「あれ、侑、何で入って来ないんだ」
ドアを開けたはずの侑は、部屋に入って来なかった。
治の上から退き、部屋の外を覗いてみたが侑の姿はない。
「…ツム、絶対勘違いしたわ」
「勘違いってなんだよ、ただふざけてただけだろ」
つい先程、治の服を捲る発端となったのは「なぁこの腹筋Tシャツウケん?」と治が携帯の画面を見せてきたことがきっかけだった。
服を捲るに至った経緯を思い返す。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
寒い中、治と二人で買い出しに行った後、俺達は双子の部屋でダラダラと過ごしていた。
そんな中、治が面白そうに見せてきたもの。治が握る携帯の画面を覗き込んで眉を上げる。
「腹筋Tシャツぅ?治は必要ないだろ。あ、もしかして引退して、もう腹筋なくなったとか?」
「は?何言うてんねん。全然衰えてへんし」
唇を尖らせる治にケラケラ笑っていると治が手を伸ばしてきた。
「なまえはどーなん、」
「ぎゃっ、いきなり捲るなっ」
「筋肉ないなぁ」
上から目線でニヤと笑う治を睨み返す。
「うるせー脂肪が気になる季節…、冬は仕方ないっ」
寒くてあまり動かないし、食べ物は美味しいし、で実は少しだけ増えたのも事実。
まぁプロ選手だってオフシーズンは蓄えで増えるし、本格的なシーズンに入れば絞っていくのが定説だし…、とプロでも何でもないが言い訳がましく考える。
「治はどうなんだよ、見せてみろ」
「いやや、見せん」
「やっぱ見せられないほどに落ちたんだろ?ん?」
治に手を伸ばせば、ガードしてくる。服に手をかけると治が首を振った。
「触らんといて、変態やっ」
「ぶはっウケる」
ノリはじめた治に噴き出して、付き合ってやることにした。
「見せろこのやろ、俺の見ただろっ」
どう考えても体格差があるし、力も治の方が強い。腕を引っ張ってもビクともしない治に、全体重をかけて立ち向かうことにした。
「こんのっ」
治を押し倒してやっとマウントを取れる。
笑いながら治の服をぐい、と上げ衰えていない腹筋が見えた瞬間、ドアが開く音が聞こえた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二人して部屋のドアへ目を向けると、入ってきた侑が固まっていたという状況だった。
「あかん、面倒いことになる」
「面倒いことってなんだよ。侑が帰ってきたなら俺、部屋に戻るわー」
面倒臭そうな顔をする治を置いて、立ち上がった。携帯と自分の部屋の鍵を持って双子の部屋を出る。一体、侑はどこに行ってしまったのか。
「……」
部屋に入ってきた時の侑を思い出す。俺達を凝視したまま、あの大きな目で静かに見下ろしてきていた。
勘違いって…。ただふざけ合っていただけなのに。
俺と治で何を勘違いするんだ、とぼやきながら自分の部屋に戻った。
***
双子の部屋から戻った後、ネットでアニメや動画を見ているとすぐに夕方になった。
日が暮れて暗くなる窓の外、携帯の画面が点灯し、目を向ける。手に取り画面を見るとトークアプリの通知だった。
宮治〘ツムがまだ帰ってこん〙
部屋に入らずに出ていった侑に、どこに行ったんだろうと思っていたが、帰ってきてないとは思わなかった。すぐに返信する。
みょうじなまえ〘外に出てんの?〙
宮治〘多分。さっき玄関行って靴覗いたんやけど、なかった〙
みょうじなまえ〘どっか遊びに行っただけとか?〙
宮治〘それなら在寮掲示板、外出にするやろ。外出にもしとらんし、おかしい〙
みょうじなまえ〘メッセージ送った?〙
宮治〘送ったけど未読無視〙
アイツどこに行ったんだろう、と携帯を握っていると部屋のドアがノックされた。部屋の前に立つ治を中に入れる。
「電話は?」
「出えへん」
「んん…」
