あつあつ
「あっつい!!」
「イブ……」
夏本番はまだまだ先だというのになんなんだこの暑さは。つい最近まで寒いと毛布を使っていたのに。冷凍庫から発掘したアイスを食べながら扇風機の前に座る。溶けるのが早くなってしまうが暑さには変えられない。
床でダランとアイスより溶けているイーブイを撫でる。さっきあげた氷は早々に食べきってしまった様だ。いつもは私やダンデくんをぺろぺろ舐め回すイーブイもこの有様。
人間は勿論ポケモンだってこの急激な気温の変化にはついていくのが大変なのだ。
「溶けてるな」
「ね」
よいしょとおっさん臭い掛け声をあげてダンデくんが隣に座ってくる。待って。
「ダンデくんが来たら体感温度五百度上がったんだけど」
「何を言ってるんだキミは」
五百度というのは勿論冗談だが、実際上がったのは間違いない。ドキドキしてとかそういうのではなく。ダンデくんは平均体温が私よりも高く、今までの寒い季節は良かったけどこれからの暑い季節は……。
本当ならピトッとくっ付きたい所だけど今は少しだけ距離を空けたい。これは生きていく上で必要な事なの。許してダンデくん。
そうだ、何かを取ってくるフリして戻ってきた時に距離を開けて座れば良い。これなら不自然では無いだろう。これしかない。
善は急げ、立ち上がろうとすると二の腕を掴まれる。ダンデくん手熱っ!太陽の手の持ち主じゃん。
「どこ行くんだ?」
「エ!?えっと、イーブイにタオル持ってきてあげようかなって」
「オレが取ってくるぜ」
「えぇ!?」
それくらい場所分かるぜと言いながらリビングを出て行ってしまった。持ってこようとしたのはイーブイお気に入りのウールーのタオルだったんだけど、多分ダンデくんは分からないだろうな。
遠くからガタガタ聞こえる大きな音は聞こえないことにして、暫くイーブイだけに扇風機を向けてやる。こんなにいきなり暑くなるとは思っていなかったのでエアコンの掃除がまだ出来ていない。ごめんね、イーブイ。
「持ってきたぜ」
「ありがとう〜。あ!」
意外なことにダンデくんはちゃんとウールーのタオルを持ってきてくれた。
「ちゃんとウールーのだ!よく分かったね」
「いつも使っているのを見ているからな」
「ふふ、よかったねイーブイ」
「ブイ〜……」
イーブイの汗ばんだ肌を毛並みに沿って拭っていく。私達は薄着でなんとか調節できるけど毛皮だといくら換毛期があるとしても大変だよね。
拭い終わって側に畳んで置いてやるとタオルを枕にして眠り出した。可愛いな。
「わ、何?」
「いや?」
イーブイの為に前屈みになっていた姿勢を元に戻すと、背中がピッタリと生温かいものにくっ付く。タオルを持ってきてくれたダンデくんは、この暑い時に何故か近距離に座ったみたいだ。
触れてる背中が暑くて、ジワリと汗が浮かびそうになるので離れようとする。と、お腹に腕を回され抱き寄せられる。なに!?嬉しいけど今は暑い!
「だ、ダンデくん?暑いよ……ヒッ」
「そうか?」
首筋にダンデくんの息が掛かったと思うとペロリと舐められる感覚。今日はイーブイが舐めないと思っていたらダンデくんがこれだ。どうなっているの。
「ちょ、ちょっと、ダンデくん……っ」
「ん?」
「あ、暑いし、その、汗かいてるから!」
「ん、ちょっとしょっぱいぜ」
ひ〜〜〜!恥ずかしい!やめてくれ!離れようとしてもガッチリ身体は固定されているし、頭を押し退け様にも微動だに動かない。
こんな所で身体を鍛えた成果は出さなくていいから。
「な、舐めないで!ダンデくんもイーブイになっちゃったの!?」
「元々キミはオレのだろう。だから舐めるぜ」
「エッッ!?むぐ……っ」
とんでもない爆弾発言をかまされてしまい思わず飛び出た声が煩かったのか、片手で両頬をむぎゅっと掴まれる。そのまま顔を固定され、反対側の首筋を舐め始めたダンデくん。
ありえないくらい爆音で鳴り響く私の心臓の音が伝わっている様で、くふくふ笑われてしまう。その息が掛かり少しだけ背筋がゾクゾクするという悪循環。
うぅ、ダンデくんの頭が暑さでおかしくなっちゃったよ。とっても心臓に悪い……。
結局そのまま陽が沈み涼しくなるまで舐められ抱きしめられ、たっぷり汗をかくことになった。
途中でイーブイをボールに戻さざるを得なかったのは、うん、まあそういうことです。えへへ。