「やっべ、乾燥間に合うかな…」
朝6時半。
寝起き直後の目覚めきっていない感覚のまま、洗濯用のカゴを持って急いで階段を降りる。
昨日の夜は、侑の部屋で言い争った後、レースが終わった後のような興奮後の疲れを感じて、ゲーム中にコントローラー片手に寝落ちしていた。
治に起こされるまで寝てしまっていた俺は、見事に洗濯し損ねたわけだ。
1階のランドリールームに入ろうとしたところで朝練組の侑達を廊下の先に見かける。
3人とも稲高ジャージのハーフパンツに練習着のTシャツを着て、スポーツバッグを肩に掛けている。
今から寮を出るところだろう。
眠そうな角名と同じくまだ覚醒前の侑が治の後ろを歩いていた。
手を上げて声をかける。
「はよーいってらー」
「なんや、なまえ今から洗濯回すんか?」
治の質問に侑を指さして唇を尖らせる。
「昨日、ゲーム中に寝落ちしたせいで洗濯し損ねた」
「はぁー…?俺のせいちゃうし。最初に寝たんはなまえやん…ふぁ…」
眠そうな侑が欠伸をしながら半目の状態で眉を顰めた。
いや、俺が先じゃなかったはず。交代交代プレイしていて、侑がプレイしている待ち時間の間にちょっと目を閉じたと思ったら意識が落ちていて…。
あれ、俺が先に寝たんだっけ。いやいや、その後侑に起こされて俺がプレイしてる間に侑もすやすや寝てたような…。
どっちが先に寝たのかもうろ覚えな状態の俺は「とにかく今日、1時間目から体育なのに!」と嘆く。
生乾きの体操服だけは避けたい。
「やべぇ、どう考えても絶対に間に合わん…」
頭の中でタイムスケジュールを組んでも、洗濯して乾燥まで完了させるには無理があるという結果に至る。
「チャリで行くんやろ、そのまま背中に体操服はためかせて走ったらええんちゃう。ヨットみたいに。学校着く頃には乾くで」
「ウケる、ヤバいやつじゃん。はためかせるなまえ想像したら腹痛い」
侑と小さく吹き出す角名に俺はジト目で返した。
笑い事じゃねえ…!
仕方ない、暑いが長袖ジャージ引っ張り出して行くかと考えていると、治がスポーツバッグの中から半袖の体操服を引っ張り出した。
「俺の使う?上なら持ってんで」
「サムぅ、お前何で持ってんねん。今日体育あったか?」
「ないけど予備や」
ん、と治が俺に貸してくれた。
「まじ?!治、神!ありがとう!」
助かるわ、と手を合わせる。
下は長ジャージを折ればいいし、これで今日の体育は乗り切れる。
「バス遅れるけど」
「ほな、また後でな」
「おう、いってらー」
とりあえず生乾き体操服は回避できた、と安堵した俺は洗濯はまとめて夜にする事にして食堂に向かった。
***
登校後、1時間目の体育を前に制服から体操服に着替える。
上は治から借りた体操服。下は長ジャージを膝まで折った。
「服に着られてる感、半端ないね」
プププと笑う角名に仕方ねえじゃん、治と俺とじゃサイズ違うし、と答える。
体操服広げた時からこうなるのは想像できていた。案の定、切るとお尻まで隠れる。悲しきかな。
「ちんちくりんやな」
ケラケラと揶揄う侑にうるさい、と睨み返す。
性格悪ぅ。
昨日の夜だって、本気で怒っていたものだから今回の件で、もう本当に俺のことを嫌いになってしまったらどうしようという不安に駆られて侑に聞いた時。
俺のことが嫌いになったか、と聞くと『なった』と言った。
その時の心臓を抉り取られるような痛みは思い出したくもないほどに酷かった。
初めて出来た親友に、嫌いになったと言われた俺のショックは大きすぎて。
