ホグワーツ特急 4 / 4
楽しいおしゃべりの時間は長くは続かなかった。
ホグワーツに着くまえに制服に着替えたりと準備をしているうちに、ネビルのヒキガエルが行方不明になったからだ。ネビルが大事に抱えていたはずの彼は、隙をついて汽車内のどこかに消えてしまったらしい。
半ベソを掻き始めたネビルを見かねて、ハーマイオニーは汽車の中を探してみると言ってコンパートメントを出て行った。ネビルもそれを追っていったので、ユリィはコンパートメントにひとりで残されてしまった。彼らを手伝おうかとも思ったが、手荷物を置いて出ていくのは気が引ける。それに、魔法族の飼うペットは賢い。トレバーがこのコンパートメントに戻ってくる可能性もあった。
そういうわけで、ひとりでうとうとと窓の外を眺めていたユリィだったが、背後でコンパートメントの戸が開いた気配がして振り返った。
戸に手をかけていたのは知っている人物だった。プラチナブロンドの髪に、青白い顔――ドラコ・マルフォイだ。彼の後ろには、図体の大きい男の子が二人立っていた。彼らも社交パーティで見た覚えがあるが、名前までは思い出せなかった。
「ご機嫌よう」
ユリィは冷たく言った。もう少し愛想の良い声が出せればよかったが、彼への素直な気持ちが声に出てしまった。
「やあ、君だったか」
ドラコの反応も似たようなもので、半分鼻で笑ったような言い方だった。
「ハリー・ポッターがこの汽車のどこかにいるって聞いてね。探してるってわけさ。君、どこかで見たかい?」
「ハリー・ポッターが?」
それは驚きだった。
ハリー・ポッターは『例のあの人』と同じくらい有名な魔法使いだ。何しろ、『例のあの人』は、当時赤ん坊だったハリー・ポッターを殺し損ねて失脚した。
誰にも真相はわからない。
ただ、ハリー・ポッターは『例のあの人』に狙われて生き残った唯一の人物だった。
「いいえ、見てないと思う」
「そうかい。邪魔したね」
マルフォイはそれでこのコンパートメントに興味を失くしたらしい。すぐに戸を閉めて、すぐ隣のコンパートメントに話を聞きに行ったようだった。
結局、ネビルのヒキガエルは見つからないまま、汽車はホグズミード駅に到着した。ホグワーツに一番近い村で、イギリスで唯一、住人の全員が魔法使いと魔女の村だ。
ユリィとハーマイオニーはネビルを慰めながら汽車を降りて、他の新入生と一緒にホグワーツの森番だという髭もじゃの大男の後について行った。
外はすっかり暗くなっていて、静かだった。新入生たちは緊張しているのか誰も口を聞かないまま、狭くてでこぼこした下り坂をを歩いた。
「みんな、ホグワーツがまもなく見えるぞ。この角を曲がったらだ」
大男が振り返りながら言った。
彼のいう通り、道を曲がってすぐに道が開け、視界いっぱいに大きな湖が広がった。湖の向こう岸には高い山があって、その上にとても壮大で立派な城が建っていた。『ホグワーツの歴史』の挿絵で見たよりもすごい。
ホグワーツ城の素晴らしい出で立ちに、新入生たちは沸き立った。
湖のほとりには小舟が並んでいて、大男は四人ずつそれに乗るよう、新入生に指示した。全員が乗り込んだところで、魔法の小舟たちはひとりでにホグワーツ城へと漕ぎ出した。