死が2人を分かつまで

薄く色づいた桜が、今年も満開に咲いている。

ずっと大事にすると、初めて心に決めた人だった。

§

「ねぇ、シャンクス。明日、島に着いたら一緒に出かけたいんだけど、予定ある?」

ベンとの仕事の話が終わった後、ベンと入れ替わりで俺の部屋に入ってきたユリアが声をかけてきた。

「 あぁ、いいぜ。どこ行くんだ?」
「そろそろ新しい服を買いたいんだけど、シャンクスに一緒に見て欲しくて」
「あぁ、分かった。俺が好きなやつな」
「・・・なかなか着る機会がない服になるじゃない」
「毎晩着れるだろ。その前に一人で寄りたい場所がある。その後でいいか?」
「・・・はい。お願いします」

ユリアは、ちょっと呆れたように自分の部屋に戻っていった。
俺は本気で言ってるんだが、なかなか受け止めてもらえない。
何だかんだ言って着るのにな、ユリアも・・・

§

翌日、船は無事に島に上陸した。
久しぶりの島だから買い出しに行く者や資金調達に行く者と担当を振り分けたので、様々だ。
二週間ほど滞在する為、ベンとの仕事は4〜5日程かかるが、あとは自由だ。
ユリアと一緒にいる時間は取れる。
上陸した場所は春島の為、あちこちで桜が咲いていた。
「ねぇ、シャンクス」
船から下りて自分の用事を済ませた後に大通りを二人で歩いていると、ふいにユリアが声をかけてきた。

「ん?どうした?」

ユリアの方を見ると、ユリアは桜を見ていた。
桜を眺めるユリアの横顔は今まで見た事ないくらいに綺麗で、何処か憂いを湛えていた。

「桜・・・綺麗だね」

そう言って俺を見たユリアの顔は、寂しそうに微笑んだ。

「・・・あぁ。綺麗だな、・・・」

俺は言いかけて、やめた。
ユリアもスゲー綺麗だって・・・

「行こっか、シャンクス」

いつも通りの笑顔を見せたユリアは、俺の腕に自分の腕を絡ませて歩き出した。
それからのユリアは、いつもと変わらぬ笑顔で楽しそうに話していた。
俺もいつもと変わらずユリアとの時間を過ごした。

ただ、一抹の不安が俺の胸の中に渦巻いていた。

§


ユリアが行きたいと言っていた店で、あーでもないこーでもないと言い合いながら、何着か服を買ってご機嫌だった。
俺の不安が、杞憂に過ぎればいいのだが・・・

「シャンクス?どうしたの?」

いつのまにか会計を終えていたユリアが、ぼんやりしていた俺を不思議そうに見つめていた。

「・・・悪い。何でもねぇ。行こうか」
「・・・そう?じゃあ、行こう」
「あぁ、荷物持ってやるよ」
「大丈夫、ありがと」

荷物を自分で持つと断ったユリアは嬉々として店を出た。
後から店を出た俺はユリアの隣に立ち、二人並んで歩き出した。
暫く歩いていると、大通りの中間にある広場で騒がしい声がした。