『ラビ』と夏休み!


本日の任務完了。アクマとの戦闘を終えた私は対アクマ武器である刀を静かに腰の鞘へと戻した。入団当初は神田の持つ武器と酷似している事をよく言われたものだが、個人的に私の武器の方が格好良いと思うのは愛着の問題なのかもしれない。
神田は不器用さんなだけで割と優しい面があるし、他の仲間に至っては皆良い人ばかり。けれどただひとり、私は今回のパートナーであるラビの事を未だによく知らない。
彼はいつもニコニコと綺麗な笑みを浮かべているが、どうにもそれが作り笑いな気がする時がある。嫌いな訳じゃないし、普通に話す分には全く問題ないんだけど。その考えが間違いじゃなかったと知ったのはつい最近の事だ。

帰り支度を済ませた私とラビは、当然直ぐに教団へ帰るつもりだった。しかしそこに現れたのは軽快な音楽と共に町を練り歩く大行列。
お祭りでもあるのかと考えていれば、隣でラビが思い出した様に手を鳴らす。今日のこれはこの辺り一帯で一番名のある夏祭りらしく、その見物人は人混みを作りだす程に数がある。お得意の情報網はこんな所でも役立つらしい。

「良いなぁ、お祭り」
「……見てくか?」
「え?」

どうやらふと口に出ていたらしい。これは今度から気をつけないと。ラビは口端を上げてにこりと笑った。
見てくって……でも早く教団に帰らないと。確かに人混みを逆流するのは骨がいるけどいつ終わるかも分からないし……ってちょっとラビ?どうして電話を使ってるの!寄り道するって、室長に連絡したの?あぁもう……そこまでしなくたって良いのに。
ガチャンと通信を切った彼は、同行していた探索部隊をさも当然の様に先に帰らせた。さぁ観念しろと言わんばかりの笑顔に、小さく溜め息を吐いて脱力した。

「気にすんなって!コムイにはちゃんと許可もらったし」

そういう問題じゃないのよラビ。大体私なんかと一緒でも貴方は楽しくないでしょうに。そう言ってやりたいのは山々だったけれど、さすがに勇気が湧かなかった。

「良いじゃん、任務も終わったし。神の使徒っつっても俺ら子供さね。ちょっとくらい遊んだってバチ当たらんだろ!」

キラキラとむしろ自分が祭を見たかったかの様に目を輝かせるラビの言葉に、反論だなんだなんて私にはもうどうでも良くなってしまった訳で。
ついこの前耳にしてしまった“ブックマン”には、ラビの性格は合わないんじゃないかなんて考えていた。



それにしてもお祭りなんて何年振りだろう?教団に入ってからは外に出るなんて任務か買い物でしかなかったからなぁ。そうそう、お祭りって国によって全然内容も変わるんだよね。
一段高い場所から見下ろしながら、二人共パレードに釘付けになりながら他愛ない会話をする。

「日本ではオミコシとかヤタイを楽しむんだって。神田が言ってた」
「ふぅん……ユウってば俺には何も話さんクセに」

独特の文化を持つ神田の生まれ故郷に私は興味津々で、この小さな知識も彼を質問攻めにした結果得たものだった。多くの土地を見てきたラビなら知っていたかもしれないけど。
会話している内にいつの間にか目線がラビの方へと移ってしまい、その大行列が唐突に動きを止めた事など気付かず、私は大きなファンファーレに肩を震わせた。それと同時、空から爆音が響き雲ひとつ無い快晴の空を盛大な花火達が彩った。

「わ……綺麗」

口から出た言葉はお世辞でも何でもなく、無意識で率直な感想。今までのものが祭開始の合図だったのか、それは何発も打ち上げられて未だに止まる気配はない。その名の通り、本当に空に咲く大輪の花のようだ。なんて、今日の私は幸運かもしれない。昼間の花火など今度いつ見れる事やら。

「…………」

無言でそれに魅入っていると、ふと考えたのは今の世界の現状。この世界で今殺し合いが繰り広げられてるなんて嘘みたいだし、そんな事をしている奴らが馬鹿みたいだ。此処はこんなに美しい場所なのに、どうして全て壊そうとするの?
……私にロマンチストな思考は似合わないかもしれない。
けれど周りの人達は皆一様にその花を見つめているのに。この中にも敵が紛れていたりする?今も私達を殺すべく狙っていたりするのかな?

「ねぇ、ラビ」
「……ん?」
「いつか私達にも、こんな日常が訪れるかな」

最前線で戦う私がこんな弱気ではいけない。分かっていても一度出た言葉は止まらない。
こうして私達が敵を倒していく事で、本当にいつか平和な日々は戻るのかな。
世界はあまりにも無知で無防備で、壊れてしまいそうだなんて思えてきた私には、この先の未来が凄く不安だった。

「戻るさ絶対。そうする為にいるんだろ、俺らは」
「……」
「エクソシストがそんなんでどうする?自信持て。存在意義を見失うな」
「……うん」

あぁやっぱり、貴方に感情を捨てるなんて本当にできるの?くしゃりと私の頭を撫でたラビの言葉は、まるで言い聞かせるよう。
でも、そうだ。弱気じゃ駄目。世界の命運は私達にかかってるんだから。

「この戦争が終わったら、今度は皆でお祭りこようね」

一瞬キョトンと目を瞬きさせた彼とはお祭りが始まって以来始めて目があったかも知れない。勿論ラビも一緒に此処に来るんだよ?私の気持ちが伝わったのかラビは少しだけ困ったように、けれど嬉しそうに微笑んで約束だと頷いた。


夏祭りの日の誓い

ねぇ神様、私はまだ頑張れそうだよ。


執筆2008.08.11.mon
加筆2009.05.25.mon

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