俺からかけてみるか、とトークアプリの通話ボタンを押す。呼出音の木琴のメロディが流れるが出る様子は無い。
「さすがにそろそろ帰ってくるだろ。晩御飯もあるし」
「…はぁ」
「外探しに行くっつってもどこいるか見当つかないもんな」
「やっぱ、ツム俺らのこと見て…」
治がため息を吐いて、壁にもたれかかった。
「そんな、昼間のアレ関係ある?」
「大ありや」
「ノリで遊んでただけなのに何をどう捉えたらそうなるんだ…」
肩を竦めて呆れたように言う俺に治がじっと見てきた。
「あんなぁ…同じ部屋でずっと生活してんねん。ツムが考えとることぐらい大体分かるわ」
ちゅうか分かりやすいし、と話す治の言いたいことが何なのか、薄ら見えてきて言葉が詰まる。
「……」
「…なまえは、好きな子ぉが他の奴と密着しとったらどう思う?」
核心に近づいたその言葉にドキリ、として治を見た。好きな子って…。それは、俺を指しているように聞こえる。
…兄弟が男友達との間でそんな想いを持っているなんて治はどう思っているんだろう。知りたくても聞けない。
男友達なのに、俺も侑をそんな目で見ていることが後ろめたくて、何も言えない。
「…なまえはツムのことどう思「治」
続ける治の言葉を強く遮った。
「俺達は、友達だろ」
だから、これ以上聞かないでくれという目で見ると治は黙って口を閉じた。
言葉にしたら、何もかも終わりだ。お互い心の内に秘めている間に無かったことにした方が良いんだ。まだ、友達であるうちに。
互いの間に静かな空気が流れる。
「…倫太郎に聞いてみよう。もしかしたら、どこに行ったか知ってるかもだし」
「…せやな」
部屋を出て、廊下を歩く。
二人で角名の部屋の前に立ち、ドアをノックした。顔を見せた角名を見上げて侑の行方を聞く。
「侑知らん?帰ってきてないんだけど」
「侑?ここにいるけど」
「「え?」」
角名が部屋の中を見せる。覗き込む俺達の視界に入ったのはベッドの横で体育座りをして顔を埋めている侑。
「帰ってきてからずっとここにいるけど」
「ここにおったんかいっ!ツム、お前返信しろやっ」
「はぁ…心配して損した… 」
どこかに行ってしまったか、と不安視していた俺達の安堵する様子に角名が呆れたように言う。
「ずっと部屋に居られても困るんだけど。そろそろアイツ回収してくんない?」
「嫌や!ここにおる!」
角名の言葉に侑が吠えた。
「帰れ、って言ってもアレ」
指差す角名はため息を吐く。角名の部屋に入ろうとした治と俺に侑が体育座りで顔を埋めたまま、また吠えた。
「入ってくんなっ」
「…二人とも、何したの」
角名が怪訝な顔で俺達を見る。
「いや何もしてない…」
首を振って答えるも、心当たりがないこともない。
「今日はここで寝るっ」
「はあ?」
侑の宣言に角名が表情を崩した。
「無理、帰れ」
「無理、帰らんっ」
「侑の寝る場所は、ない」
「布団持ってくるっ」
「持ってくるなよ」
二人のやり取りに顔を見合わせる。
動こうとしない侑に小学生の頃に習った古事記に出てくる天照大御神(あまてらすおおみかみ)の話を思い出した。引きこもり、皆が出そうとしても出てこなかった女神…。
「アマテラスオオミカミかよ…」
俺の呟きに治が後ろで噴き出した。
「…っ、あかん、笑てる場合やない。角名、ちょお一旦俺と来て。ここはなまえに任せるわ」
治が角名を呼ぶ。
「はぁっ?俺?」
「なまえが原因やもん。ツム部屋から出して、色々話して、全部解決しやんと。頼むで、な」
手を上げて去ろうとする治を見る。
いや、事の発端は治じゃね?!と目で訴えたが無視された。
「侑を移動させなかったら…分かるよね?」
角名からものすごいプレッシャーをかけられたうえ、治の手により、侑だけとなった角名の部屋に押し込まれた。
パタンと閉じられたドアを振り向く。
解決しろ、なんて無茶な…。これは侑の誤解を解かないと出られない部屋、ですか?
