(2年 初登校日)
頭の横で鳴り響くアラームの音に目を開いた。
ぼんやりとする視界の中で目覚まし時計を手探りに掴み、アラーム解除のボタンを押す。
「うぅ…」
眠たいが起きないといけない。
目を開けてベッドの上で上半身だけ起こして動きを止める。
「……。」
息を吸って、ぐいと腕を上に伸ばした。
今日は春休み明けの登校初日。
今日から稲荷崎高校の2年になる。
親元を離れて寮生活を始めた一年間が終わり、二年目に突入した。
まだ目覚めきっていない体を動かしてベットから足を出す。床に落ちている漫画が爪先に当たり、夜に漫画を読みながら寝落ちしたことを思い出した。
本を拾い上げて机の上に置くと同時に、時計の針を見て、それほど急ぐ必要がないことを確認した。
いつものように部屋着のまま、タオルを手にして部屋を出た。
***
身支度を済ませて1階の食堂に寄る。
「おはようございます!」
男子寮の食堂からは朝ごはんを用意する匂いが充満していて腹の虫がなる。
「みょうじくん、おはよう。こっちお昼のお弁当やで。こっちは朝のおにぎり。今日から2年生やなぁ、頑張りや!」
「ありがとうございます!いただきますっ」
食堂の調理場にキッチンに立つ寮母さんにお礼を言って弁当と朝用のご飯を受け取る。
黒リュックに詰め込み、リュックを背負った。
食堂から廊下に出たところで、男子寮の玄関先で背の高い寮生が3人、眠たそうにシューズを履いていた。
(宮兄弟だ)
明るい色の頭2つとはねた黒髪の後頭部。朝に何度か重なるバレー部が玄関から出ていく背中が視界に入る。
あいつらも今日から朝練あるんだ、早いな。
そんな感想をぼんやりと浮かべながら自分も男子寮の在寮掲示板の名札を裏返し、ビンディングシューズに履き替える。
リュックには学校用の靴と、ドリンク、弁当箱、更には三分に返すゲームも入れており、既にパンパンだ。
ヘルメットを片手に顔を上げる。
「…ふぅ」
玄関を出る前に深く深呼吸した。朝の涼しい空気を肺いっぱいに入れて吐き出す。
今日から新しいことばかりだ。先輩である柴さん、秋田部長は3年生になるし、自分は2年になる。
後輩、入ってくるだろうか。
茶川や三分は何組だろか。
自分は何組だろうか。
そんなことを考えながら外に出て、出発前のロードバイクの点検を始める。
タイヤ、空気圧よし。
ブレーキ、よし。
パワーメーターの動き、よし。
ライトの電池、よし。
ヘルメットをかぶり、カチカチとダイヤルを回して締め付ける。首元のベルトを合わせて、ビンディングシューズをペダルにはめ込んだ。
ガチッと硬い音が耳に入る。
「よし、」
今日は晴れ。今の気温は10℃。少しハイペースで走っても涼しくて走りやすいだろう。
最初のひとこぎを踏み込むと軽いロードバイクは、スッと進む。
ホイールが回る音を心地よく聴きながら学校までの道のりを走る。
途中、男子寮最寄りのバス停で先程玄関先で見た3人が立っているのが見えた。
宮治、1年の時同じ組だった。とはいえ、自転車に乗っている今、わざわざ挨拶するほど仲が良いわけではない。
話しかけられたら話す程度。クラスの皆と同じ、普通に会話をするぐらいだ。
ロードバイクで走る俺は3人の横を一瞬で通り過ぎる。
瞬間、断片的な会話が耳に入ってきた。
「何組になるやろ」
「担任、誰やと思う?」
そんな新学期にありがちな会話。頭の中で同じことを考えた。
担任、誰だろう。
予想しながら交差点で信号待ちをしていると後ろから声がかかった。
「みょうじ!はよ!」
「茶川、おはよ〜」
「なぁ何組にやろな」
「同じだったら良いなぁ」
