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竹谷は孫兵の話を聞いて腕をくんだ。そこまで話してから、孫兵は乾いた笑いを浮かべる。「話はここからが本題なんですが」と孫兵は言った。彼の変わった様子に竹谷は不思議そうにしている。
「その大蛇の話の疑いがぼくにかけられちゃいまして・・・いまの城をクビになっちゃったんですよね・・・ははは」
「笑い事じゃないだろ!」
おもわず竹谷がすかさずツッコミをいれる。真っ当なツッコミに孫兵は大きなため息をついた。
彼は元々はその城に勤めてそこで暮らしていたが度々毒虫や毒蛇を外へ逃がしてしまい大騒ぎさせていたので城から入門禁止をされたのだが、解雇はされていなかった。しかし今回の大蛇の件で人を襲うほどの獣を扱うのは孫兵しかいないだろうと、城を追い出した逆恨みをしたのだと城は判断し孫兵を解雇することにしたのだ。
「まったく事実を確認もせずクビにするなんて・・・孫兵は怒らないのか?」
竹谷の問いかけに孫兵は特に感情をみせることもなく考えた。たしかに城を追い出されて自分の居場所がなくなったのは大変ではあるが、そもそもこの虫達と暮らせないのであれば自分にとってはそこは居場所ではない。彼にとって大切なのは虫達と暮らすことが一番なのだ。なのでクビにされたこと事態は腹をたてていなかった。
「別に。怒る理由もないですし。それより私が気になるのはその大蛇が本当に化け物なのか・・・はたまた人の仕業なのか・・・調べる必要がありそうです」
「あぁ。それもだがお前、生活のあてはあるのか?」
今までは離れたと言えど城つとめで生活をしていた孫兵。お金とはほぼ無縁の生活をしているがやはり金は多少入用になるはず。新しく稼ぎ口をつくる仕事をせねばならないはずだ。そんな竹谷の心配に孫兵は焦った様子もなかった。
「お金は貯まるばかりでしたからすぐ困ることはありません。ぼくは城勤めは向かないみたいですし、フリーで仕事をしようと思います」
「なら、俺が仕事を紹介できるかもしれない。俺は城にすんでるが、人手もたりないし・・・どうだ?」
孫兵は竹谷のその言葉が自分の気を使ったものだとわかっている。彼は自分の将来を気にしている。だからこんなに側にいてくれて世話を焼いてくれるのだと。孫兵は竹谷の優しさを断ることはしない。しかし、自分が心配される存在であることは少し気にかかっていた。人と馴染めない自分が、浮いているということを密かに気にしていたのだ。
「ありがとうございます。もしお仕事の話があればお手伝いします」
孫兵は竹谷の気遣いに甘えて頷いた。そうして話がまとまった二人は林に身を潜めるのをやめた。
そういえば、彼女を置いていきっぱなしだと、孫兵は思いだし家の表に出た。しかしいると思ったなのかの姿はない。家の中を探してもその姿はなく、毒虫しかいなかった。もう一度表へ出る。すると孫兵の友である犬が山を下る道の近くで倒れていた。どうやら強く蹴られたらしくしんどそうに倒れている。口許には着物の一部と見られる布切れがついていた。竹谷と孫兵は明らかに何かあったと彼女の姿を探した。
「この布、着物みたいだ。なのかさんのじゃない!」
「誰かに襲われたのか・・・っ」
孫兵はなのかに何かあったと立ち上がり辺りを見回した。この山のなか、彼女を一人にしたことを後悔する。孫兵が山を降りようとすると犬がいる。おぼつかない様子で立ち上がり、歩き始めた。
「お前、わかるか?頼む、教えてくれ・・・」
孫兵のたのみに答えるように犬はなのかの連れ去られた方へ歩き始めた。竹谷と孫兵は用心深く辺りを見回しながら付いていく。
一方、なのかは鉈で薪を割ってると突然表れた薄汚れた男に無理矢理腕を捕まれて森のなかに引きずられそうになった。それを見ていた野良犬が男の首めがけて飛びかかるが、男はそれをはねのけ、なのかを引き込んでしまう。
恐怖のなかで必死に抵抗するなのか。どうするつもりなのか、と男に訪ねると、怒った様子で一言「孫兵を困らせてやる!」と言い放った。
「孫兵さんがなにかしたの?落ち着いてください!」
「・・・俺は孫兵を恨んでいるんだ。あいつだけは許せない・・・」
「は、話を聞きますから」
男はなのかの言葉に、荒々しく歩いていた足を止めた。覆面であまり顔は良く見えないが眉間にシワを寄せ、手が震えている。相当怒っているそうだ。
「あいつのせいで俺は笑い者だ・・・。俺は忍者なのだが、仕事で孫兵を追っている時にあいつに遁法をかけられた」
「忍者ですか?あの隠密行動をとるという・・・遁法とはなんですか?」
「敵に追われて逃げる術の事だ。おれはあいつを追っているとき、毛虫を投げられて・・・刺されてしまった。大量の毛虫に刺された俺は・・・こんな顔になってしまった・・・」
男は覆面を外す。するとみるも無惨にぱんぱんに腫れ上がった男の顔が現れて思わずなのかはひっと声をあげて後ずさる。
「すごい怪我ですね・・・」
「だろう。俺の美貌がこんなことに!」
「それは置いといて・・・その復讐、ということですか?」
男は頷く。手には小刀を持っており、男はじりじりとなのかに寄ってきた。その様子になのかも冷や汗をかく。命の危機を感じた。
「あるやつらから孫兵の大事な者を奪えと雇われてな・・・復讐ついでに金も稼げるし、悪いがお嬢さんにはここで死んでもらう」
「えぇっ!雇われたって・・・大事な者って・・・ちょ、ちょっと待って人殺しなんて早まったことはやめましょうよ!」
その場にへたりこみ、なのかはもうだめだと瞳閉じ身を縮こめる。だが、その小刀が自分を刺すことはなかった。いつまでたっても襲ってこない男になのかは恐る恐る目を開けると、男はいつのまにか倒れていた。辺りを見回しても誰もなにもいない。倒れている男をのぞきこむと首がアザになって泡を吹いている。何が起こったのだとなのかは理解できずにいた。呆然とそれをみていると連れ去れてきた方向から孫兵の焦った声が聞こえた。
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