ゲーセン、行こ!

(2年時 秋)

バレー部の練習オフと自転車部の休足日が重なった今日。放課後は双子、角名、銀、俺といつものメンバーで繁華街をぶらついていた。

「ゲーセン寄る〜?」

誰かの一声でアミューズメント施設に入った俺達はゲームセンター特有の賑やかな音にテンションが上がった。放課後の高校生のたまり場としては最適でプリクラ機のブースには女子高生達の姿が目立つ。

カップルや高校生グループも多く、そんな中で高身長グループの侑達は視線を集めた。

「なぁ昔、ム/シ/キン/グやらへんかった?」

治の言葉に懐かしすぎて噴き出す。

「懐かしいっ、大量にカード持ってる奴いなかった?」
「おったおった。小学校の時、皆カード持っとったもんなぁ」

銀が頷きながら、カードファイル持っとるガチ勢おったわ、と語る。

「毎回ツムが『俺の番、まだ俺の番!』て代わらへんかってん、マジだるかったわ」
「はぁ?記憶喪失か?代わらんかったん、サムやろが」
「ウケる、想像出来る〜」
「今もこんなんやし、ツムが突っかかってくるやんか、喧嘩するたんびにおかんから『あんたら、ええ加減にしなさい!もう連れて来おへんよ?!』て怒られてん」
「捏造や!俺のせいにすな!」

言い合う双子を横目に純粋な疑問を投げかける。

「てか、俺らの世代でムシ/キングしたことない人の方が珍しいよな?」
「こん中でムシ/キングした事ない人、手ぇ上げて〜」
侑の声に5人共、手を上げず顔を見合わす。

「ぶっ!!」
「何、なまえ何で俺見て笑ってんの」
「いやっ、角名がムシ/キングって、ちょっと想像したら…く、苦しいっっ」
「確かにテンション上げながらカードスキャンする角名は想像できへんな…」

銀の言葉で気怠げにゲーセンでムシ/キングをプレイする角名少年を想像してしまいツボに入る。

「チ、チベスナ顔でカードスキャンする角名…っ、想像したら腹いてぇっ、うはははっ!!」

負けたら無言で立ち尽くしてそうっ、と爆笑していたら角名に肩を鷲掴みされた。握力が強すぎて肩にくいこんでいる。

「痛い痛い痛いっごめんごめんっ!角名少年はあの頃はまだ天使だったんだよなっニコニコしながら、勝ったら飛び跳ねてたんだよな!きっとそう、ぅあっ、いたっ」
「ねぇ、ちょっとあっちでシューティングゲームやろ?」お前を撃ってやるから、と静かにキレている角名に連れていかれまいとガードする。

何で遊ぶか各自で物色を始めて、ぶらついてみた。隣を歩く侑にUFOキャッキャーのコーナーで夢を語る。

「大人になったら100円玉大量に握りしめて延々とUFOキャッチャーしてみたいなぁ」
「財布気にせずに百円玉投下できるん大人やんなぁ」
「百円くらい気にしないお金持ちになりてぇー」
「なまえは無理やな」

ケラケラ笑う侑を小突いていると、制服姿の高校生カップルがUFOキャッチャーの前でキャッキャとはしゃぐ姿が目に入った。彼氏が彼女のために取ってあげようとしている。

それを見て、ニヤリと笑って侑の袖を引っ張った。

「ねえねえ、あつむくーん、あの景品ほしーいっ!」

裏声でビッグサイズの菓子箱がセッティングされているUFOキャッチャーを指差してみた。

「きっしょ!今、鳥肌立ったわ、やっばぁ」
「何だと?分かった、下手すぎて取れないんだろ?ん?」
「あん?下手やと?俺が?…俺に出来ひんことはないで?」
「やめとけ、ツム。失敗するんが見えとる。ダサいだけや」

近くを通った治が全てを見据えたように呆れた目で横から声をかけた。

「宣戦布告!受けて立つ!」
「キャーー、侑クン頑張ってーーっ」
「裏声やめぇや」
治のツッコミに笑いながら侑に声援を送る。

狙いを定めてアームを動かすも簡単にはいかず、結局二人で交代しながら粘ること20分。治達三人はエアホッケーをやりこんでいた。

「侑、空間察知能力、強いはずだろ」
「は?なまえこそ、今かすってもないやんけ」
「あっ、待て待てっ!侑それいけるんじゃね!そこ!そこ!」
「おおおっ!これはいけるやろ!」
「来る…来るぞ…」
「引っかかれ……!!」
UFOキャッチャーのアームが目当ての景品に引っかかった。ゆっくりと持ち上がり、落とす所まで持っていく。2人で固唾を呑んで見守る中、ガコンッと景品は取り出し口まで落ちた。

