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三人は協力しあい、夕方にはほとんどの部分が修繕された。まだ未修繕のところは少しあるが、今日の雨風はしのげるぐらいにはなったというところだ。外を見ると茜色の空。遠くではカラスがいたるところで鳴いている。ざわりと竹藪から風が通る音がした。なのかは今日の夕飯を彼らのために作ろうと孫兵の食材のなかから野菜と味噌をとりだし雑炊を作っていた。
「へぇ。なのかさんちゃんとお料理するんだな」
「お家ではよくお手伝いしていましたから」
竹谷は感心しててきぱきと雑炊を作るなのかを見ていた。今日一日、一緒に作業していて思ったのは、なのかと竹谷は意外に気があっているというところだ。他人から見れば兄妹のような関係だろうか。なぜかそれを見て孫兵は複雑な気持ちになった。
「どうした孫兵?」
「・・・いえ。なんでも」
黙って忍者道具を磨く孫兵をなのかはきょとんとしてみていたが、竹谷は色々察したようでへえ、と声を漏らした。そして孫兵の肩をつついた。
「妬いてる?」
「妬くって・・・あのですね・・・」
竹谷の言葉に反応して言い訳をしようとして、孫兵ははたと気づく。竹谷は妬いているのかと聞いてきた。自分はいままで何に不快になっていたのだろうと思う。なのかの瞳をみると、彼女はなにもわからないのか、取り乱した自分を不思議そうに見ていた。
「僕・・・そんな感じでした?」
恐る恐る竹谷に聞くとにやにやしてうなずいた。
「そんな感じだったぜ。俺のこと蛇みたいににらんじゃってさ」
「・・・僕としたことが、失礼しました」
「いーんだよ!俺はむしろうれしいぞ!」
まさか竹谷となのかが楽しそうに話しているのを見て嫉妬という気持ちなど湧くなんて思っていなかった孫兵は焦って頭を下げるが竹谷はなぜかとても嬉しそうだった。実のところ竹谷は人嫌いになってしまった孫兵がこうして一人の子に独占欲を持つようになったのが嬉しかった。きっと彼にとってなのかは大事な存在なのだろうと思った。
「どうしたんですか?なんか変よ?二人とも」
「いや。大丈夫だから!うん」
平静を取り繕って返事をする孫兵。そんなやりとりをして夕飯を終え、竹谷は日がくれる前にここを出るといった。
「ここに泊まっていかないんですか?」
「あぁ。邪魔しちゃ悪いしな」
「邪魔って・・・からかわないでください」
「ごめんごめん」
竹谷と孫兵がそんなやり取りをしている間に洗い物を終えたなのかも二人のもとへいく。
「この村にも旅籠はあったはずだから、そこにいくよ。孫兵、なのかさんと仲良くな」
「はい。彼女は僕が守りますから」
穏やかな笑みを向ける孫兵の顔に、なのかはどきりとする。男性に守るなどと言われたことがなかったなのかはなんともいえない胸の高鳴りに戸惑った。竹谷は孫兵の言葉に安心して、その場を立ち去った。改めて二人きりになった孫兵となのかは顔を見合わせる。お互いぎこちなく視線をそらした。
「あ、あの・・・私なんでも手伝いますから・・・よろしくお願いします」
「うん。僕もできるだけ君が過ごしやすいように頑張る」
なのかは改めて部屋を見る。衝立があり孫兵の敷地にはぎっしりと虫かごがつまれている。さらにいうと外にある井戸の奥にさらに生き物小屋ができている。人は二人しかいないものの生き物は盛りだくさんな家だった。
「でもこれからどうするんだ?僕は夜は忍者の仕事をするけど、昼は生き物の世話以外にはやることないしなぁ」
二人は囲炉裏のそばにより向かい合って話す。孫兵の言葉になのかが不敵にわらう。
「この村は農家がとても多いのはわかりますよね?」
「ああ。そうだね」
「毎年猿とか猪とか鹿とか畑をあらして農家の人はとーっても苦労してるんです」
孫兵は正直山の下にすんでいるものの事情など考えたことがなかったが、確かに少し考えればわかることだろう。彼はなのかの言葉を黙って聞いている。
「そこで孫兵さんの生き物の知識を生かして、畑の悩みを解決するんです!」
「へぇ・・・おもしろそうだね」
「実はもう看板も作ってます」
「仕事が早い」
どどんとなのかは空いた時間であらかじめ作っておいた看板を見せる。そこには瓦版のような板に紙が留められてあり、そこに「猿・猪・鹿 その他生き物のお悩み解決します」とかかれていた。
「その他って?」
「蜂とか蛇とか白アリとか?」
その言葉に彼は人知れず心が躍る。その生き物はすべて自分が大好きだと思えるものばかりだった。
「なんでみんないやがるんだろ。あんなに健気で可愛いのに・・・なぁジュンコ」
名前を呼ばれてマムシのジュンコは孫兵の襟元から少しだけ顔を覗かせる。
「まぁいいよ。僕は彼らの事をよく知ってるし、問題ないだろう」
「決まりですね。看板たててこよう」
そのまま表へ出ていくなのか。孫兵も共に出る。家の戸の前に看板を打ち込む。孫兵は自分のような者がいる店に人など来るか半信半疑であったが、彼女が考えた仕事なのだからやるだけやってみようと思った。なのかが満足げに見ていると遠くから軽快な獣の足音が聞こえた。
「あ、孫兵さんのとこにいた子だ」
「ここまで来たのか。よしよし」
それはなのかの友であるあの犬であった。匂いを頼りにしてここまでたどり着いたらしい。孫兵が撫でると嬉しそうに跳び跳ねた。
「賑やかになるな」
「すでにめちゃめちゃ賑やかと思いますけど・・・」
なのかは孫兵の顔を見る。満面の笑みで生き物とふれ合う孫兵をみて、なのかもなんだか幸せな気分になるのだった。
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