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竹谷と小梅はまずは一通りの少ない道へと向かう。ここは店などが並ぶ通りと比べ静かで、民家の多い通りだ。竹谷は長屋の間の狭い道を覗く。すると二匹の猫が逃げていった。
「黒と白か。違うな」
「竹谷さん、猫ちゃんを見つけるのがお上手ですね」
「一応おれ・・・いや僕は、生き物にはちょっと詳しいんです」
竹谷はにこりと爽やかな笑顔をむける。先程からとらきちをみる視線も優しく、なれた手つきで撫でていたので小梅は彼は生き物好きなのだと思った。
「小梅さんは、猫は好き?」
「私、農家育ちだったので、猫は敵のことが多いかったけど、猫も、生き物は好きですよ」
「そっかぁ。えへへ」
小梅の言葉を聞いてなぜか嬉しい気持ちになる竹谷。しかしはたと思い直す。ここは町中。彼女はここの町の町人とばかり思っていたので農家と聞いて疑問が湧いた。家は離れているのだろうかと竹谷は考えたのだ。
彼女のことを考えていると別の視線を感じた。彼の忍者の勘がこちらに殺気を向けていると瞬時に察した。小梅の様子をみると彼女は感じていないのか、呑気に路地裏の猫をみて威嚇するとらきちをなだめている。
「小梅さん!かがんで!」
その殺気が強くなったとたん、竹谷は彼女を引き寄せお互いかがんだ。とん!と長屋の壁になにかが音を立てて刺さった。二人が恐る恐る振りかえると鋭い鉄製の矢が刺さっていた。それは丁度小梅の頭をめがけて飛んできた。
「吹き矢だわ」
「なんでこんな町中で・・・」
竹谷は胸のなかに縮こまる小梅の無事を確かめ、ばっと離れた。
「あわわ、これは、しかたなくですね・・・」
「ありがとう竹谷さん。私、もうちょっとで矢に刺さってました。誰かしら、吹き矢なんて」
竹谷の戸惑いなどは小梅は気にしてないようで竹谷に頭を下げた。慌てる竹谷はぶんぶんと首を横にふる。
「お、おれは当然のことをしたまでで・・・まてよ?」
竹谷はなぜ吹き矢など町中でうたれたのだろうと気づく。にゃあと小梅の胸のなかにいるとらきちが鳴いた。もしや、この猫は他の城にも狙われているのだろうか。
この猫がとらきちの可能性は大いにある。そしてその鈴のなかにある密書を巡って情報をてに入れた色んな城がこの猫を探しているのだとすると、それを抱えている小梅の身も危ないだろう。
しかし、彼は小梅にも疑問を抱きっぱなしだ。吹き矢で狙われたと言うのにとても落ち着いており、さらにはこれを吹き矢の矢だとすぐに言ったのだ。
(まさか、本当に小梅さんがD城の猫を盗んだのか?)
そんな考えを巡らせていると小梅が竹谷に心配そうに声をかける。
「竹谷さん?あの、疲れちゃいました?」
黙りこんで考えてしまった竹谷。もし彼女が本当に猫を盗んだのであれば、この気持ちは察されてはならない。
「いえ、なんでもないです」
竹谷は気を取り直して立ち上がる。心なしか、視線の数が増えているように感じた。間違いなくやつらの狙いは小梅の抱えている猫だ。
「次を探しましょう。あと、できるだけ俺のそばを離れないでくれ」
「はい。わかりました」
小梅は頷く。彼女もくのいちを目指すたまご。うたれたものがなんなのかもわかるし、殺気の気配などは竹谷ほどではないが薄々と感ずいていた。そして竹谷と同じく、彼の身のこなしが一般人ではないことを感じている。
(竹谷さんって武士の人かしら?)