「「おおおっっ!獲ったーーっっ!」」
喜びの表現が荒すぎる侑に手加減なしでバシバシと叩かれる。戦利品を取出口から持ち上げて、手に抱えた。

「獲れたぁっ!こういうデカいお菓子の箱、夢あるよなぁ!」
「最後獲ったん俺やでっ?感謝せえ」
「ありがとう〜っ」

鼻高々な侑に笑って侑にお礼を言うと、俺の顔を見て言葉を詰まらせた。

「…な、なんや、素直にお礼言えるやんか…」
「…当たり前だろ、侑じゃあるまいし、何言ってんだ」

侑と一緒にしないでくれ、と言えば「はぁ?」と頬を手で挟まれた。コロコロと変わる表情に忙しい奴だな、と思っていると侑の後ろに知った姿を見つけた。

「あっ、北さん!」

俺の声に侑が鼻で笑いながら振り向いた。

「ふ、北さんがこんなとこ来るわけないや、き、き、北さんんんっ?!?!」

侑の驚きように、エアホッケーをしていた治達がミーアキャットのように一気に顔を上げた。シンクロした動きに俺は一人で噴き出す。

「ち、ちわっす!北さん何でここに…っ?!アランくんも!」

北さんの隣には尾白先輩も立っていた。

「あ、俺が呼んだ」
驚いている侑の横で控えめに手を上げてみる。
今日、廊下ですれ違った時に繁華街に行くという話を聞いていたため、近くにいるかもしれないと思った俺は、北さんに連絡を入れていたのだ。

「みょうじくんからメッセージもらってな。アランと近くに来とったし寄ってみようか、て」

爆音が響くゲーセンと北さんがアンマッチなのは否めない。北さん達も一緒に遊べる!とワクワクしていると侑の鋭い視線を感じた。

「なんだよ」
「(北さんがおったら、全力で楽しめるもんも7割しか出せへんやろが!!はしゃいだら叱られるで!?)」
「(怒らないよ、北さん優しいもん。神様、仏様みたいに優しいもん)」
「(アホかっ!絶対『侑、ゲーセンとはいえ静かにせな。周りに迷惑かけたらあかんで』って言われるやろが!)」
「(いや、ご最もなことじゃん)」
「侑?」
「はいっ!」
「全部聞こえとるけど」
「ひぅぅっ!」

北さんが首を傾げて、硬直する侑を見上げた。青ざめた顔をしている侑に治達が「あーあ、やらかしたわ」とボソボソ呟いている。

「ゲーセンは楽しむところやろ?楽しんだらええやん。周りに迷惑かけん程度にな」
「ふぁ、ふぁいっっ!!」
一命を取り留めた侑を治達が「よう生きて帰ってきたな」「おかえり」と肩を叩いて出迎えていた。そんな2年ズを見て笑いが堪えられない。

北さん達が合流して遊ぶことになったが、双子の主張が激しく片っ端から全力で遊ぼうとする2人に一行が付き合う形になる。

ローラースケートでは…
「アランくん!生まれたての小鹿やん!膝笑てる!」
「治、喧しい!今、床と一体化する感覚探ってんねん!」
「一体化って何?!笑わせんで!!て、ツムぅ、お前も小鹿やんけ」
「いや、ちょ、待って?!アランくんのせいや!アランくんがプルプルしてんの俺に伝染してんねん!アランくん、やめてくれ!」
「いやっ、やめてくれ言われても俺の膝が止まらんのや!」

「あそこの3人見てたら笑いすぎて辛い…」
「なまえ、侑達に近づいたらやばいよ、絶対押してくるから」
「うわぁ、想像できる…って言った先から!来やがった!!逃げろ!」
「うぇーーい慣れてきたで!!」「鬼ごっこや!」
「こっち来んな!銀の方に行け!」「はぁっ?!あかん!来んな! 」
「見てみ、この速さ!ツム、行くでっ」「サム、挟み撃ち作戦や!」

狙われる銀を放置して北さんの傍に滑り着く。

「北さん!!助けてくださいっ!」
「ん…?ちょお待ってくれるか?まだ慣れとらんねん」
「はぁ…ここが癒しの空間か。北さんの半径2mは安全地帯ですね、お隣失礼します…」
「おーい!なまえ卑怯やっ北さん使うとかせこいで」
遠くから侑に指摘されて舌を出した。

「俺は北さんとゆる〜く楽しんでるんだから、近寄るなよっ!」

結果、ゆるゆると滑る北さんの後ろをヒヨコのようについていく俺と角名。尾白先輩と銀、双子達は鬼ごっこをして遊んでいた。

全力でローラースケートを楽しんだ後、「プリクラ取ろうや!」なんて言い出した侑と治。ガタイの良い男子グループがプリクラ機の周りにいるだけで女子達の視線が刺さる。

「お前ら、絶対ノリだろ」
「ノリで撮るからおもろいんやろ!」
『壁紙を選んで、ポーズを決めてね!』
アナウンスが流れ、撮影が始まろうとしていた。
「あっ!始まるで!入れ入れ!」