頭が真っ白になって瞬きも忘れていると、侑は平然と嘘だと言った。その時、こいつはあろう事か笑っていたのだ。
歪む口元を耐えるように固く結びながらも楽しそうに目を細める侑を見上げて冗談じゃない、と強く思った。人でなしの所業だ。
そして今だって俺の肩に腕を回して、ニマニマと笑う侑は完全に面白がっている。
「もうっこいつ、ほんとやだっ」
「あ?イヤ?何が嫌やて?」
「あーっほら絡んできた、ダルぅ、宮侑まじだるぅ」
「は?は?何がダルいん?今日のバドミントンでスマッシュ当てたるぞ?あ?」
俺を揺さぶる侑にされるがままになりながら、角名に助けを求めるように見ると面白がって携帯を構えていた。
こいつら…。
「なまえ、宮になってんじゃん」
「宮ぁ?」
角名が体操服の胸元を指さす。
体操服には各自の名字が刺繍されている。治から借りたのだから、今俺が来ている体操服は 宮 の一文字がついている。
「あぁ、治のだしな」
「おおっ!宮なまえやん…」
「いや、俺の名字はみょうじデス」
侑が俺の胸元を見てぶつぶつ言っている。
「ええやん。宮なまえ…うん、ええな」
何がいいんだよ。止めろ。
廊下に出て体育館シューズに履き替えて体育館に向かう。
渡り廊下を歩いて体育館に入る途中「同じ洗剤の匂いがする」なんて侑が言ってきた。
「当たり前だろ、治のなんだから」
何言ってんだ、と横目で金髪頭を見る。
「一緒に暮らしたら、そうなるんか…」
ふむ、と顎に手を当ててまたぶつぶつ言いながら頷いている侑は無視しておいた。
体育館は教師が来るまで待っている生徒達の雑談で騒がしい。突っ立っている猫背気味の角名の隣に移動した。
「バドミントンのコートってよくわかんないんだよなあ。てか俺コートのライン全般よく分からん」
角名が俺を見下ろして笑う。
「この間のバレーの授業、ラインズマン理解してなかっただろ」
「だって体育館の線、いっぱいあんじゃん。自慢じゃないけど中学の時の体育のテストでコートの問題正解したことない。つか、角名とか侑が打つガチの速さはそもそも判断するのも無理な?」
「やば」
吹き出す角名に、マッハで来る球を目で追いかけるのさえキツいのに、よくレシーブ出来るよなぁと返す。角名と話していると侑が大股で歩いてきた。
「来た来た。今の話、侑に言ったら絶対キレるよ」
「確かに。内緒な」
笑う角名にここだけの話だぞ、と念押しておく。
「何話しとん」
侑はポケットに手を入れて仁王立ちしている。
他愛のない話をしていたんだと伝えるために口を開いた。
「んー、適当に「なまえがバレーコートのライン理解してないって話」」
?!勢いよく角名を見るといたずらっ子のように笑っている。
「おいっ!角名!それ言わない約束な?!」
「はぁぁぁ?あんだけ教えたのに、アホやんな?!」
「いや、覚えてるって!線がたくさんあるから混乱しただけで!」
「ほな、この線は!!」
いきなり体育館の床に広がる足元の線を指さされる。
「…うーん、バスケ?あ、バドミントン?」
「……よっしゃ、絶対スマッシュで狙ったる。覚悟しときや」
どうやら、不正解だったようだ。
***
始まった体育の授業。準備運動は侑と組んで押し潰されそうになりながらストレッチをした。
バドミントンの対戦式が始まり、相手は侑と勉強のできる田中ペア。
俺は角名とペアを組んでいた。
「ふっふっ。楽しみやなぁ。田中、全部拾うてくで。アイツらにスマッシュぶち込んだる」
「お、俺あんまり、スポーツは得意じゃないんやけど、頑張るわ…」