しかし彼女は彼も忍者のたまご、しかも同じ学舎で学ぶ生徒同士などとはまったく考えないのであった。
二人は長屋の通りを一通りの見たあと、再び賑やかな市場へとでる。
「食べ物があるところに結構猫はいるんだ。」
竹谷は市場で魚を並べている出店を見つける。そこには案の定、その魚を物欲しげにみつける猫たちを数匹見つける。竹谷は一匹ずつ見て回るが茶とら猫に銅鈴を着けた猫は見当たらない。やはりそれに当てはまる猫は隣にいる小梅の抱いているとらきち以外に見当たらないのだ。
「そこの猫を抱いたお嬢さん」
「はい?」
竹谷が熱心に猫を探している間、人が多く横切る中から一人の小袖姿の男がやって来た。
「珍しい見世物があるんですよ!寄ってみてくださいな」
「いえ、今は結構ですので」
小梅は今は竹谷と猫探しの最中であるので見世物屋をみる時間はない。そう小梅が断ったが男は引かなかった。
「まぁそういわず、ぜひ」
「ほかにやることがあって・・・」
「今しかないんですよ」
一歩下がると男は一歩詰めてくる。異様な雰囲気を感じ取った小梅が逃げようとすると男の手が小梅の腕をつかんだ。とっさに声が出る。その声に竹谷が小梅のそばに駆け寄ってきてその男を突き飛ばす。
「おいなにするんだ小僧」
「いやがる人に無理矢理な事をしていたのはあんたのほうだろう」
男の言葉に冷静に竹谷は返す。一見するとその男はなにかを懐に忍ばせているようだ。竹谷はこの男も猫を狙っている者だと正体を見破った。
「手荒なことはしたくないが・・・」
そう取り出したのは小さなくない。町中で突然物騒なものを出されて二人はぎょっとする。
「痛い目に会いたくなけりゃおとなしく猫を渡すんだ」
「この子?」
竹谷は小梅の前に一歩でる。間違いなくこの男はとらきちを狙っている。いまここでとらきちを奪われてしまっては任務は失敗だ。
「この子は預かりものの猫なの!あなたに渡せないわ!」
「そういうわけだ!」
小梅に襲いかかってきた男を竹谷は彼女の前に出て体制を低くしてみぞおちを肘うちする。所謂肘鉄砲だ。急所を狙われてうずくまる男。竹谷をただ者ではないと察し、よたよたと後ずさる。
「用心棒をつれているとは・・・手が出せんな・・・」
そういってその場を離れていく。周りは喧嘩が起こったのかと集まってきていたが、竹谷が追い払ったのをみてすぐに散っていった。
「なんであの人、とらきちを欲しがったのかしら?」
小梅はとらきちを見つめるが、やはりなんのへんてつもない茶とら猫にしかみえなかった。
「・・・小梅さん、大丈夫?」
「ええ。ちょっと驚いたけど・・・平気です」
小梅は男に襲われたわりにはやはり落ち着いていた。
「竹谷さんってやっぱりお強いのですね!年上の男の人を一撃ですよ!」
「いや、たまたま相手がよかっただけだよ。それより小梅さん、貴方は・・・・・」
竹谷は小梅の素性が知りたかった。恐らく殿様の猫であるとらきちを抱え、町で買い物をしていた一見普通の町娘。しかし吹き矢や男に教われても落ち着きを払ったその正体は何者なのか。
彼女は男だったなら、竹谷も気にはならなかった。しかし、小梅のすべてに見とれて目が離せない竹谷にとって、彼女のことかもっと知りたいという気持ちがおさえきれない。
「貴方は一体なにもの・・・」
「あれ?竹谷さん!あそこに茶とら猫がいる!」
竹谷は続けようとしてこける。小梅の指差した方をみると確かに茶とら猫が魚を売る出店の前に来ていた。しかし竹谷はそれをみてもいまいちな反応だ。
「はぁ・・・まあいいや、どれどれ・・・」
竹谷は諦めてその茶とらの猫へと寄る。殿様の猫は雌猫である。その茶とらは残念ながら雄であった。
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