どうしたものか、とベッド横に座る侑を見下ろす。一人部屋に二人ともなれば数歩でたどり着く距離。
「…何でここに籠城してんだよ」
「うっさい…関係あらへんやろ…」
力無く返ってきた沈んだ声に治の言葉を思い出す。『好きな子ぉが他の奴と密着しとったらどう思う?』複雑な気持ちが生まれる。友達のままでいると決めたからには、嬉しく思う気持ちを自制心で押さえつけなければいけない。
「何か、あった?」
なんて聞くのは白々しいだろうか。
侑は体育座りで顔を埋めたまま、動かない。
餌で釣ってみよう、と考えた。
「そうだ、今日行った買い出しでポテチ買ってきたぞ、期間限定のやつ。あれ侑用に買ってきた。…治にはナイショ」
嘘。本当は俺用なんだけど。
こうでも言わないと動かない気がして、自分の楽しみにしていたポテチを犠牲にする。
この言葉に侑の肩がピクリと動いた。ゆっくりと顔を上げたが、視線は床を見たままだ。
「…そういうの、せこい」
「え、何が」
「地獄や…思わせぶりな態度で優しくすんの、地獄の極みやんけ…なまえのくせに…」
ボソボソと口の中で呟く侑に首を傾げる。
「何言ってんだ…」
「…サムが好きなんやろ」
小さな声が耳に入ってきた。
「は?誰が?」
「…なまえが」
「え、誰を?」
「〜っ、言わせんな!!サムのことが好きなんやろっ」
眉間に皺を寄せ強い視線で睨み上げられ、その勢いに少したじろぐ。悔しそうな、それでいて少し悲しさも感じるような表情に目を離せなくなる。
俺が?治を?
「…はぁぁ?んなわけないじゃん」
何言ってんだ、と否定するとさらに険しい顔をして床を睨みつけた。
「嘘つけ、どうせサムの方がええんやろ、皆そうや」
「はぁ?」
「何でも『治くんの方が…』て言うんや…」
頬を膨らませて何か言い始めた。
「俺は…サムみたいに優しぃないし」
「…別に今更、侑に優しさなんて求めねえけど…」
むしろ侑が優しくなったら、何企んでんだろうって疑うレベルだ。
「何でも上手いこと、こなせへんし」
「…そんなん当たり前じゃん。人には得手不得手というものがあってだな…」
お前は得手不得手が極端すぎるだろ。バレーは天才でも、他のことは苦手だったりするのは至極当たり前のことだ。むしろ、全てが並の俺からすれば、人より抜きん出ているものがあるということだけですごく羨ましい。
「飯だって上手く作れへんし」
「…いや、別に作ってほしいとは思わないけど…」
よく分からんが、侑と一緒に住んでいるわけでも何でもないので料理が上手かどうかは別にどうでもよい…。
「…ウケ狙ってもたまにすべるし…」
「…見てるこっちは爆笑もんだけどな」
まぁそういうところ含めて侑なんだけど。
「人でなし、とか口悪い、て言われるし」
「うん。ほんと、そう思う。自覚してくれ」
否定せずコクコクと頷くとムッ、と侑の頬が膨らんだ。
「………」
「まだ他に言いたいことある?」
「…なぃ」
ないんかい。
自分の弱みみたいなことを挙げてきたが、思いのほか少なくて心の中でツッコミを入れてしまった。もっと色々あると思ったんだけど…。横暴なところとか、バイオレンスなところとか、急に後ろから絞めてくることとか…。
「サムよりええところ、ない」
壁を睨んで拗ねたように言う侑は、少し自信が無さそうに見えた。いつもの自信家な侑はどこへ行ったのか。
「…てか、何で治と比べるわけ?侑は侑じゃん。治じゃないし、侑には侑の良さがあるじゃん」
「…例えば?」
