願い事

ーーある日の、風が少し冷たい気持ちのいい朝ーー



あたしは甲板に出て、何処までも広がるコバルトブルーの綺麗な海を見ていた。




ーー明日の朝には秋島に到着するーー




「風が少し冷たくなってきたな」
「うん・・・そうだね・・・」


聞き慣れた声に、あたしは振り向かずに返事をする。


「何だよ、どうした?」
「・・・別に。何でもない」

シャンクスの声が、少し心配そうにしているのが分かる。
だけど、それでもあたしは振り向かない。

「ユリア?」

シャンクスの手が、あたしの肩に置かれる。

「だから何でもないってば!」


あたしは、その手を振り払う。

自動的にシャンクスの顔を見る態勢となる。

シャンクスの顔は、驚いた表情をしている。

「ご、ごめん・・・悪いけど、一人にしてくれる?」

「あ?あ、あぁ・・・分かった」


シャンクスは一言そう言うと、その場を後にした。



何でもなくなんか、ない。


船はもうすぐ秋島に着く。


上陸したら、あたしはまた船で留守番。


買い物に行ったり、観光地めぐりしたり、それぐらいはできるけど、絶対酒場には一緒に連れてってもらえない。

船上だけでじゃなく、たまには酒場とかで一緒にお酒飲みたいのに・・・

「ユリアに酒場はまだ早い」とか言って、いつも断られる。

他の仲間に聞くと、シャンクスは大体いつも酒場で綺麗なお姉さんと2人きりで、どちらかが先に酒場を出るまで飲んでるという。


船上ではいつも「ユリア」と言って抱きしめてきたり、「ユリアの事が好きだ」だとか言ってくるくせに・・・



あの言葉は嘘なの・・・?



あたしは一体、シャンクスの何なのかーーーー



あたしの思いをよそに、船は秋島へと着々と進んでいる。



ーー船に、また漆黒の闇が訪れるーー



コックが作ってくれた夕飯は、あまり食欲がなく、残してしまった。

クルー達が用意してくれた自分の部屋に戻って、早々に休む事にした。

食堂を後にする時、シャンクスやクルー達は「大丈夫か?」って心配してくれた。


ーー心配かけちゃったな。


明日、ダメ元でシャンクスに聞いてみようかな。


きっと、いつもみたいに「ダメだ」って言われるだろうけど・・・

副船長のベンに「ダメだったら、買い物したいから1人で出掛ける」って言ってあるし。



不安と緊張の入り交じる中、あたしは眠りに落ちた。