SS 不機嫌を隠さない宮侑×なまえ
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
それは男子寮でのこと。
食堂で侑の後ろ姿を見かけて、何気なく声をかけた。
「なあ侑〜」
いつものトーンで、横に立つ。
「あ?」喉の奥から出された低い声に睨みつけるような鋭い視線で直視された。
「……!」
突拍子もない不機嫌全開の侑にびっくりして息を飲む。
「い、いや…なんでもない…」
視線から逃れるようにそっとフェードアウトして距離を取る。うわ、話しかけたの失敗だった、と未だにドキドキする心臓のまま少し離れたところに座る角名に近づいた。
「なあ、何があったんだアレ…」
侑に視線を向けて、角名に聞くとなんでもないように白米を口に含む。
「練習で喧嘩」
「治と?」
頷く角名。聞くところによるとかなりの大喧嘩だったらしい。
…だからといって人に当たるのは違くないか…?
近寄るな、と睨まれて威圧された身とすれば、とてつもなく不愉快なのだが。
「最初にそれ教えてくれよ。知ってたら話しかけなかったのに」
「言う前に近づいていったから」
「…まじで八つ当たりじゃん…」
なんだか、段々俺も腹が立ってきた…。
何で関係ない俺が侑からあんなに機嫌悪い態度で八つ当たりされなければいけないのか…。
「俺は怒った…」
「…どんまい」
角名の慰めも効果はなく、俺はモヤモヤした気持ちのまま部屋に戻った。
翌朝、食堂で朝食を食べているとバレー部メンツが入ってきた。双子は仲直りしたのか、二人揃って角名と食堂へ降りてきた。
「なまえ〜」
昨日とは打って変わって明るい声色で侑が名前を呼んでくる。
俺は、と言うと昨日のことを引きずってモヤモヤはまだ継続中。
「…なに?」
俺の素っ気ない態度に侑がピタリ、と固まった。
「は?なんや朝から」
目を細めて不機嫌そうに唇を尖らせた侑に俺は は??となった。
は?は???お前、昨日の俺にとった態度覚えてる?!
何や、って俺が何なんだって聞きたいくらいだよ!
「自分の胸に手を当てて考えてみろっ」
俺が吐き捨てるように小さく呟くと、侑は首を傾げた。
「は?俺なんかした?何もしてへんし」
はぁ〜〜〜っ???何もしてないっ?!どの口が言うんだよ!
イライラする俺を見て、角名が呆れたように息を吐いた。その目は俺を哀れむような視線だ。
「もう知らん」
「何?何で怒っとん」
もう知らない、と言っているのにズカズカと隣に座ってキョトンとした顔で見てくる男に物凄く腹が立つ。
「緊急会議開催っ!何でなまえがこんなに塩対応なんかっ!」
黙ってご飯を食べる俺の横で治と角名と三人で緊急会議を始めやがった。
「はーい」
「はい、サム」
「朝からツムのテンションがウザかった」
「それはない。却下」
「あ?人の意見真面目に受け入れろや」
「はい」
「はい、角名」
「昨日の侑の態度が最悪だった」
角名の言葉に それだよ!!と隣で全力で同意する。
しばらく侑が考え込むように顎に手を当てたあと思い出したように手を叩いた。
「あぁ!!」
は??こいつ、今の今まで忘れてたのか?
「何か、話しかけられたような気ぃもする!あ〜、ごめんて!」
軽く謝ってくる侑に、謝られたとは言え腑に落ちなくて無言を貫く。
「……」
「なぁなぁ、悪かったって」
「…八つ当たりとか超不快なんすけど」
「もう、せえへん!」
自信を持ってキリッとした顔で言うが、絶対に次もあるな、と確信する。
「なぁぁ〜ごめん、て許して??」
覗き込むように上目遣いでお願いしてくる侑に、自分の使い所をよく分かっていることが伝わってくる。あざとい。
ここで粘っても後がひどくなるだけなのでため息を吐いて、きゅるきゅるとしたその目を見る。
「…次やったら、俺の部屋出禁にするからな」
「!!絶対せえへんっ」
パァァッと満面の笑みで顔を綻ばせる侑にまじで調子の良い奴…!と呆れてしまう。
それなのに、そんな笑顔を見ていると 侑だし仕方ないか、まぁいいか、と許してしまうのは侑の人柄なのか、はたまた惚れた弱みなのか…。
いや、侑の人柄ということにしとこう。
晴れたり荒れたり、台風みたいな奴だな、と心の中で笑った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「謝罪が足りん。卵焼き寄越せ」
「…しゃーないわ、5分の1だけやで」
「少なっ!」