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「グフフっ…」
池袋のとあるアニメショップで大好きなアニメのグッズやライトノベルを見ていると肩をぽんと叩かれた。
びくっ、として恐る恐る振り返る。
誰だ…店員か…?もしかして僕が見た目も雰囲気もダサすぎてキモイからか…?不審がられたか…?
ゆっくり頭を動かすと見知った顔にあっ、と声をあげた。
「い、一郎くんではないですか…」
ふふ、と笑ったはずなのにどうしても僕の笑いは、ニヤリとなってしまうらしい。
「よっ、なまえ久しぶりだな。」
「ひ、久しぶりと言っても先週ぶりですけども…っ」
目の前にいる背の高い人物は山田一郎くん。
池袋の顔とも言える彼とはどんな関係かというとオタク仲間だ。
こうやってショップを巡っているとライトノベルを手にしていたところで話しかけられたのがきっかけだった。
僕みたいなダサオタクに話しかける人間なんて珍しすきて最初は吃りまくりだったけど今は大分慣れてきた。
「あ、その新刊俺も買おうと思ってたんだよな。」
「さ、さすが一郎くん…目を付けるのが早いですな…」
かけているメガネをずりと元の位置に戻すと一郎くんはにかりと笑ってこれが楽しみだからな!と笑う一郎くんに僕は賛同してこくこくと頷いた。
「ええ、ええ、この楽しみを糧に僕は3次元という地獄を生きているのですから…」
ぐふふ、と笑いが漏れそうになったのを堪えて一郎くんと新しい作品や今週見たアニメについて語った。
買いたいものを買って2人で一緒にショップの外に出た。僕のリュックの中には今日の勝利品がいっぱいだ。
幸せだ、と満たされる気持ちに浸っていると一郎くんが「もっと話そうぜ」と誘ってくれた。
やや、こんな僕にお誘いとは…っ。ちょっと嬉しいと思いながら「も、もちろんであります」と返したところで近くの飲食店に入ろうとした足は止められた。
「兄ちゃん!!」
「お?おー、二郎こんなとこで会うなんてな、どうした?」
「兄ちゃんの場所なんてすぐわかるよ!」
おうふ、何だか柄の悪い、いや、なんか怖そうなお兄ちゃんが寄ってきたであります…。
会話的に兄ちゃんって言ってるから一郎くんの弟…?
オタクな一郎くんにこんな怖い弟がいたなんて、僕は知らなかったで「おいてめぇ、何ガンつけてんだよ」
「ひっ!!」
いきなり一郎くんに似た色素の違う両目で睨まれて僕はちびりそうになった。息が止まりそうな呼吸でさっと目を逸らしたのにずんずんとこっちに向かってきて足が震えそうだ。
「おい、二郎。なまえは俺の友達だ。」
「…兄ちゃんの友達ぃ…?」
上から下まで舐めるように見られて僕は失神寸前。唾さえ飲み込めないほどカチコチになってしまった。
「なまえ、こいつは俺の弟で二郎っつうんだ。初めてだよな!良い弟なんだよろしくしてやってくれ」
ニカッと笑う一郎くんに、一郎くんがそう言うなら…とちらりと僕より背の高い二郎、…くんを見上げて口を開いた。
自己紹介…自己紹介…焦った僕はすぅ、と息を吸って吐くと同時に止めることを忘れていつもの癖で早口で話してしまった。
「ぼっ、僕はみょうじなまえと申しますっしゅっ、趣味はアニメ鑑賞フィギア収集ライトノベルゲーム漫画日本文化をこよなく愛す人間でっ最近好きなのは「なにあんた」っ…!」
し、しまった…っ!ぼ、僕はこういうふ、不良とかそういう類の人類とは話したことも目を合わせたこともない。僕とは正反対な人類と言うべき目の前にいる人にどんな対応をしていいか分からず、ついいつもの調子で話してしまった。一郎くんの時もこうだったけど一郎くんは笑って面白いなってもっと話そうって言ってくれたけどこの目の前にいる人は違う、目が、色の違うその目が僕を突き刺している…!