「…ごめん、すぐには出てこん」
「…は?しばくぞ?」
睨む侑にまぁ落ち着け、と手で制した。
「…俺は侑の正直で、真っ直ぐで、無理に飾らなくて、自分に厳しくて、決めたことを本気で打ち込めるところが強いな、すごいなって思うけど…」
人から悪く見えるところも裏を返せば、良いところでもある。表裏一体、紙一重の差だ。
度が過ぎるだけで全然優しくないわけじゃない。人のことを全く考えていないわけでもない。2年の夏、俺がインハイ前に不安がっている時も昼休みにバレーに誘ってくれたり、と侑のやり方で元気付けようとしてくれた。
だから、侑が治より劣っているとも思わないし、どちらが優劣かなんて決めることでもない。本人達は常日頃から勝負しているが、外野から見れば二人ともそれぞれ光るものを持っている。
凡人から見れば羨ましいほどにそれぞれの魅力があるから、双子は多くの人から声をかけられているんだと思う。
俺の言葉に侑はしばらく下を向いていたが、パッと顔を上げてきた。
「…サムのこと、好きじゃないなら何なんや今日のアレ」
「何って、腹筋Tシャツの話になって、ふざけて腹筋見合ってただけで…」
「はぁぁ??」
呆れたように首を傾げる侑は、脱力したように脚を投げ出した。
「何やねん、それっ、腹筋Tシャツて…そんなもんで…?!」
大きな息を吐いて天を仰ぎ「はぁ…取り越し苦労や…アホや…」とボヤいている。
すく、っと立ち上がった侑に見下ろしていた視線も高くなる。
「よう振り回してくれたなぁ」
「何…意味がよく…」
侑が足を踏み出した。近づく距離、キレ笑い気味の顔が少し怖く感じて、思わず後ずさる。
「なぁ、自覚してくれん?誰のもんやねん」
「自覚って」
こちらに向かってくる侑に距離を保とうと後ろへ下がるも、背中が壁に当たった。
これ以上下がれない俺に、侑がゆっくりと歩いてきた。目の前に立つ侑と壁に挟まれ、気圧される。
「勘違いさせるようなことして、許されると思っとん?」
至近距離で見下ろされる恐怖。物理的に詰め寄られるだけでも圧が強いのに、さらに凄まれると内心縮み上がりそうになる。
侑くん、めちゃくちゃキレてんじゃん。
「勘違いって、何の…」
「あ?ここまで来てそれ言う?許されへんぞ、俺の精神切り刻んだ罰や。代わりに今すぐ、ここで、言え」
「な、何を」
「二文字」
「うぁ」
今すぐ言え、とグイグイくる侑に詰め寄られた俺はどうしようかと思考をフル回転させる。
侑が言う『二文字』が何か、は想像出来ている。想いを告げるその二文字。
「もう待てん、無理。言え」
逃さぬように侑の手が壁を突いた。音に心臓が跳ね上がる。
無理だ、言えない。言ってはダメなんだ。
俺たちはこれからもずっと友情関係のままでいる必要がある。
「はよ」
俺は『友達』の二文字を言わなければいけないんだ。
躊躇いながらも口を開いた。
「……そ、そもそも…勘違いするのがおかしいじゃん」
「あ?」
「俺と治は男同士だし、友達なのに好きとか、そんなん…」
ぼそりと口から出た言葉に、侑が眉を寄せた。
「何が言いたいん」
低い声に喉がきゅ、と絞まる。室内の空気が変わった。
「男同士なのに好きも何もない…じゃん。俺ら友達だし…侑と俺も友達だし…」
「……どういうことや」
俺の言葉に侑の声がまた一段と低くなった。
「その…現実的に考えて…無理があるっていうか…」
冷えきった空気を変えようとへらりと笑うと、侑の纏う雰囲気が刺々しくなる。