ロードバイクに乗った茶川と合流した。まだ信号は赤のままだ。
「おーい!」
「お、三分や「はよー」」
三分の声が遠くから聞こえた。向かい側の交差点にいる。
「歩道で待っとくか」
「せやな」
三分も合流して自転車競技部の新2年生、三人で走り始めた。
「後輩何人入るやろなー!」
「俺らよりは入ってほしいよな〜」
「芝さんも秋田部長も強いし多そうじゃねっ?」
走りながら話すため声のボリュームは大きい。ゆったり会話しているといきなり茶川が勝負を仕掛けてきた。
「っしゃ、あの先の信号から左手に入って川沿い!スプリント勝負やっ」
「はっ!?俺まだアップ未完了ですけど!?」
それでも勝負と言われると3人とも黙ってはいない。先に迫る川沿いのコースに目を向ける。
走行する自転車も歩く人もいない。
全力を出せる状況だ。
左折して3人横に並んで見合う。
「スタート!!」
茶川の声で腰を上げて全体重をペダルに踏み込んだ。一番筋肉質で重い三分がぐんと前に出る。その背中を目で追いながら無我夢中で車体をしならせてもがき回した。
いつもゴールの目安にしているポールを過ぎて力を抜く。
「っはぁ、はっ」
「だはっ…朝からカチアゲはきっついわぁ…っ」
約100mの全力疾走に3人とも顔が赤い。
肩で息をしながら「やっぱ三分は平地得意だよな」と笑う。
「平地限定、やな〜登りはキツくてしんどいねん」
競走を終えて3人で上がりきった呼吸を整えながら、列を成して学校へ向かった。
ロードバイクを部室に置いて昇降口に着くと、生徒達が掲示板に集まって賑わっている。
「さあて、何組か探してくか…」
まずは1組から眺める。自分の名前はないが茶川の名前を見つけた。
「あっ!茶川1組だ」
「お?7組から見よったわ。1組か〜知っとる人おるやろか」
「おっ!みょうじ2組やで!」
2組?三分の声に組分けのプリントを見る。
自分の名前があって、すぐに他の生徒の名前を見た。よく話す人はいない。
知ってる名前は何人かいる。大体は運動部の陽キャで名前を見れば、顔が思い浮かぶ。
宮侑という名前を見て、去年一緒だった宮治の双子の兄弟だな、と顔を思い浮かべる。
さっきまで男子寮で出かけるところを見たばかりだった。
「俺、知ってる人いないわー三分は?」
「俺は…3組や!」
「三分で3組ってなんか縁起良さそう」
「何やねんそれっ」
「見事に分かれたなぁ」
「でも近いし、昼食べるんは楽やん」
三分、茶川と一緒に靴を履き替えて教室に向かった。
「じゃ、また後で」
2人と別れて2年2組の教室に入る。
黒板にプリントが貼ってあり席図が掲示されていた。それにならって自分の席に腰掛ける。
周りを見ても知ってる人はいない。顔は見たことはあるけど名前は知らない人はちらほらいる、そんな感じ。
「わ、ミャーツムくんっ」
「宮くんと同じ組とか嬉しい」
「私も4組の〇〇に羨ましいって言われたわぁ」
女子の会話が聞こえてくる。チラ見して教室の入口を見る。
「宮〜、同じクラスや、よろしゅう〜」
野球部の陽キャが教室に入ってきた宮に声を掛けていた。
派手な髪色の宮はそれでなくても目立つが背が高いため、一際存在感を主張していた。
一年間そこまで関わることもないだろう。
去年の宮治と同じ程度の会話か、いや宮治よりも話しにくそうだし、自分から話しかけることはないだろうから下手したら全く話さないなんてこともあるかもなぁ、と思った。
何にせよ自分には関係ないことだと、すぐに視線を自分の携帯に戻した。
HRが始まるまでの教室内は賑やかだった。
チャイムがなると同時に担任の先生が教室に入ってきて教壇の前に立った。
「おはよう!」
