空白に名を書いた。恥ずかしさもあった三木ヱ門はサインしてすばやく無言で小梅にシートを返す。
「これで合格できるよ三木ヱ門〜!ありがとう!」
「まだ空白があったみたいだか・・・いいのか?」
三木ヱ門は小梅か開いたお嫁さんシートを指差す。彼がサインした隣にも空白の著名欄がいくつか並んでいる。
「一応、ひとつあればいいんだけど。たくさんもらえたら成績ボーナスが入るみたい。だけど私には無理だから三木ヱ門のだけでいいんだよ」
その言葉を聞いて三木ヱ門の顔がほんのり赤くなる。彼は明らかに取り乱していた。
「あのなっ・・・私だけで良いとか、変な言い方をするなよ。補習なんだから努力をしろよな・・・ん?」
あたりが急に騒がしくなる。それに気づいた二人は人が集まっていく一見の店に気づいた。そこには老若男女集まり、異様に活気づいている。
「あれ?ずいぶん繁盛してるね」
「なんだ?茶屋か?」
なんとなく二人はその店のあたりまで寄る。「めたつ豆腐」という古そうな看板が立て掛けられていた。どうやらここは豆腐屋らしい。
「すみません。少々お待ちいただけますか?」
その人の行列から現れたのはうでまくりしめたつやと書かれた前掛けをつけた一人の少年。見知った顔を思わぬところでみつけた二人はあっと声をあげた。
秘密の闇市寺へ ー完ー
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