交錯

日付は変わって、翌日の朝。



秋島への上陸直前ーーーー



「ねぇ、シャンクス・・・」
「ん?何だ?」
「今日は一緒に酒場に行ってもいい?」

淡い期待を抱きながら、あたしはシャンクスに聞いてみた。


「ん〜・・・そうだなぁ・・・」


いつも「ダメだ」と即答するシャンクスが、珍しく悩んでいる。



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先日の事。

シャンクスは考え事をしていた。


ーーユリアの様子が、最近おかしいーー


ユリアのどことなく素っ気ない態度や言葉。

ふとユリアをソッと見るとユリアの寂しそうな顔や沈んだ表情が、時折見られる。

ユリアは俺達に気づかれていないと思ってるかもしれないが、俺は気づいていた。
直接ユリアに聞こうとして何度か話をしてみたが、核心は言わないし話そうとしない。
今朝だって、あの態度じゃ聞こうにも聞けやしない。

船上の甲板で宴会をしていても、気づくとユリアの事を考えてしまっている。
クルー達には分かっているのか何なのか「お頭どうした!?便秘か!?」とからかってくるが、その場では取り繕って誤魔化してきた。

ただ一人を除いてーー



「お頭、もしかして・・・ユリアの事か?」

いつの間に来てたのか、隣にベンがいた。

「・・・気付いてたのか?」
「・・・あぁ、何日か前からな」


ベンは本当に鋭い。
こういう所も、すぐに気付く。


「ユリア、最近変じゃねぇか?聞こうとしても絶対言わねーし」
「・・・お頭が酒場に一緒に連れていかないからだろう」
「え?それで、もしかしていじけてんのか?」
「それだけじゃない」


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クルー達に「酒場で、女性と2人きりでずっと飲んでる」って聞いたようだ。
他にも理由はあるだろうが、俺が聞いた中ではそれが理由みたいだな。
ユリア本人に聞いたから間違いないだろう。
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ベンから聞いた理由はこんな感じだ。


俺は、いつだってユリアの事が好きだ。
確かに女性とは酒場で、2人きりでよく一緒に飲む。

だが、それまでだ。

いくら相手が誘ってこようが、俺は絶対断っている。
身体の関係など、お断りだ。
キスですら、断る。

俺にはユリアがいる。
たとえ世界中を敵に回しても、俺が愛しているのはユリア唯1人だ。

酒場に一緒に連れていかないのは、酒場には色んな奴等がいるから、何かあったら危ないからだ。
勿論、ユリアには手を出させないし、必ず守り通す自信がある。

ユリアには普段から気持ちを伝えていたんだが・・・


・・・まさか、・・・


「その、まさかだよ」
「!?き、聞こえてたのか!?」
「・・・一言一句、ちゃんと聞こえてた」
「・・・っ!」

ベンは可笑しそうに笑っている。

「お頭、それをユリアに伝えてやるんだな」
「あぁ、分かってる」


いつからか、俺とユリアは気持ちがすれ違っていたんだ。

ユリアなら分かってくれている。


そう勘違いしていた。


明日から、酒場に一緒に連れて行くか。


ユリアの、あんな寂しそうな顔は見たくない。