出逢い

停泊場がある港に着くと、既に船員達が船から降りていた。


シャンクスって、どの人だろう・・・


そう考えてると、ルフィが躊躇いもなく海賊に駆け寄った。


「おーーい!!シャンクス〜〜!!」
「おぉ、ルフィ!!久しぶりだなぁ!元気だったか!?」
「当たり前だ!」


ルフィはシャンクスと呼んだ人に抱きつく。


「マキノさん・・・シャンクスって、ルフィが抱きついた、あの赤髪の人?」
「えぇ、そうよ」



改めて見ると、ルフィとじゃれあっている。


・・・こ、子どもみたいな人なのか?


無邪気で、優しそうで・・・

でも強いな、この人・・・



あたしの、シャンクスに対する第一印象はそんな感じだった。

ひとしきりルフィと遊んだシャンクスが、あたし達の方に向かってくる。

「久しぶりだな、マキノさん」
「お久しぶりです、船長さん」
「ん?こっちの綺麗な姉ちゃんは?」
「・・・!!」

あたしの方をシャンクスが見て、マキノさんに問う。

シャンクスとバッチリ目が合ったあたしの胸はドキドキしていた。

顔も多分、赤くなってる・・・

マキノさんの言う通り、あたしのタイプかも・・・

お父さんを誘いに来た海賊団の人も、こんな感じだった。

「こちらはユリアちゃんと言って、1年前フーシャ村に来たんですよ」
「ユリアって言うのか、いい名前だな」

ニカッと笑うシャンクスの笑顔は少年みたいだ。

「俺はシャンクスって言うんだ、よろしくな」
「ユリアです、こちらこそよろしく。ルフィからいつもあなたの話を聞かされてました」
「俺の話を?あいつ・・・」

困ったなぁという感じで、頭をかいていた。

「船長さん、お酒飲まれますか?」

マキノさんが切り出す。

「あぁ、早速」
「では準備しますね。ユリアちゃん、戻りましょう」
「はい、また後で」

あたしはシャンクスに軽く会釈をして、マキノさんと一緒に店に戻った。



「おい、ルフィ。ユリアって子は1年前に来たって今マキノさんが言ってたが・・・」
「1人で旅をしてるんだってよ。シャンクス達が出発した翌日に来たんだ」
「旅をしてる理由は?」
「聞いてねーから知らねぇ」
「ふ〜ん」


一目見ただけで何かあるとは思ったが・・・女1人で旅に出る程の理由は一体・・・



まっすぐな黒い瞳に、明るめの茶髪・・・



・・・・・・





俺は村長に「またしばらく厄介になります」と挨拶をして、クルー達と酒場に向かった。


道中、クルー達の間でユリアの事が話題になっていた。

心の中で、ずっとユリアの事が引っかかっていた。

今までにないタイプだ。

抱きしめたら、腕の中からするりと逃げてしまいそうな・・・


そんな事を考えていたら、酒場に着いた。




カランッ・・・



「いらっしゃいませ。お待ちしてましたよ」

マキノさんが声をかける。


「1年ぶりだなぁ、この酒場も!」

クルー達がガヤガヤと店に入ってきた。


「いつものよろしく」
「はい。ユリアちゃん、これ船長さんによろしくね」

マキノさんはあたしにウインクして、他のテーブル席にお酒とおつまみを持っていった。

「マキノさん、あの子は?」

クルーの1人がマキノさんに声をかける。

「彼女はユリアちゃん。よろしくお願いしますね」
「ユリア!俺はラッキー・ルウってんだ!よろしく!」
「ど、どうも」

皆が思い思いに自己紹介してくる。
賑やかで、楽しい。


「悪いな、うるさい奴らで。根は優しい奴らなんだけどな」
「賑やかで楽しいですよ、船長さん」
「そうかい?ありがとな。あ、シャンクスでいいし、敬語じゃなくていいよ」
「はい」


シャンクスは静かにお酒を飲んでいる。

「さっき1年前に此処に来て、旅をしてるって聞いたんだが・・・」
「はい・・・人を探してるの」
「1人でか?」
「えぇ。でも1人だから色々と大変で・・・」
「そうだろうなぁ」


人探しなんか、1人じゃ限界がある。


「よかったら、ウチの船に乗るか?」
「え?船に?」
「あぁ。イヤか?」
「イヤではないけど・・・」


どうしよう・・・


「まぁ、しばらくこの村に厄介になるから、ゆっくり考えといてくれ」
「・・・はい」


それからあたし達は色んな話をした。
シャンクスと話をしていると落ち着くし、楽しい。
今日初めて会ったのに、何だろう・・・この気持ち・・・


時折見せるシャンクスの屈託のない笑顔に、あたしはどんどん惹かれていった。


一方のシャンクスもまた、同じであった。


さっき一瞬見せた寂しそうな表情ーー
誰か大切な人を失ったかのようなーー


翌日も翌々日も、シャンクス達は毎日のように酒場に来た。

2〜3日したら、あたしはクルー達とすっかり打ち解けて、冗談を言い合ったりしていた。
特にシャンクスとは長い時間、一緒に過ごす事が増えた。

マキノさんに「やっぱり船長さんタイプでしょ?」ってからかわれた。


クルー達も、あたしとシャンクスに薄々気づいていたようだ。


ーーーーーーーー


赤髪海賊団が来て1ヶ月が過ぎた。

あたしはシャンクスに呼ばれて、海が一望できる丘の上に来た。

「シャンクス?話って何?」
「ユリア・・・急だが、俺達は今週末には此処を出る」
「今週末・・・?」



ドクンッ



もう会えなくなる・・・



「ユリア、人を探してるんだよな?聞かせてもらえないか?」


ドクンッ・・・



「マキノさんに聞いたら、それはユリア本人に聞いてくださいって言われてよ」
「そっか・・・」


少し間を置いて、あたしはシャンクスに話した。

「親父を探してるのか。名前は?」
「メイリー。女みたいな名前だけど」
「メイリー・・・聞いた事あるな」
「ホント!?」
「あぁ。確かに聞き覚えがある」


それじゃあ・・・


「ユリア、お前の親父を一緒に探す。それと・・・」
「船に・・・乗ります」
「え?乗ってくれるのか!?」
「はい。父親を探すのも目的だけど・・・」


シャンクスの傍に、ずっと一緒にいたい・・・


「俺はユリアの事が好きだ。お前とずっと一緒にいたい」
「ッ!!」


嘘・・・


「・・・を言ってどうなる」
「あ、イヤ・・・あの・・・」


ビックリした・・・
まさか、そんな事言われるなんて思ってもみなかったから・・・

「あたしも、シャンクスの事が好き・・・」


だから、ずっとシャンクスの傍にいたい。

だから、船に乗る。


「絶対、手放さないからな」
「・・・うん・・・」


シャンクスは、あたしを強く抱き締めた。