「角名、後衛よろしく!」
「えー、だるい」
ラケットで肩をトントンと叩きながら後ろに行く角名はゆるーくやっていくスタイルだ。
もちろん、俺もあくまで体育の授業の範疇でやっていきたいのだが…ネット向こうにいる侑がそれを許してくれなさそうだ。
本気でやるから、お前も本気で来んと許さんで。
という圧が伝わってくる。
ネットを挟むと怖くなるのは何なんでしょうか。
ネット越しの目がとにかく怖いんですよ侑さん。
審判役のクラスメイトの合図でゲーム開始となる。
「バックバック!田中ぁ!」
「う!ぁ!」
田中がラケットを振りかぶり、こちらのコートに向かって叩いた。
「角名!」
「ん、」
さすがコートの使い方が上手い。長身を活かして手を伸ばせばすぐにシャトルを打ち返す。
ネットに近い良い位置で相手コートに落ちかけたシャトル。追いつかないだろうと思ったのに、侑が1歩踏み出して手を伸ばし下から上げた。
うわ、そこ上げるんかいっ。
それでもバレーとは違い1回で打ち返さないといけないバドミントンは緩くあげるとそれだけで打ちやすくなる。
チャンスだ。
「なまえ、叩け」
後ろから聞こえた角名の声に体が反応して咄嗟に侑が返してきたシャトルをラケットで打ち込んだ。
羽が空気を切り裂く音と共に床に落ちる。
「っしゃァ!!うぇいっ!」
決まると気持ちがいい。スンとした顔の角名とタッチして点獲得を喜ぶ。
ネットの向こうで侑が悔しそうにラケットを握っている様子が視界に入る。
ここで調子に乗らない方が良いのは分かるのだけど。侑はネット向こう。別に近くにいるわけではない。
離れた距離なら何を言っても横腹を鷲掴みされることもないし、絞めあげられることもない。
侑に向かってふふんと笑ってやった。
「あちゅむくん、俺らに勝てると思ってんの?」
首を傾げて煽りに煽ってみる。
「っ、こんの…っ!」
目を見開いて悔しそうに睨んでくる侑が愉快で堪らない。いつも横暴なことをしてくるジャイアン侑にこれぐらいしたってバチは当たらないどころか過去の俺からお礼まで返ってくるかも。
「よーし、侑倒すぞ!角名、頼んだ!」
親指を立てて笑顔で他力本願を見せる。
「自分で煽ったんだからなまえが頑張ってよね」
「本気で行くから、角名も本気でな!」
「…これ体育の授業な」
「くっそ、絶対打ち込んだる…スマッシュでなまえ狙ったる…!」
ネットの向こうで恐ろしい顔をする侑に田中が横で怯えている。
「やだこわーい。角名さん聞いた?あいつなんか言ってる」
「気をつけろ、としか言えない」
さあて、やりますか。
構えて角名のサーブを待つ。
田中が打ち返し、シャトルが上がってくる。
ここで勢いよく相手コートに向けて打った。
バドミントンはとにかく速さと目に見えぬラリーがそれらしく見えないだろうか、と見よう見まねでラケットを振る。
俺の打ったシャトルを侑が同じ勢いで返してきた。
「っぶね、角名っ」
「っ!」
侑が打つシャトルはパワーがある。角名の方に真っ直ぐ飛んたシャトルを負けじと角名も返す。
「やるじゃん倫くん」
「前」
「うおっ、」
角名にちょっかいをかけていると、目の前に田中の打ったシャトルが来ていた。
その場しのぎで羽根を相手コートに返す。が、打った場所が悪かった。
侑がニヤリと笑ってラケットを振りかざしている。
「あっ、やば」
余裕のある高さで跳ねるシャトルに焦点を当て右腕を思い切り振った。
打点の高さはかなり上。
俺に出来ることと言ったら、ラケットで自分の体を守ることのみ。
