運命の歯車が廻り出す

その頃、シャンクスはユリアのいる小高い丘にやってきた。弾んだ息を整えながら、ユリアに足早に近付く。
ユリアはシャンクスの方を振り向く事なく、真っ青な海を見つめていた。

「ユリア・・・・・・」

俺はユリアの隣に座る。

「・・・・・・ごめんね、シャンクス」

あたしはシャンクスの方を向き、頭を下げて謝る。

「あの時の事も、さっきの事も、本当にごめんなさい」

「ユリア、顔を上げてくれ。俺の方がもっと酷い事したんだ」

顔を上げると、シャンクスは今にも泣きそうな顔をしていた。

ーー俺はお前を愛してるのに、後先考えずにその場かぎりの愉しみを選んでしまった。結果、お前を酷く傷つけた。本当にすまなかった。ーー

シャンクスは土下座した。
肩が震えている。

多分、泣いているーー

「マコトから全部聞いたよ。あの時の事も、お店での事も」
「・・・・・・聞いたのか」

顔をあげたシャンクスの目には、うっすら涙の跡がある。
シャンクスが人前で泣くなんて事、余程の事がない限り滅多に無い。

「うん・・・・・・あたし、あの時シャンクスとちゃんと話し合おうとしなかったから、勝手に誤解してた」
「そもそも俺があんな事しなきゃよかったんだ。本当にすまない」
「あたしの方こそ、ごめんなさい。誤解も解けたし、もう大丈夫だから」

あたしはシャンクスに笑顔を向ける。

「なぁ、ユリア。俺はお前を愛してる、世界中の誰よりも」
「フフ・・・・・・知ってるよ。あたしもシャンクスの事、世界中の誰よりも愛してる」

お互い見つめ合って、同じ言葉を吐く。

わだかまりが溶けて、二人の距離が縮まる。

「シャンクス、マキノさんに怒られたんだって?」
「あぁ。そりゃあもうこっぴどく説教されたよ」
「あたしもだよ、シャンクス。あたしも怒られた」
「怒られた?誰にだよ?」

シャンクスが不思議そうな顔でユリアを見る。

「ベンとマコト。特にベンに、愛あるお説教を頂きました」
「そうか・・・・・・」


どちらからともなく差し出した手を繋ぎながら、二人で何処までも広がる海を眺めた。


「なぁ、ユリア」
「なぁに?」
「もう一度、仲間にならないか?船に一緒に乗らないか?」