猛暑日にご注意(R15)

社会人編 日常 SS
R15注意



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「あ〜あっぢぃぃ…」

テレビ局のアナウンサーが『今日も猛暑です、お気をつけてお出かけください』と猛暑の注意喚起を促しているニュースを見た後、覚悟して部屋を出たのが今朝の話。

最寄りの駅まで侑を迎えに行き、自分の部屋の近くまで連れてきた。茹だるような夏の暑さに目を細め、熱された空気を吸い込む。30℃を優に超える灼熱の外は、少し歩いただけで汗が首筋を伝う。

鉄板の上で焼かれているような気分になりながらアスファルトの上を歩いた。

「し、死ぬぅ…暑すぎぃ…。侑が迎えに来い、なんて言わなかったら俺は今頃、快適な室内で過ごせてたのに…」
「はぁ?!愛しのマイダーリン迎えに来んの、当たり前やろ!?」
「だぁれが愛しのマイダーリンだ、アホッ」
「さっきアイス、買ってやったやんけっ」
「アイス1本じゃ足りんわっ、早く冷凍庫入れないと溶けるっ」

お互い暑さに舌を出し、言い合いながら部屋の前までたどり着く。玄関に入り込み、部屋の鍵を靴箱の上に置いた。

玄関から部屋に続く廊下には自転車専用のディスプレイラックがあり、ロードバイクを2台立てかけている。幅を取っているため、侑はぶつからないように大柄な体を傾けて通った。

足早に部屋に向かうと、外出先から帰ってきた室内はサウナよりも暑い熱地獄だった。

「エアコンっ!冷房っ!」

部屋に入ると同時にエアコンのリモコンを手に取り、電源ボタンを押した。

ピピピ、と電子音を鳴らし冷風を送り出す家電を確認して、冷蔵庫に向かう。冷凍庫に買ってきたアイスを入れ込んでいると、侑は扇風機のスイッチを入れ、強風を顔に当てていた。

冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出して、コップに注ぎ侑に渡す。

「ぁああっつぃぃ…命の麦茶やぁぁ」

なみなみ注いだ麦茶を一気に飲み干す侑。上下する喉仏が夏の暑さを物語っている。

社会人なりたての一人暮らしの部屋に男二人なんて、それも片方が高身長なバレー選手となると一気に室内の人口密度が上がった気がして暑さ倍増だ。

「早く冷房効いてくれ〜っ文明の利器ぃ」
「エアコンないと生きてかれへん…」
「分かるぅ、必須…」

10分もすればマシにはなったがそれでも暑いものは暑い。張り付くTシャツをパタパタと扇いで風を作りながら買ったミルク味のアイスキャンディを取り出した。

ソファに座ってペロリと舐めると舌に冷たくて甘い味が伝わり、暑さも幾分かマシになる。

シャクシャクと音を立てながらアイスを口に含みつつ、携帯をいじる。そんな俺の隣に侑が座ってきた。横に倒れてのし掛かって来る重さは高校の時の比では無い。

「うぐぅ、潰れる…自分の重さを自覚しろ…」
「一口ちょおだい」

口を開けて待つ侑に1口だけだぞ、と念押してアイスキャンディを近づけた。大きく口を開けて齧り付く侑に目を見開く。

「あっ!おまっそれは3口っ」
「ふふん♪」

美味そうにシャクシャクと噛んでいる侑を睨んで、もうお前にはやらないからな、とソファ上で少し距離を取る。

距離を取ったにも関わらず、俺の腰に両腕を回して引き寄せてくるものだから、アスリートの力に適うはずもなく、太腿の上に引き上げられた。

密着するように腕の力を締めてくるが、室温は高くまだまだ冷房の効きが甘い中で、くっついてくるのはいただけない。

「ぁっ、つむ!暑っ苦しい!くっつくなっ」
暑苦しいと訴えると不服そうに目を細めた。

「…むぅ」

頬を膨らませるクマのような男を引っ剥がしてソファに座り直すと侑が立ち上がってエアコンのリモコンを手にした

ピピピ、と鳴る電子音に何やら操作している。何してんだと横目で見ていると、エアコンから先程とは比べ物にならないほど冷たい風が流れ出てきた。

「冷たっ!!風邪ひくっ」

いきなりの冷風に寒ささえ感じる。侑がソファに戻ってきてまたくっついてきた。

「寒いなら、くっついてもええやん」

頬を膨らまして拗ねたような表情で首に顔を埋めてくる侑の腕を軽くグーパンチする。

「アホかっ、そういう問題じゃない」
「そういう問題やねん」

ああ言えばこう言う、そういう奴なのだ。正直暑苦しいがアイスを食べ終わるまでの我慢だと思うことにして一口、アイスキャンディに齧り付く。

冷たいミルク味が熱を持つ舌の上ですぐに溶けていく。冷たさを失わないうちにもう一口、と口に含んだ瞬間。

侑が顔を近づけてきた。触れ合う唇から割り入るように舌が入ってくる。

「んぅっ」

侑の舌の熱さに驚いて、溶けた甘い液体をごくり、と飲み込む。体温の高さが伝わってくる生々しさに冷えた口内とは裏腹に体は熱を持ち始めた。
アイスで冷えた口内を熱を持つ舌が溶かしていく。絡み合う舌に冷たいのか熱いのか分からなくなってくる。

「ぁ、つむぅっ」

肩をぐい、と押して、解放された時にはアイスキャンディを持つ手に溶けたミルク味が垂れてきていた。

「い、きなりやめろっ」

チロルを注意するように怒った顔で強く言うもニヤニヤと笑うだけで目の前の男には全然効き目がない。それどころか真っ赤な舌で唇をぺろりと舐めて「もっと??」と煽るように口角を上げた。

「アホかっ」
「もっと食いたいーー、アイス食いたいー」

ブーイングする侑を無視して、溶けかけているアイスキャンディに舌を出して舐める。
指に垂れてきたアイスも舌ですくうが、ベタベタするため手を洗いに行きたい。

「……煽っとるやろ」
「はぁ?どこが?てか、やっぱ寒くなってきたっ!侑、下げすぎなんだって!」

何度にしたんだよ、と立ち上がろうとすると腰をぐいと引っ張られた。

「ぐぇっ」
「今からあったまればええやん」
「な、に」
「あったまることシよ♪」

楽しそうに笑って覆いかぶさってくる。ここで抵抗しても負けるのは分かっている、今までの攻防戦で幾度となく経験してきたことだ。

俺に抵抗させる気なんてさらさらない侑に小さく熱い息を吐き出した。

求めて止まない視線を浴びて抵抗できるほど強いわけでもない。

お預けを食らうと拗ねる未来が見えるから仕方なく、仕方なくだからなっ!流されてる訳じゃないからなっ!と自分に言い聞かせながら、触れる手を受け入れた。

諦めて脱力した俺を見て、悦に浸った顔で嬉しそうに、にんまりと笑う。

その顔がどうしようもなく体を熱くさせるから、夏の猛暑の方がまだマシだな、と思ったのだった。

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