「ふんっ!」
「ぎゃあっ!」
肩すれすれにシャトルが空気を切って床に落ちる。頬に感じた風に心臓の鼓動が速くなる。
「おまっ!狙うの良くない!」
「あ?もっとやんな?任せとけ」
「言ってねえわ!」
「自業自得〜」
涼しい顔をする角名も楽しくなってきたのか割とシャトルを粘り強く追うようになった。
さっきまでは腕を伸ばして届く範囲しか取らなかったのに。
「本気出すの遅いぞ角名〜」と声をかけると「スロースターターなんで」と余裕そうな答えが帰ってくる。
「ふっはっは、侑ぅ。こっちは本気の俺と角名!勝てるわけなかろう!」
ラケットを侑に向け、漫画のキャラを真似して挑発する。
「あ?こっちは田中やぞ!田中!本気見せたれ!」
「えっ!いや、俺文化部やしっ」
「田中、行くで!」
「えっ、えっ!」
「っしゃ、こーい!」
バド部に比べたら俺たちのバドミントンは遊びに近いだろうが本気で勝負するのは楽しい。
点を取るたびに悔しがったり、喜んだり。執拗に狙ってくる侑のスマッシュに叫び、逃げながらも俺たちは侑、田中ペアに勝った。
角名に拳を向けて勝利を祝う。
「腹立つっ」
「うぐっ!角名っ助けろっ」
隣に立つ侑がいきなり絞めてきた。
「バドで勝負しろよっ!いだだだっ!こんなん卑怯だぞ!」
「うっさい。力じゃ負けんわ」
なんて横暴すぎるんだ、と侑の腕を叩いてギブアップ表明をしていると勉強のできる田中が目の前に立った。
「みょうじ、俺と変わらん?俺やったらドン臭くて宮についていけんし…」
「ええで。ほな、俺となまえでペアな」
俺が答える前にペア変更が決まってしまった。
「仕方ねえな…。足引っ張んなよ侑ぅ」
ああこのセリフ言ってみたかったやつ〜。と漫画のシーンを思い出しながら一人笑ってみる。
「あ?なまえのせいで負けたらジュース奢りやで」
次に対戦する相手はバド部とテニス部のペアだ。
戦う相手に不足なし。
今のところ全勝らしい無敵ペアが俺達の前に立つ。
「お?みょうじ、体操服が『宮』やん」
「これ?治から借りたんだよ」
「ミャーサムか。ミヤミヤコンビやな。言うとくけど手加減はせえへんで」
バド部の奴が楽しそうに笑った。俺の隣で侑が片眉を上げて目の前の無敵ペアを見下ろす。
「望むところや。なまえ!やったるで」
「おしっ!」
傍から見れば俺達は凸凹コンビだろう。
コートに入り身長差から侑は後衛、俺は前衛でゲームを始めた。
バド部が繰り出す勢いあるシャトルに対応しきれず、後ろの侑に任せる。
「あつむっ」
「ほっ!」
「ナイス!サンキュっ」
笑って返すと侑が「今のは取れやっ」と後ろで言っている。
言っとくけど自転車以外のスポーツは人並み程度の技術しか持ち合わせていないんだからな、と釘を刺しておいた。
空を切るシャトルを追いかける俺達はバド部相手に奮闘した。
じわりじわりと攻められるものの、点を取るとお互いに手を合わせて喜ぶ。
「あー、もうあと1点取られたら終わり!」
「アホ!諦めんな!」
「諦めてねえわっ!」
「なまえ、前!」
「うぇっ!」
目の前に迫るシャトルにすんでのところでラケットを振る。
奇跡的にガットに当たったシャトルが低い位置から相手コートに緩やかに落ちた。勢いもなく下に落ちるシャトルは上げるしかない。
相手コートに立つテニス部がシャトルを大きく上げた。後ろの侑を見ると、俺が打つお前はどけ!と言わんばかりにシャトルを真っ直ぐ見ていた。
振り上げた腕、ラケットの位置は高い。
うわ、、と思った矢先、侑が勢いよくシャトルをたたき落とした。