「「「おはようございます」」」
「今日から2年2組担任の〇〇です。一年間よろしくお願いします。まずは諸連絡から始めます、」
去年とは違う教室内のメンバーに皆それとなく興味関心があるようで、そわそわした雰囲気を感じる。
連絡事項を聞いた後、担任の先生は少し間を開けて手を叩いた。
「よし!硬っ苦しい話はここまで!ほな、皆お待ちかねの…自己紹介から始めてくで〜」
いきなり砕けた口調に周りの教室内の空気がゆるくなる。
やりやすそうな先生だ、厳しい先生じゃなさそうだ、と教室内の生徒の目は先生に注目している。
自己紹介なんて転校ばかりで何度もしてきた俺には慣れたものだ。
サラッと言って終わらせるに過ぎない。
「じゃあ、右側のこの列からスタートな。名前と部活、あとは何でもええで。好きなもんでも、目標でも、特技でも。」
そう言われて、一人ずつ前に立って自己紹介が始まった。
「〇〇 △△、野球部です!特技は早食い!周りから驚きの吸引力、ダ/イ/ソ/ンて呼ばれてまーす!」
宮に話しかけていた野球部の陽キャノリに教室内で笑いが起きる。
ウケ狙いに全力で走るものも入れば、必要最低限のみで、終わらせてさっさと退散する人もいる。
自己紹介なんて在り来りなことしか言わない。
俺の番になって席を立った。
教壇に立って教室内に目を走らせる。皆の視線が自分に集中していた。
自己紹介は好意的な印象で。明るい声で、目立たないよう、サラッと終わらせれば良い。
「みょうじなまえです。部活は自転車競技部です。好きなものは、山頂の景色です。一年間よろしくお願いします」
最後に付け合せのように愛想良く笑って頭を下げた。
どうだろう、とりあえず無害な印象は与えられたはずだ。
席について次の人の自己紹介を聞く。
「佐倉 □□です、美術部です!好きなことは絵を書くことです…っ。よろしくお願いします! 」
少し緊張が伝わって来るような自己紹介に組分けスタート時の独特の空気を感じる。
そうそう、皆様子見みたいな感じなんだよな。
「✕〇 〇△、バスケ部!身長180cm!目標はもっと伸ばすこと!」
「□□ △△、吹奏楽部です、楽器はトランペット。目標、というか今年は吹部にもっと男子が入ってくるといいなぁと思ってます!」
今度は短髪の背の高い男子が前に出た。話したこともなければ、名前も知らない。
「銀島 結!男子バレー部!目標はレギュラーに選ばれること!」
大きな声で話す銀島に、なるほど道理で背が高いわけだと納得した。
銀島の自己紹介に「銀〜目標小さいで、もっと大きいもん持てや〜」と野次が飛んだ。
声の方向をちらりと見ると宮侑が頬杖をついて笑っていた。
体躯の大きさと机がアンマッチだ。宮が座ると小さく見える机と椅子。
銀島が戻ってきた代わりに今度は宮が立ち上がった。
「小さいことあらへんやろっ、選ばれんと始まらんわっ」
「夢はでっかく、や。見とけ銀」
体躯の良い2人が教室の中心で会話して宮が前に出ていく。
「自己紹介しまーす。宮 侑、バレー部。目標は全国優勝、日本一。ほんで…『海賊王に俺はなる!!!』」
大きな目標の後に、キリッとした顔でいきなり有名漫画のセリフを言うもんだから、誰も予想していなくて数秒間が空いた。そして誰かが吹き出した。
それを皮切りに教室内に笑い声が生まれた。笑顔が溢れてさっきまでのどこか緊張していた空気が和やかになる。男子も女子も宮のノリに顔を緩めている。
「何やねん海賊王て!」
「バレーちゃうんかい!」
「あかん、何かすごい目標だったはずなんに、全部最後で持ってかれたっ」
「アホやわミャーツム〜」
