5



草木も眠る丑三つ時、その影たちはとある城内の地下室に集まっていた。彼らは帰ってきた同胞の忍者の、焦ったような様子に、状況は芳しく無いことを悟った。

「帰ってきたか。どうだ?毒虫男の様子は」
「それが、あの毒虫男・・・村にすっかり馴染んでおりまして」
「なんだって?」

あたりがざわつく。今夜集まったこの忍び集団─彼らは自らを「タニグク」と名乗っている。この山の一帯を支配する公権的力を持つ忍者組織である。彼らはある目的のために集まっていた。戻ってきた部下の言葉にタニグク忍者隊頭のアマノは唸った。

「以前我々が起こした敵城の兵士を大蛇の仕業に仕向け、それをあたかもあの毒虫男の仕業であるように仕向けた・・・あのときはうまくいっていたはずだがな」

タニグクの目的は、毒虫男と呼ばれている孫兵をここ一帯から追い出すことである。そのために彼らは敵城である孫兵の勤めていた城の兵士を襲い、孫兵を城から追い出した。そして次は村にすんでいる孫兵を風の術で村人を惑わすような悪評や噂を流しこの国から追い出そうとしていたのだった。

なぜ彼らがそこまで孫兵一人を国から追い出そうとするのか。それは孫兵が彼ら、そして彼らを雇う城にとってもっとも驚異的な存在であったからだ。

「それが、山に降りて農家や村人相手に商売を始めたんです。奴は畑を荒らす猪や、村を困らせる蛇、蜂などの害虫を駆除するという店をしてまして、それが評判を集めちゃってるみたいなんですよ。おかげですっかり信頼されちゃって・・・」

部下はため息まじりに報告する。タニグク隊のみんなはなぜかそれを聞いて身震いした。

「蛇・・・猪・・・蜂・・・聞いただけで恐ろしい・・・!なんて恐ろしい男なんだ」

このように彼らはみんな揃って害虫が大の苦手なのだ。そして主の城主も敵城に毒虫使いがいると知った瞬間恐ろしくなり、孫兵の攻撃を恐れ、攻めることもできないほどの虫嫌いだった。
孫兵がこの一帯にいる限りこのあたりの制圧は困難であり、まさしくタニグクそしてその城にとって孫兵が何よりの天敵であったのだった。

「どうするんですかアマノ隊長?風の術で毒虫男を追い出すはずが、こんなことになっちゃって」
「・・・原因は?」

アマノは部下に一言聞く。部下は原因もすでに調査済みだった。

「恐らく娘の仕業かと」
「娘?くのいちか?」

アマノの問いに彼は首を振った。

「いえ、普通の薬屋の一人娘です。現在は毒虫男と同居しているようです。恋仲では・・・ないようですが」

部下は調査した内容をアマノに話す。二人が協力して店をやっていること。店の提案をしたのはどうやら娘の方であること。孫兵は以前から人を避けていたのにもかかわらず、その娘には気を許している様子であったこと。その情報を聞いてアマノはうなずいた。

「その娘さえなんとかしてしまえば孫兵は折れるだろうな」

不適な笑みを浮かべるアマノ。周りの者も同じ考えであるようだった。

「多少荒くなるが仕方あるまい。・・・その娘を孫兵から引き剥がして無きものにするのだ」

勢力拡大を目的とする彼らにとって孫兵はなんとしても消さねばならない存在である。アマノはそのためにある案を打ち出した。その作戦を聞いて彼らは黙って頷きあう。なのかにタニグクの驚異が迫ろうとしていた──。


彼らの居場所 ―完―


- 14 -

*前次#


ページ:



戻る