「ご、ごめっ、ごめなさっ…」
がくがくと震える手を必死で押さえて謝り倒した。
一郎くんと話そうなんて言っていたけどそれどころじゃない、僕は一刻も早くこの場から撤退しないと僕のHPが0になってしまう。
「ぼぼぼ、僕はこれで…っ!!」
回れ右をして走り出した僕に後ろから一郎くんが「えっ、なまえっ」と呼んでいたけど僕は振り向かず人にぶつかりながら必死で逃げた。
僕は人生史上、初めて不良という人類と会いました。
その結果、僕は思いました。もう不良という人類とは目を合わせないようにしよう、と。
***
そう思っていたのにばったり出会ってしまうとは日本って狭いと思うのであります。
「……っ、」
池袋の街中でリュックに両手を添えて歩いていると、前方から見えた青色のジャケット、帽子、ああ…人類の敵だ…っ!
逃げろ…っと急いでUターンしたのに僕のリュックは何かにひっかかったのか体だけが前に行こうとしてこけそうになった。
なんだなんだと振り向くとさっきまで遠くにいたはずの一郎くんの弟が立って僕のリュックを引っ掴んでいた。
「……あ、あの離してほしいのであります…。」
目を合わせないようになるべくメガネでガードするようにずり、とメガネを直しながらぼそりと呟いた。
「無視すんなよ。」
「む、無視なんて…、むしろ人違いじゃ…っ」
「ついこの間のこと忘れるわけねーだろ。」
ピシャリとした言葉に肩が跳ねた。だから僕は不良が嫌いなんだ…っ。
「…っ、ぼ、僕に何用でありますか」
「…この間のこと。兄ちゃんがちゃんと謝れって言うから…。ごめん」
「…へ…?」
ごめん…?まさか彼の口からそんな言葉か出てくるなんて思わなくて思わず彼の目を見てしまった。少し垂れた目は大人っぽくて目元にあるホクロと口元にあるホクロがそれをより一層強めていた。
「ぼ、僕は謝られるようなことをしでかしたでしょうか…っ」
「ちげえよ、怖がらせて悪かったっつってんだよ」
目を細めて僕を見下ろす彼はアニメの中の不良よりも怖い。
「ぼ、僕は別に悪いとも何とも思っていないので謝罪等はけ、結構です僕は用がありますのでそれでは失礼させていただくのであります」
口早に別れを告げて去ろうと1歩踏み出したのに僕の体は動かない、あれっあれっ、背中ががっちり固められてるみたいに動かない。
困って後ろを向くと一郎くんの弟が僕のリュックを掴んでいた。
「は、離してほしいのでありま「なにこれ、ピヨプヨのキーホルダーじゃん」っっ!!き、君はピヨプヨを知っているのですかっ?!」
僕のリュックに付けているピヨプヨというアニメのキーホルダーにまさか反応するとは思わなくて勢いよく振り向いてしまった。
「お、おう…。兄ちゃんが見てるし。」
「い、一郎くん以外にも語れる人がいるとは……っ!ピ、ピヨプヨとはっ、「道端でうるせーよ。」っっ!!……っや、や、やっぱり君たち人類と僕は相容れない仲であることが今わかっ「おら、そこの店入ろーぜ」えっ、えっ…」
ボスン、とリュックを叩かれて半ば強制的に連れ去られるように近くのファストフードのお店に入っていく。
背が高くていかにも、な彼とオタクでチビでダサい僕は自分でも分かるくらい違和感がある。
「き、君と話すことなんて思いつか「二郎。」…な、なんでありまふか…」
しまった、動揺して噛んでしまった。
「二郎。俺の名前。」
「……な、何を…」
何を言いたいのか分からない…。学生時代のクラスの女子並にわからない。
「なまえだろ。兄ちゃんからいつも話聞いてるし。」
「…っ」
「ほら、ピヨプヨの話すんじゃねーのかよ。」
頬杖をついたまま机をとんとんと叩いて座れと示す一郎くんの弟、二郎くんはまるで新しいオモチャを見つけた少年のように楽しそうに見える。
僕はごくりと唾を飲み込んで、それから恐る恐る二郎くんと向かいの席にそろりと座った。
僕がこの出会いを後悔することになるのはそう遠くない未来だ。三次元なんてものはやっぱり平等に出来ていないことを僕はこの山田二郎くんと出会って存分に思い知らされることになる。
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※男主くんは一郎が不良だった過去をしりません、後で知ってあわわわわと驚くでしょうきっと…
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