プリクラの撮影ブースに高身長バレー部6人と俺ではさすがに狭さを感じる。

「一番盛れるプリ機選んだからな、そこらへんの女子より盛りまくりやっ」
誰と勝負しているのか分からない本気の侑に噴き出しそうになる。

『準備はいいかなぁっ?ポーズを決めてね!』
「変顔行くで!変顔っ!」
『さん、にー、いちっ』
侑の声に慌てて要求に応える。シャッター音と同時にフラッシュが瞬いた。

『こんな風に撮れたよっ!』
「あかん、地獄絵図や!」「絵面ひっどいわ!ウケるッ!」
変顔を決めた写真が面白くて皆、笑いが止まらない。

「おい、角名ぁ変顔してへんやんっ。北さんだってこないにほっぺ膨らましてんのに!」

侑の指差すモニターにはハムスターのようにぷくりと頬を膨らませた北さんが写っている。変顔というよりは俺から見たら可愛らしい。

チベスナ顔に不服を申し立てる侑。角名は涼しい顔をしている。取り持つためにも俺が介入してやろうと手を上げた。

「まぁまぁ、しょうがないだろ侑。角名はいつもの顔がすでに変顔なんだか「は??」いだだだっ」
『2枚目撮るよーっ!さん、にー、いちっ!こんな感じに撮れたよっ!』

「うわっ角名に絞められてるところ激写されたっ、現行犯逮捕だろこれ」
「は?」
「これ後で角名の目、黒い線入れてやるからな。完全に容疑者の出来上がり」
「なまえの目も塗り潰してやるから」

そんな言い合いをしながら取り終えたプリクラは何とも『ノリで撮りました』感満載だった。
盛りまくりの加工で、全員目がきゅるきゅるして唇がぷっくりと赤い。

切り分けられたシールに爆笑していると侑が生徒手帳に貼り始めた。

「何しとんツム」
「え?女子、皆貼っとるやんか。生徒手帳に」
「ま、じ、で、その変顔を貼るのはやめろ。落とした時に見られたら恥ずかしすぎるだろっ」
くふくふと楽しそうにしている侑は、俺の主張を聞くつもりはないらしい。

「ちょ、みょうじも角名もお互いに目に黒い線入っとんのなんやこれ『角名の素性が明らかに…!』て誰が書いたんや。撮ってはいけない場面撮っちゃいました感、出とるわっ」
銀のツッコミに双子がシールを覗き込む。
「闇を感じる1枚や」「タイトル『近隣トラブルの真相』とか、どうや」
「生々しいタイトルやな!」
尾白先輩のツッコミも加わる。

少し離れたところで北さんは手にしたプリクラをじっと見ていた。近寄ってみると北さんが俺に気付いて顔を上げた。

「皆、顔がちょっと違うな」
「激盛りの加工ですからね〜」
「…ふふっ」

き、北さんが笑った!!5人で顔を見合わせる。

「「ク、クララが立った…っ!」」
「アルプスの少女ハイジかっ!」

双子のノリに尾白先輩の軽快なツッコミが入り、くすりと笑う。

「…みょうじくんも楽しそうやな」
「はいっっ!」

穏やかに微笑む北さんを見て俺も笑って返した。

「何やねんアレ、背後に小鳥とお花とアルプスが見えんのやけど。俺も混ざってきてええ?」
「侑、お前が混ざったらアルプスどころか一気に無法地帯になるから、やめとけ。いや、頼むからやめてくれ。俺のツッコミが間に合わんわ」
「アランくん、俺らも小鳥寄せてみようと思うんやけど、なぁツム」
「なぁサム。ちょっとスキップして走ってみる?俺らの背後にもアルプス見えるかもしらん」
「おお、ええなぁツム!」
「いらん!やめとけ!あの二人と張り合うな!純度がちゃうねん!」

「平和やなぁ」「まぁ、これが平常運転だし」

賑やかな放課後を過ごした俺達は「そろそろ帰ろか」という北さんの一声に素直に従う。
オフ日を満喫したメンバーはゲームセンターを出た。

銀と別れて寮組は男子寮への帰路に着く。気になっていたことを北さんに聞いてみた。

「北さん、ムシ/キングしたことありますか?」
「「「(……気になる)」」」
「…あるで、カブトムシのやつやろ?」
「「「「(あるんや!)」」」」
「おおおっ、やっぱ皆通る道ですよね!」
「俺、レアカード持っとった」
「おっ?!尾白先輩もですか!」
「俺は、カブトムシもクワガタも山で採る方が楽しかったな…」
「き、北さんさすが…」
「「「(さすが自然の申し子…)」」」

北さんの回答は期待を裏切らないということを知った。

▽

帰寮して一日を終える就寝前。
ベッドに入る前に撮ったプリクラを眺めて、一人で噴き出してしまった。
男子7人で撮った変顔の一枚、動きすぎて躍動感満載の一枚、決め顔の一枚、笑顔の一枚。

今日、面白すぎたなぁ…

思い出すだけでニヤけてしまうほどに、楽しかったなぁと思い返す。

全力ではしゃいだ後の満足感に浸りながら目を閉じれば、すぐに眠りの世界に落ちていった。

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