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「観音坂さん〜さっきのあれ課長の八つ当たりですよね。最悪っすよねー」
ハゲ課長に八つ当たりされてフラフラしている観音坂さんは俺の先輩だ。
隣のデスクで困った時には助けてくれるいい先輩だ。
観音坂さんは当たられやすいのかいつもハゲ課長に因縁をつけられている。そんな先輩をフォローするのも後輩の役目だろう。
こうやってフォローしとけば後々俺にも何か得るものがあるかもしれないし…。
「俺が悪いんだよ…」
今にも死にそうな顔で言う観音坂さんにそんなことないです!と声をかけて栄養ドリンクを1本机の上においた。
「ほんと、あのハゲ課長から何言われても動じない観音坂さんはさすがですよ!」
ヨッ!と持ち上げとくのは俺の得意技。
そんなことないんだよ…とぼそりと言いながら、ありがとうと栄養ドリンクを飲んだ観音坂さんに心の底から俺は同情していた。
先輩、もっと愛想よければなぁ…。ある意味真面目な人なんだよなぁ。と傍目に思うけどもちろんそれを言うつもりはない。
だって先輩と言えどもライバルだし。
観音坂さんはこう見えても営業成績は地味にいい。だから俺も負けられないわけだ。
観音坂さんが真面目なら俺は愛想で成績を得る、って感じかな…。
キーボードを打ち始めた観音坂さんを横目に見ながら俺も仕事を再開した。
****
「よーし、華金だー、帰るぞー。あれ、観音坂さんは残るんですか?」
隣の観音坂さんはまだまだ書類が山積みで帰れなさそうだった。
「うん…これ終わらせないと…」
「うわぁすごい量…。すんません、今日夜予定がなければ手伝えたんですけど…」
申し訳なさそうに観音坂さんに謝った。あくまで手伝う意思はあるんだ、というところはアピっとかないとな。
「いや…そんな大丈夫。俺1人で終わらせるから。」
「すみません…、じゃあ、今日は失礼します!」
早々に退社して会社から少し歩いたところに向かう。
会社近くの飲み屋に入って、待ち合わせの人を探した。
「あっ、課長!!お疲れ様です!遅れてすみません!」
「何言ってるんだ。遅れてなんかないよ、さ、飲もう飲もう!」
そう、俺は課長と飲む約束をしてたわけだ。
仕事中は観音坂さんの前でハゲ課長なんて読んでたけど、とんでもない!課長に媚び売るのは社会人として当然だろう?!出世のためなら可愛がってもらってなんぼだ。
「では…お疲れ様でーす!っはあー!美味い!」
「いやあなまえくんもいつも頑張ってるからね!その分酒は美味いだろう!」
「いやいや、僕なんてまだまだひよっこですよ!課長の下でもっと成長したいです!」
「はははっ!おう、もっと飲め飲め!」
よいしょするのは忘れない。ここ基本だからな。
課長も調子にのって嬉しそうに酒を飲ませてくる。
1日たったハゲ頭は脂がのりまくりでテカテカだ。
正直、こんなの早く家に帰って家でダラダラしたほうが何百倍も幸せだけど付き合いだと思えば仕方ない。
それから数時間、課長をひたすら褒めたたえて店を出た。
「美味かったな〜」
「はい!今度はぜひ中の通りのほうもいってみましょうよ!」
「おお!そうしよう!じゃあなまえくんまた来週な!」
「はーい!おやすみなさい!」
タクシーを手配して、課長を無事お見送りしたところで俺の今日のミッションは無事終了だ。
「……、はぁ〜〜疲れたっ、と…」
帰ろうとくるりと後ろを振り向くと、そこには想像していない人が立ち尽くしていた。
「あ……。」
「みょうじくん……」
や、やべえ…もしかして観音坂さん残業終わり…?うわぁ…課長にめっちゃしっぽ降ってるところ見られちゃったとか…?
「あ、あはは〜…お疲れ様です!あの、ハゲ課長に誘われて、断れなくてですね〜…」
「………。」
ううう、なんでそんな信じられないみたいな顔で俺をみるんだ!
「……俺がサービス残業してる間、楽しく…」
ううう、観音坂さんの言葉が痛い。
「ち、違いますよ〜ほんと帰ろうとしたら無理やりですね〜」
「…みょうじくん…ちょっと話そうか。はは…。」
やべぇ、観音坂さん目が笑ってない…。
「は、はい…。付き合います…朝まで…。」
やべぇよ俺もしかして観音坂さん怒らせちゃった?今まで持ち上げられてた後輩がまさか課長に尻尾降ってただなんて知ってブチ切れ…?
ええ、観音坂さんの怒ったとこみたことないし怖いんだけど俺…。
そうして、俺は2軒目、観音坂さんは1軒目のお店で俺は潰れるほど飲まされた。
まじであの時の観音坂さんは鬼だった。
罪悪感からか観音坂さんの「まだあるよ…はいどうぞ。」という酒に断りきれず飲むわ飲むわ…。
最後には何か話した気がする。俺の持ち上げ精神が発動したのか、「ほんと課長とかどうでもよくて俺にとっては観音坂さんが一番の理想で、まじそんけーしてるんです…、いつも八つ当たりするかちょーむかつくんですよー…ひぅっ、観音坂さんまじかっこいーですからー、ひぅっ、」
何かそんなことを言ってたのはうろ覚えに記憶に残っている。
で、朝起きたらホテルのベッドで2人とも裸でいました、っていう話を誰が信じてくれると思う?
自分の八方美人をこの日こそ恨んだ日はなかったね。
P.S. 翌週観音坂さんの視線が横から来る度に固まって仕事に集中できませんでした!!
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