力にものを言わせたその羽根は相手コートへ一直線に落ちた。
「「うぇーいっ!!」」
「ふーっ侑っ、やるじゃん!」
本気で動くと暑くなる。額に浮かぶ汗に体操服をはためかせて風を送った。
「ったりまえや、まだ終わらせへんで」
手の甲で汗を拭う侑はいつもの強気な顔で笑った。
勝負事の手は抜かない。負けず嫌いの侑に込み上げる笑いを我慢して、背を向けた。
「っしゃ、もう1点!」
相手コートの敵を見る。絶体絶命の状況なのに、侑がいれば心強く感じる。
ああ、楽しいな。
俺は純粋にバドミントンを楽しさを噛み締めていた。
***
「負けたんはなまえのせいやで。デカ〇タCと焼きそばパンな」
「なんで俺のせいなんだよっ、しれっとパン付け加えんな」
バドミントン得意でもなんでもない俺に求めすぎだろとツッコミながら教室に向かって廊下を歩く。
3組の前を通る時、教室から治と銀が出てきた。
「あ、治ぅ。体操服ありがとなー」
銀が治に向かってお礼を言う俺の胸元を見て首を傾げる。
「宮ぁ?」
「そそ、宮なまえで〜す」
「なっ!」
侑が声にならない声を上げた。
関西に引っ越してきて茶川達や侑達に揉まれてノリは良くなったはずだ。
元来当たり障りのないコミュ力を磨いた俺にとって冗談を言うのも笑って流すのも得意。
ここはノるべきとふざけて言ったのに隣の侑がいきなり俺の背中を平手打ちしてきた。大きな手のひらで。
「いって!なんだよ侑!」
「いきなりぶっ込んでくな!」
「はぁ?」
怒ったような顔で頬の血色が良い。ほんのりと赤みがあるような。
まさか俺の冗談を真に受けたわけじゃないよな。
たまに出る侑の意味深な言動のせいでよからぬことを考えてしまう。考えすぎなうえに自意識過剰だと自分に言い聞かせた。
さっきまでバドミントンしてたから赤いんだ。そうだ、そのはずだ。
「感情表現ゴリラなの、何とかしろよ」
「誰がゴリラや!」
「いや、クマか…」
揺さぶってくる侑を放置して銀と治と談笑する。治に体操服を借りた経緯を銀に話せば、道理で体操服が大きいわけかと頷いていた。
「さて、教室戻ろっと」
「俺がゴリラぁ?ありえん、こんなシュッとしとる人間どこにもおらんやろ、」なんてまだぶつぶつ言っている侑に振り向いて声をかける。
「侑、戻るぞーほら、早く」
「犬や」
「ペットやん」
治と銀と別れて教室に戻り、制服に着替える。
侑が良い匂いのする制汗剤を使っていてふわりと香ってきた。
「あ、俺も頂戴」
手を出すと侑はニヤリと笑った。
「嫌や」
どうでも良いことなのに拒否するのはいつものこと。単純に言えば『意地悪』の一言に尽きる。
寮でも「リモコン取って」と言えば「だるい無理」とか言いながらわざと離れたところに置いてケラケラ笑うし、俺のスリッパ隠すし、とにかくイタズラ好き。
いたずらっ子、世にはばかるという言葉を彷彿させる奴なのだ。
「ケチ。ケチツム。俺と同じ匂いになるのがそんなに嫌か」
角名にもらおうとすると侑が制汗剤のボトルを差し出してきた。
「待て。これ使え」
「え、もういい」
「あかん。これ使え」
あげないと言ったかと思えば使えと言ったり忙しい奴だな、と呆れる。
侑と同じ制汗剤を首元に付けた。メントールの効果でヒンヤリとした感触が首元を覆う。
「うん、良い匂いじゃん」
この匂い、なかなか好きだなと言えば侑の目がじっと俺を見下ろした。
「煽っとんのかアホ」
「はて?煽る、とは?」
「うっさい」
侑のタオルが飛んできた。やっぱり理不尽だ。