『山本 武』と夏休み!


場内に溢れんばかりの沢山の人達。
感じる視線。
盛大なエール。
肌に伝わる熱気。
その全てが俺の力の糧となる。遂に来たんだ、夢の甲子園へ!


高校1年目にして期待のホープ。並高初の1年甲子園出場、ついで決勝進出!なんて俺の毎日の努力は無駄じゃなかった。
ふと客席に目を向ければ、沢山の中から見知った面々が覗いている。その中でもひとり、精一杯の応援をしてくれている依泉は俺の目に直ぐに止まってしまう。マネージャーとして、彼女として。依泉が見ていてくれる事を考えるとバットを握る手にも力が入る。

一世一代の見せ所。



……くん、

「山本君!」

蝉達の煩いくらいの鳴き声の中、細い声だけが耳にすぅっと届き、うっすらと重たい目を開ける。あぁ、俺は

「勝っ、た……ぜ?」

ぼんやりと蛍光灯の光に照らされる。目の前には依泉と……教室。あれ、甲子園は?
生徒が一人ふたりと教室を出ていく中、俺が目を瞬きさせて呟くと目の前のそれもぱちくりと同じ動きをした。

「甲子園って…寝惚けてる?」

しっかりして!と困り顔で言われて、ようやく今が放課後で、甲子園は夢だと気付かされる。
そういえば俺ってまだ中学生だし、依泉だってただのマネージャーで……

「ほら、早く部活の準備して!今日は来週の試合のメンバー発表するって先生言ってたでしょ」

上手く頭が回らない。めんばーはっぴょう?
いくらレギュラー確定の山本君でもこんな日に遅刻なんかしたら外されるよ!と急かす依泉に必死に頭を叩き起こす。遅刻、遅刻、遅刻って……

「……いっけね!」

がたんっ!勢い良く立ち上がり、空っぽの鞄を無造作に掴んだ俺は急いで廊下に飛び出した。

「私は後から行くからねー」

背中にあいつの言葉を受けながら人混みを掻き分け走りに走る俺は、ひとつの決心を胸に固める。
3年後の俺に約束するよ。今日の夢を必ず実現してみせるってな。
頑張れば夢は報われるんだろ?こりゃ、来月からの長期休みは毎日練習三昧だな!

「よーしっ!」

絶対行ってやる、皆と甲子園のグラウンドへ!


未来予想

執筆2008.08.11.mon
加筆2009.06.12.fri

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