男子のツッコミが飛び交う中で宮侑は満足したのか自席に戻って行く。
俺も少し肩を揺らして周りと同じように笑う。
ケロッとした顔で凄い目標を言うし、去年の宮治とはまた違うな、と思った。
宮は席に戻ってからも周りから話しかけられている。クラスの中心とは正にああいうことか、と遠巻きに見た。
それにしても全国優勝ってすげー、よっぽどの自信家なのか、いや、でも男バレ部って毎年インハイ出場の強豪校だし届かない夢でもないのか…。
バレーってどんなルールだったっけ…。よく分からないな。
宮が作った笑いにより解れた空気の中で、色んな人がいるなぁ、と2年2組の顔ぶれを見て今年も一年穏やかに目立たず過ごそうと思った。
***
「おった。なまえ、次体育館やで」
体操服に着替えて廊下を歩いていると3年5組の教室から出てきた侑が寄ってきた。
存在感薄すぎやんな、どこに行ったんか分からへんわ、とディスってくる侑を軽く叩く。
「なんしてん」
「ん…?いやぁ去年の自己紹介思い出してた」
「2年のぉ?」
「うん」
「何で」
「さっき2年の教室行ってて。それで思い出して、なんか侑が変なこと言ってたなぁって」
「言うてへんし。何言うたっけ。もう忘れた」
「全国優勝と海賊王になるって言ってた」
「せやったか?」
「うん」
横にいる侑を見る。2年の時から身長も伸びた侑を見るには常に上を見ないといけない。
「同じ組じゃなかったら話すこともなかったかもなぁ。だって侑、俺の存在知らなかったもんな」
「…せやから存在感ないんやて。もっと主張しろや。見つけやすいように」
「意味わかんねぇ」
ケラケラと笑う俺に侑は入寮した時から存在感出しとけや、なんて土台無理なことを言ってくる。
こちとら存在感を薄くしてモブ男Bとして目立たないようにしているのに、真逆のことを言うもんだから。
「おかげで遅うなったわ。サムの方が先に知っとるとか有り得へん」とぶつぶつ言っている。
足を止めて1年前よりも広くなった背中を後ろから眺めた。
「侑、」
「あ?、うぉっ」
止まった侑の肩に手をかけて背中に飛び乗る。
「このまま体育館まで連れてってー」
侑の耳元で 俺のことディスった罰、と言っておんぶを要求する。
「っ、だるいわ、っ降りろ!」
「いやだーー」
振り下ろされまいと侑の首元に腕を締めると侑が観念したように、俺の脚に手を回した。
「おっ、みょうじ、侑。次、体育か〜。なんするん」
3組の教室から銀が出てきた。銀も去年に比べて高くなったよなぁと侑の背中から見下ろす。
高い位置から見下ろすこの景色、最高かな。
「今日はバスケらしい、体育委員が言ってた」
「何でおんぶしてん」
「侑号、乗車中〜」
「なまえが勝手に乗ってきたんや」
侑を脚のように使っているという優越感からくつくつと侑の背中で笑いが盛れる。
「よーし、侑れっつごー」
「うっさい。黙っとれ」
口は悪いのに俺を支える腕はぎゅっと力が強まる。歩き出した侑に、俺は銀に手を上げて別れる。
廊下を歩いた後、階段に差し掛かり腕の力を締める。普段より高い位置、さらには侑に体を委ねているため視覚的に少し怖く感じる。
「侑っ足踏み外すなよ?!階段こわっ!」
「踏み外すかアホ」
「うぉぉぉ、怖ぇぇぇ」
「うっさい、耳元で話すな」
侑が頭をぶんと後ろに振ってきて顎に当たる。
「ぎゃっ!痛い…」
このやろう、と侑の頭をチロルに撫でくりまわすみたいに金髪頭をわしゃわしゃと触る。ツーブロックの髪型に指先がジョリジョリと短く刈り上げた部分に触れると、もっと触りたいとクセになりそうだ。
「あっ!!おまっ!セットが台無しや!!何してくれてんねん!」
