皆がやりたがらずにいつまでも埋まらないクラス役員決めに、ひとつ溜め息を吐いた花が妥協したのは数週間前の事。
雑用係とあまり良い名前ではないそれに駆り出された花に先に帰れと促され、私はその日1人で帰路についていた。
それすら運命だったのかもしれない。偶然、見てしまった。
「オレは……依泉が好きなんだ!」
「え……?」
ピタリと身体が凍り付く。それは私が密かに恋をしているツナ君の声だった。その視線の先にいるのは紛れもなく、友達の依泉ちゃん。
ツナ君が依泉ちゃんを好き?何とか理解した言葉が頭の中を支配する。そんな。私は失恋をしたの?じゃあ私の気持ちはどうなるの?諦めるなんて出来ないよ。それに依泉ちゃんは確か、山本君の事を……――
「ごめん……ツナ!」
依泉ちゃんの声が聞こえた。かと思うと彼女は走り去っていて。あぁそうだ。なんて辿り着いた答えはとてもカンタン。
依泉ちゃんがツナ君を好きにならなければ良い。依泉ちゃんは山本君が好き。
2人が両想いになれば、ツナ君だって諦めるよね?
その翌日、都合の良い事に花はまた雑用係で先生に呼ばれている。だからチャンスだと、私は昼休みにいつもの屋上でそれを実行した。
「私、ツナ君が好きなの!」
「へ……?」
突然の告白に、当然だけど依泉ちゃんは驚いて目を大きく見開いた。依泉ちゃんは山本君が好き。今までそれとなく応援してきた恋だけど、再確認するように質問すれば依泉ちゃんが小さく頷く。
全ては予定通り。
「私も協力するから……依泉ちゃんに私の恋も協力してほしいの!」
なんて意地悪い女?でも大丈夫。だって依泉ちゃんは優しいもんね?
「うん。分かった……協力するね!」
多分無意識だろう眉間に皺を寄せて、少し間を置いてぎこちなく笑んだ依泉ちゃんはとても可愛い。
「ありがとう、依泉ちゃん!」
例え裏切りと言われようとも、それがなんだと言うの?
嘘+嘘=裏切り
ツナ君や依泉ちゃんだけじゃない。私だって恋をしていたの。
好きな人を取られるなんて、例え友達でも許さない。ツナ君は誰にも渡さない。
依泉ちゃんだって本当の事を隠して私の頼みを受け入れたんだからお互い様……ううん。“共犯”でしょ?
執筆2007.11.11.sun
加筆2009.05.21.thu
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