くりーむころっけ


「やっと来たな」
「えっ」

暫く雨が続き、やっと晴れ間が見えた今日。久しぶりにいつもの公園でお昼休憩を過ごそうとルンルンしながら来た所、いつものベンチに先客が居た。そしてその人は少しムッとしながら話し掛けて来た。

「だ、ダンデさん…」
「キミ、何故連絡をして来ないんだ?此処にも来ないし」
「そ、それは…。…此処へ来なかったのは単純に雨だったからですよ」
「連絡して来なかったのは?」

詰問され、思わず黙ってしまう。連絡しなかったのはもう関わりたくなかったからですよ。連絡先渡したからって全部返ってくるのが当たり前だと思ったら大間違いです。お帰りください。…なーんて言えたらどんなにいい事か。

「……。まあいいさ。こうして会えたからな。ランチしに来たんだろう?隣に来るといい」
「…はい」

端によられスペースを空けてくれるので渋々隣へ腰を下ろし、エテボースをボールから出す。それから鞄からお弁当を取り出し膝の上へ乗せる。今日は昨日の残りのクリームコロッケを詰めてきた。珍しく揚げてる途中に爆発する事もなく綺麗に出来上がった自信作だ。エテボースにはお昼ご飯にポフィンを渡す。

「…ダンデさんも今からお昼ですか?」
「ああ!そこのサンドイッチをテイクアウトしてきたんだ」
「あそこ美味しいですよね。私もよく買います」

ダンデさんが指差した先の常駐のキッチンカーは味良し値段良しでリピーターが多い。斯く言う私も二週間に一度はお世話になっている。ダンデさん程の人でも意外と庶民的な物を食べるんだなあと感心していると隣から熱い視線が送られているのに気付く。お弁当に。

「なあ、よかったら交換しないか?サンドイッチ一個とそのクリームコロッケ」
「…でもそれだと量が見合ってないですよ」
「別に気にしないぜ!…だがそうだな。それならその卵焼きとソーセージも良いか?これなら同じくらいだろう」
「はあ…、ダンデさんが宜しいのなら」

お弁当の蓋の上に言われたものを置いていく。あ、しまった。

「すいません、お箸付けちゃいました。他のを…」
「いや、構わないぜ」
「あっ」

他のにして貰うため蓋から戻そうとする前にヒョイと蓋ごと取られ、代わりにサンドイッチを差し出される。本当に良いのだろうか。

「…最近風邪は引いてませんのでご安心ください」
「ははは!それは良かったよ。ところで、」

これはキミの手作りなのかとクリームコロッケと卵焼きを指差される。

「そうですね。お口に合わなかったら食べなくて大丈夫ですからね?無理はしないでください」
「……ん。どちらも美味い!キミは料理が上手だな」

それぞれ一口で食べ切ってしまったダンデさんが満足そうに褒めてくれる。元チャンピオン様に褒めて頂けるなんてそうそう無いぞ。いや、そんな人と話している事自体おかしいのだが。

「ダンデさんにそう言って頂けるなんてお世辞でも嬉しいです。ありがとうございます」
「お世辞では無いんだがな。…なあ、また食べさせてくれないか?」
「えっ」

正直な話、困る。今も折角のお弁当の味も分からない程緊張しているのだ。本当にもう関わりたくない。でもノーと言えないジョウト人にはそんな事はっきり言えるわけがなくて。

「えーっと、そうですね…」
「たまにで良いんだ。此処に来る時は連絡する。勿論その分のお金も払うぜ?」
「そんな、申し訳ないですし…」
「そうだ、連絡先。キミまさか登録すらしてない訳じゃ無いだろうな」

スマホを出してくれと言われたので渋々鞄から取り出す。どうしてこうも圧が凄いのだろうか。

「やっぱり。登録しておいてやろう。ロトム」
「おまかせロ〜!」

ダンデさんのスマホロトムと私のスマホロトムが通信し合っている。もしかしなくても連絡先が交換されているのだろう。ああ、どうしてこんな事に。

「キミはナナシと言うのだな。やっと名前を知れた」
「はあ…そういえば名乗ってませんでしたかね」
「ずっと聞こうと思ってたんだぜ」

それは申し訳ございませんでしたと棒読みで返し、もっとポフィンを寄越せと強請ってきたエテボースにお昼はこれだけだと言い聞かせる。すると怒ってボールに戻ってしまい溜息を吐いてしまう。

「そうだ、次会う時はダイエットフードを持って来よう。約束だったしな」
「えっいえ、悪いですよ。教えて頂ければこちらで購入しますので」
「いや、スポンサーからの頂き物だから余るほどあるんだ。助けると思って貰ってくれないか」
「…では、お言葉に甘えて」
「よし!」

いつの間にか残りのサンドイッチも食べ終わっていたダンデさんが立ち上がる。本当いつの間に…。

「じゃあまた連絡する。次会えるのを楽しみにしているぜ!」

じゃあなと颯爽と去っていくのを呆然と見送る。そっちはタワーの方向じゃ無いけど大丈夫かなと思っているとリザードンが慌ててボールから飛び出し背中に乗せて行った。

「嵐のような人だ…」

気が付けば会う事は確定しているし、その時はもしかしなくてもダンデさん用のお弁当も必要になるのだろう。時間を確認するともう少しで設定しているアラームが鳴りそうだったので慌ててお弁当の続きとダンデさんに貰ったサンドイッチを食べる。

今すぐダンデさんの連絡先をブロックしてやろうかと出来もしない事を考えながら、余り頻繁に連絡が来ませんようにと心の中で祈るのだった。


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