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「とうぜんですよ!孫兵さんは悪くないのに皆悪いこと言って・・・どうして孫兵さんは黙ってるのよ」
なのかは孫兵に以前から気になっていた疑問を率直に聞いてみる。それは竹谷も気になっていたようで、彼も孫兵の様子を見ていた。
「・・・僕にとって人に嫌われるとか、関係ない。僕はこの子達とずっと一緒にいたい。だから、それをいやがる人なんか、どうでもいいんだ」
「・・・そんなの、悲しい」
なのかは孫兵のそばで項垂れる。毒虫をいやがる人はどうでもいいなんて、そんなことはない。それを証拠に、その言葉を言い放つ孫兵の表情は無表情なのだ。なにかを諦めているその様子に、なのかは放っておけなかった。
「孫兵さんは優しいのに・・・毒虫を好きってだけでなんで化け物使いなんて言われるの・・・」
「竹谷先輩以外に、僕のこと心配してくれる人がいるなんて」
孫兵はなのかの悲しい顔を見てはっとする。自分の言った言葉で彼女を傷つけてしまったかもしれない。そんなはらはらした気持ちになった孫兵は本当に久しぶりに、人を想った気がした。彼女には笑っていてほしい。ふとなのかが隣に達笑っている姿を想像する。
「僕・・・君となら一緒に暮らしたいって思う」
孫兵の突然の告白に竹谷は思わず隣で大人しくしていた犬に抱きつく。孫兵が言った言葉はほとんどプロポーズだと竹谷は思った。
「なのかさん、ぼくと一緒に暮らさない?」
「おわ、孫兵!?お前、何てこと言って・・・困るよな?なのかさ・・・」
「あっそれいいかも!」
さらに驚いたのはそれを頷いたなのか。彼女も相当な鈍感だと竹谷はそんなやりとりに冷静に考える。このやり取り、俺と孫兵がやるならまだしも、男女が気軽にして良いゾーンの提案ではないと思うのだが・・・。そんなまともな考えがぐるぐる回る。
「私と暮らせば孫兵さんも一人じゃないし、町と馴染めるかもしれないし」
「人と仲良くするつもりはないけどね。竹谷先輩、どう思いますか!?」
きらきらした二人の瞳に意見を求められる竹谷。ここはきちんとした客観的なことを伝えなければ、とひとつ咳払いをする。
「冷静になれ二人ともー!孫兵は男で、なのかさんは女性だぞ?」
その言葉を聞いて、孫兵となのかは黙ってお互い顔を合わせた。その言わんとしている意味を察して一気になのかは顔を赤らめた。そう、孫兵は男性でなのかは女性である。そんな二人が共に住むということはつまり一般的にいう恋仲の行う「同棲」のような状態だ。なのかは慌てて首を振り、手をばたばたさせた。
「そ、そうですよね・・・私ったらなんてこと」
「なんでぼくが男でなのかさんが女だと困るんでしょう」
「えっ・・・孫兵」「孫兵さん・・・」
孫兵はその理由を真面目に考えているが本気でわからないらしく隣に来たジュンコと首をかしげていた。
頭を痛めたのは竹谷の方だ。孫兵は昔から虫や生き物の接し方は長けているものの、人間関係の常識はまったく理解できないという、伊賀崎孫兵が世間から変わり者と言われる要因のひとつだ。彼は孫兵に耳打ちうする。それを聞いた孫兵はあぁ、と理解した。
「そういうことですか。大丈夫ですよ。なのかさんをぼくが襲うなんてことは絶対皆無ですから」
「ばかっ・・・そういう言い方もしつれいだぞ」
「いいんですよ・・・どうせ私なんてヤモリと同じなんですから・・・」
以前に孫兵に言われたことを思い出していじけるなのか。しかし以前会ったときから彼に女性としてみられている感覚は正直感じたことがなかったので特にショックなどはなかった。しかし、改めて孫兵と共に暮らす日々を想像してみる。たしかに同棲にはなるかもしれないが、孫兵があきらめきって一人になってしまうよりは自分がいたほうがずっと寂しくない。
「孫兵さんがそういうなら、心配ないですしやっぱり一緒に暮らしてみましょう!ね!竹谷さん!」
「俺も巻き込むのはよしてくれ。そうだな・・・まあ定期的に来ることはできるが・・・本気なの?なのかさん」
「はい!孫兵さんもいいでしょ?」
孫兵はなぜか意気込んでいるなのかに押されてとくになにも考えずにうなずく。
彼はなのかが自分のためにこうも一所懸命になれるのか、理由がわからなかった。自分はいまのままでもいいというのに。だが、なのかに興味があるというのも本当であった。ごく平凡で平穏な家庭に育った彼女。忍者として生きて変わり者だと言われた毒虫使いと呼ばれる自分。違いすぎた二人がわかりあえることができるのだろうかと。
「うん。いいよ」
「わかったよ。じゃあ俺も乗り掛かった船だ。協力するよ!」
そんなことで彼の汚名挽回を目指すためにしばらく孫兵と暮らすことになったなのか。竹谷がその間にはいり協力をしてくれることにもなり、新たな生活が始まりそうだっった。
その反面、孫兵と竹谷には疑問もあった。孫兵を襲う組織とはなにものなのか、大蛇は存在するのか。
いまはわからないことだらけであるが、後々その組織は、なのかと彼らを巻き込むことになるのだった。
大蛇の遣い ―完―
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