審神者が向かう買い出しの付き添いに、その時近侍だったこともあって浦島が選ばれた。買うものを聞けばとても軽いものだったので、実質審神者とのデートということになる。浦島はとても浮き足立っていた。
「主さん、俺が荷物持ちするからね!」
「ありがとう。浦島は頼りになるね」
「へへ、でしょ?」
刀剣男士に持ってもらわなければいけないくらいに重いものは買わないのだが、張り切っている浦島がかわいくて審神者は小さく笑った。
現世に出かけているので、浦島にとっては見慣れないものばかりだった。その上、審神者が元々暮らしていたところということもあって、余計にキョロキョロしてしまう。買い出しとは無関係な店に入ってみたり、あれは何これは何と審神者に尋ねてみたり。審神者が全部『いいよ』『これはね』と言ってくれるので、浦島はもっと嬉しくなった。
寄り道をしつつ、目的の店へと辿り着く。買うものはもう決まっているので、それを取って精算するだけだった。
レジに立っていたのは、中年の女性だった。雰囲気は柔らかく、実際に愛想もよかった。審神者と浦島を見て、思わずといった様子で声をかけてくる。
「お二人、仲良しねえ。弟さん?」
微笑みながらその女性はそう言った。審神者と二人きりでいられてご機嫌だった浦島は、それを聞いてぴしりと固まってしまう。
「まあ、そんなところです」
「やっぱり。いいわね、きょうだい仲良しで。この後はどこか出かけるの?」
「いえ、もう帰ります。あ、二千円からで」
「は〜い。きょうだいでお買い物、偉いわねえ。はい、お釣りとレシートです」
「ありがとうございます」
審神者はそれらを受け取ると、足早にその店から立ち去る。浦島の雰囲気が萎んでいたのを察知していたからだ。浦島は黙って審神者の後についていった。そしてしばらく歩くと、突然立ち止まった。
「…どうしたの?」
「…べつに。何にもないよ」
「本当に?」
審神者が浦島の顔を覗き込むと、浦島は頬を膨らませていた。ムスッとしていて、誰がどう見ても拗ねている。
「……俺は主さんのお嫁さんなのに……!」
周りから見れば浦島の拗ねはとてもかわいらしいものだったが、浦島は至って本気である。
「俺たちがもっと夫婦らしく見えることをしなくちゃ!」
そう言うと、浦島は審神者に手を差し出した。言うまでもなく、手を繋ぎたいというアピールだろう。審神者は浦島の手を取って握ったが、浦島はすぐさま指と指を絡める恋人繋ぎに変えた。
「これなら、誰が見ても俺と主さんが夫婦って分かるよね?」
「ふふ、きっとね」
浦島は得意げに胸を張り、審神者の手をしっかり握ったまま歩き出す。これでも多分、仲の良いきょうだいに見えてしまうだろうが、審神者は黙ってついていった。