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さすがの俺っちにも我慢の限界というものがある。
オフの日の今日だって外に出てみれば後ろにはみょうじなまえがいるこの状況。
毎日、毎日毎日。隠れてるつもりなんだろうけど全然隠れきれてないから気になって仕方がない。
ついに堪忍袋の緒が切れた俺っちはわざと狭い通り道に隠れた。
多分追いかけて入ってくるだろう。そこに目掛けて飛び出す作戦で。
そろそろ来るかな、というところでひょいと出てみた。
「わっ、わっ、!」
見下ろす俺っちの前に飛び込みそうになったみょうじなまえは驚いて仰け反った。
「…何してんの?」
にこりと笑って聞いてみる。ごめんけど、俺っち今仕事じゃないしホストモードでもないから優しくなんかしないかんな?
「ひ、一二三くん…っ!こ、これは……っ。あ、あの偶然ですね…っ!」
偶然〜〜??どこが偶然だどこが!毎日俺っちが外出る度に後ろにいるのを偶然と呼ぶわけがない!
「…毎日毎日、俺っちの後ろ付け回してんのは知ってんだけど〜?」
「ち、ちがっ」
あたふたと首を降るみょうじなまえは白々しい。
「あのね〜俺っちはホストやってっけど、今は自分の時間なわけ。こうやってつけられるとマジちょ〜迷惑なんだけどさ」
「…ご、ごめんなさい…き、嫌いにならないで…」
ずっとストーカーしているのを自覚しているのか肩を縮めて小さくなったみょうじなまえ。反省してるのならやめて欲しい。
「あのさ、何でこんなことすんの?」
「…っ!そ、それはもちろん一二三くんが好きで…」
「…見て分かるようにホストしてる時の俺っちとは全然違うっしょ?本当はこれが俺っちだから。分かった?ホストしてる時の俺っちがいいなら、ホストクラブに遊びに来てくれればいつで会えるし。」
「ホ、ホストの一二三くんとか、今の一二三くんとか…!関係ないです…!僕は、一二三くんが…好きで…っ!」
え〜これでも懲りないのかよ。
ホストモードの俺っちに惚れてストーカーする女の子達はいたけど、男は初めてだし、ホストじゃない時の俺っちも好きだなんて…。どうしたものか…。とにかくストーカーするのをやめて欲しい。
「…ストーカーするやつは嫌いなんだけど。」
「き、嫌い…」
この世の終わりみたいな顔で俺を見上げるみょうじなまえは俯いてブツブツ言い始めた。
「どうしよう…どうしよう…一二三くんがくんに嫌われたら生きていけない…死ぬ…?死ぬしかない…?痛いの怖いよ…僕が死んだら一二三くんは他の誰かと恋人になるの…?嘘だよね…そんなの無理… 」
やばい…。これはいつぞやの寂雷先生と独歩に助けてもらった時みたいにかなり危ないレベルのストーカーかも…。変に刺激して前回の二の舞にならないようにしないと。それに店の、俺っちの常連であることには違いない。
「ストーカーやめるって約束してくれたら、出勤前に一緒に遊んだりするのはできるけど?」
「あ、遊べるの…?一二三くんと…?2人で…?」
「ストーカーやめたらな〜?」
どうだ。これならやめるっしょ?俺っちが出した提案にみょうじなまえは深刻そうな顔をした。
「一二三くんを見守るのをやめないと…遊べない…。」
暫く黙り込んだ後、しぶしぶといった感じで「やめます…」と呟いた。
本当だな?言ったな?約束だかんな?目が泳いでるけど嘘じゃないよな?な?
本当にに大丈夫かな、と思いながら携帯をポケットから出すとみょうじなまえの目が輝いた。
「それじゃあ連絡先交換な。」
「ひ、一二三くんの連絡先…!」
「…悪用はまじ勘弁だからな〜」
「し、しません!でも、ずっと眺めてるのは良いですかっ?!」
「え、何を…?連絡先を…?」
「は、はい…」
顔を赤らめたみょうじなまえに内心ドン引きしながらお互いの連絡先を交換した。嬉しそうに携帯を握りしめるみょうじなまえを見て本当に俺っちが好きなんだなというのが伝わってきた。
「じゃあ空いてる日言ってくれたら予定合わせるから。」
「あっ、い、いつでも空いてます!」
「…仕事は?」
「クビになったので…、毎日暇です…っ!」
…道理で毎日俺っちの後ろにいるっつーことね!
仕事してないなら俺っちをつけるのも可能だわ!
「…あのさぁ、ホストに金注ぎ込むのに文句は言えないし、俺っちを指名してくれるからありがたいけど!」
「は、はい…」
「ちゃんと仕事すること!」
ビシッと指を突き立ててなまえを指すと眉尻を下げて俺を見上げた。
「で、でも…そうしたら一二三くんを…見守ることが…」
「だーかーらぁ!それはやめるっつー約束だろ〜!」
「う…」
「よし、こうしよ。ちゃんと仕事見つけたら一緒に遊んであげる。」
「えっ…!!」
「あったり前っしょ?俺っちだってそんなお金に困ってるようなお客さまに高いお金出してもらいたくないからな!」
おろおろと困り始めたなまえに俺っちはにやりと笑った。
「それができないなら、出禁にしてやってもいいんだかんな?」
「そ、そんな…っ!」
泣きそうになったなまえに俺っちはにひひと笑ってやる。
「そーいうことで〜、じゃっ、頑張れよなまえ☆」
ポン、と肩を叩いて放心するなまえから離れた。
よしよし、これでしばらくはストーカーから悩まされることもないだろう。もし仕事を見つけてきたら、他の子猫ちゃんたちと同じようにたまに遊んであげればいいだけ。
母性本能が働いて仕事見つけろとか言っちゃったけどあいつに仕事見つけられんのかな〜…。
少しだけ気になりながらオフの日を過ごした。
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