「無理?何が?何が、無理なん」
「……男女じゃないじゃん」
彼氏彼女の関係にはなれない。周りから見てもそんな関係、おかしく思うだろう。
侑が黙った。しんとした室内に、無音すぎて耳が痛くなりそうだ。
「なんそれ…今までのこと全部、否定するっちゅうことか?」
「否定なんてそんなつもりは…」
「男でも女でも関係ない言うたんなまえやん」
冷ややかな目で指摘され、言葉をグッと飲み込む。確かに、以前そういった話をした時に肯定的なことは言った。
「それは…他の人なら有り得る自然なことだなと思っただけで…」
「自分は違う、て言いたいんか?」
「……周りの目とか、あるじゃん。釣り合う相手とか、お似合いの相手とか…」
「俺は似合わん、てことか」
「違うっ。むしろ侑はこれからどんどん上に行って先があるのに隣にいるのが、こんな…。っ、もっと良い人が、可愛くて誰もが納得するような彼女が隣にいるべきだと…俺は思って…」
「……何やねん、それ…周りの目とか関係あらへんやろ、誰もが納得するって何やねん。お前の気持ちはどう思「『友達』のっ、ままで」
被せるように強く吐き出した二文字。侑が口を閉じて、俺を見下ろす。凍てつくような鋭い視線に見返すことは出来ない。
「これからも…友達の、ままで…」
俯きながら呟いた。自分が今どんな表情をしているか分からない。
「…それ、ほんまに望んどることなん」
怒りが滲んだ声に、喉の奥が震える。
本当は、違う。でも最前の答えはこれしかない。
「…うん」
小さく答えた肯定の呟きに痛々しい静寂が続く。
押し黙っていた侑が、口を開いた。
「無理」
「え…」
思わず顔を上げて、見上げると刺すような目を向けられた。
「友達のままがええ、言うんなら無理。金輪際、友達でも何でもないただの赤の他人や」
「……」
赤の、他人…
「今までのこと否定するっちゅうならそういうことやろ。仲が良かったことも全部なかったことにしたい言う意味やろ」
頭を振って反対する。
「ちが、「違わん」っ…」
侑の強い視線とバッサリと切り捨てる口調に、口を閉じることしか出来ない。
「今までのこと一切なかったことにして赤の他人になるか、自分の気持ちに正直になるか、選べ」
提示された選択肢に俺が望んでいる回答はない。
「…っ、友達の選択肢はないのかよ」
「あると思うか?」
静かな淡々とした声に目を伏せる。
「………」
「答えん、いうことはそういうことやんな。赤の他人でええっちゅうことやんな」
良くない。良くないけど…もう片方の選択肢を選ぶことも出来ない。どうしよう、と悩む俺に侑が舌打ちをした。
「もうええ。一生、俺に話しかけんな」
吐き捨てるように強い拒絶を示し、侑が大股で部屋の入口に向かった。勢いよくドアを開けて出ていった後、ぽつんと一人、部屋の中で立ち尽くす。
赤の他人…一生、話しかけるな…
頭の中で繰り返す。
あぁ…終わった。昨日まで友達だったのに…全部崩れてしまった。
じわりじわりとボディーブローを受けたように痛みが広がっていく。吐き捨てられた言葉が耳に残っている。
一生話しかけんな、か。
「はは…」
自業自得、自分で自分を笑ってみたが全然笑えない。
怒っていた。堪えきれない怒りが滲み出ているのが感じとれた。それでも、最善と思って口にしたのだ。
別に、こんな決別をしたかったわけじゃない。友達を止めたかったわけでもない。
拒絶された苦しみと、失ったものの大きさに、息をするのも辛かった。