「侑が石頭食らわしてくるから。」
「アホ!ドアホ!」
「うるせー、仕方ないなぁ。俺がなおしてやるよ」
ボサボサになった侑の髪を適当に整えてみる。正直どうすればよいのか分からないから、手ぐし程度に流しただけだ。
「絶対絞めたる」
侑の腕の力が強くなって危機感を覚える。
「アッ、侑くんもう降ろしてー。もういいよ自分で歩けるから」
降りた途端、走って逃げなければ大変なことになりそうだ。
「離さんで。体育館着いたら覚悟しとけよ」
ああ、やばい体育館まで残り100mくらいか。こうなれば着くまでに何とか侑の怒りを鎮めなければいけない。
「侑、お前はどんな髪型でもかっこいいから問題ない、大丈夫だ」
「嘘くさいわ」
「ホントだって!侑くんのカッコ良さ俺が一番理解してんだぞ?!」
「惚れる?」
「惚れる惚れる!!!」
「……ほんなら、まぁ許してやらんことも…」
侑の耳の上側がほんのりと血色が良くなっている。畳み掛けるように侑を上げる言葉をかかる。
「侑くんかっこいい!イケメン!眼福!中身ジャイアンでも顔で全部カバー出来てるとこ、さすが!」
女子がいつも言っているイケメン、とか眼福、とかそんな言葉をどんどん投下する。途中褒めたい気持ちと本心が交差してしまい、アッ、と思ったが遅かった。
「……なまえクンはほんまに痛い目合うんが好きらしいなぁ」
あちゃー…、失敗した。
「お願いお願い侑くん、どうか侑くんの機嫌がなおりますように、」
「もう遅いわ」
「あーー、聞こえない。聞こえない。あっ、角名!角名ぁっ!」
体育館の入口で角名を見つけて助けを求める。
「何してんの。侑、髪ぼっさぼさじゃん」
「こぅらっ!角名!燃料投下すんなよ!」
「はぁ?」
侑の頭を見て口元を抑えながら笑う角名に侑のボルテージが上がったのが分かった。
3人で騒ぎながら体育館に入る。
騒ぐ中、侑の背中の上で思い返した。
2年の初日に俺とは無縁だと思っていた宮侑とまさかここまで仲良くなるとは予想もしなかった。
不思議なものだな、と思う。
「…侑と仲良くなれてよかったなぁ」
侑の耳元でぼそっと呟いた。
その言葉が聞こえたのかは分からない。
侑の背中から降りるといつもの高さに戻った。侑を見上げる。俺の目を見たあと、ふっと目を逸らした。
「…許してくれる?」
「許さん。」
そう言いつつ絞めてこないのは侑の怒りがおさまったということだろう。侑の単純さに思わず笑いそうになる。
「バスケで倍返しや」
またまたそんなこと言って、なんて思っていた俺はその後、バスケのゲーム戦で侑に思いっきり体当たりされたり、吹っ飛ばされた。
バスケって体張ってなんぼやん?という本気度増し増しの侑が怖い。
ボールをパスされると、すごい勢いで取られるし容赦ない力技にゲームが終わった後の俺はボロボロだった。
「よっしゃ!全勝や!」
有利な体躯を俊敏に動かしてぶつかり合うチーム戦に侑は楽しそうだ。
侑くん、加減という言葉を知らないんですか?
全力で体当たりしてくるの何なんっ?
勘弁してくださいよ本当に。
それでも心のどこかで本気で遊べる奴がいて楽しいと思う自分がいた。
俺の高校生活は確実に侑と出会って変わったのだ。
2年の時の、侑の自己紹介を思い出す。
「ふっ…」
突拍子もないことを言った侑に笑いが漏れた。いつだって竜巻のように周りを巻き込んで行く宮侑を近くでずっと見ていたい。
たまに巻き込まれて怪我する時もあるけど、それでも侑の隣にいると楽しい。
伸びをすると普段使わない筋肉の疲労を感じて、明日は筋肉痛になるな、と覚悟する。
シュートを決める侑を見ながら稲荷崎に来てよかったなぁと改めて思った。