〖他の奴とお楽しみとはええ度胸しとんなぁ?〗
Vリーグ編
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(宮侑)
「おい、これどういうことやねん」
休日の昼間、なまえの部屋で過ごしながらSNSを眺めていた時。何気なくスクロールした中に衝撃的なものを見つけてしまい、俺は愕然としていた。
パソコンの画面に集中しているなまえの背中に、問いただす言葉を投げつけると呑気な返事が返ってきた。
「んー?何ー?」
なまえはゲームコントローラーを握ったまま、画面から目を離さない。
オンラインゲームに熱中している恋人にイラッとしてソファから立ち上がり、携帯の画面を目の前につきつけた。
「こ、れ!」
「どれ??」
携帯の画面に表示されたSNS上のやり取りを見せる。なまえはゲームを中断して携帯を覗き込んだ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「おー…これが、どうかした??」
不思議そうに見上げてくるなまえ。
その表情は本当かウソか。素知らぬ顔の下で何を考えているのか読み取らせないなまえに目を細めて見下ろした。
「…なぁ、この間美味しいとこ食べに行った、て写真送ってきたよな?」
「あー…」
「これ、ここやったよな?」
「うーん、そうだったっけ?記憶が曖昧…」
「は?ボケんのまだ早いで?送ってきた写真、この店のメニュー写真と同じもんやろ」
「……そこだった気もする」
「…ほんで、こないだの写真と、このツイート同じ日やんな?」
「う、ん…」
なまえの目をじっと見ると、なまえも目を見返してきた。
見つめ合うこと数秒。
なまえがふい、と目をゲーム画面へ向けた。いや、逸らした、が正しい表現だ。
コイツ…分かっとるな。
「お前、ここ臣くんと行ったやろ」
静かに言うとなまえはへらりと笑った。
「……いやぁ、確かに同じ日だけどさぁ…それで聖臣くんと俺が一緒に行ったことにはならないだろ…?」
あーー、これはあかんわ俺に隠そうとしとる。
こちとら、ちゃあんと証拠持ってんのやぞ??
ええんか?お前、ほんまにそれでええんか?
「ふうん、ほな臣くんとは会ってないんやな?」
「ていうか、そもそも何で聖臣くんと俺が会ってるって思うわけ?」
かいくぐろうとするなまえにこれが目に入らぬかと印籠を突きつけるが如く、なまえから送られた写真を指差した。
「この写真のグラスの反射っ、ここ!これや!」
拡大してグラスに写ったシルエットを見せる。この黒髪のうねり、体格、肩幅の広さは同じチームメイトの佐久早聖臣、臣くん以外にいるはずがない。
「なまえクン、これ、どういうことか説明してくれん?」
真顔で詰め寄るとなまえは驚いたように俺の携帯を覗き込んだ。黙り込むその姿に、やっと自分の非を認めたかと思ったら…
「〜〜っすっげー!!侑、よく気づいたな!すごい!」
パッと顔を上げて見せた表情は想像していたものとは遥かに違っていた。スーパープレーを見て目をキラキラさせている時と同じように笑っている。
「は、」
「侑、特定班になれるぞ?!すげっ!ネットで特定班って言われる個人の特定作業がすごい人達がいるんだけどさぁ〜」
きゃっきゃと嬉しそうに話すなまえに腹の底から煮えたぎる思いがぐつぐつと沸いてくる。
関心するとこちゃうやろがボケ!
「いやぁ、今、俺鳥肌立った!こうやって特定されるんだなって実感した、怖いわ〜」
ひぇーとか何とか言いながら鳥肌立ったと腕を見せてくるなまえに口元が引きつった。
コイツ…反省の色、皆無やん……
「………おい」
「ん?」
「………俺の言いたいこと分からんのか?」
冷えたきった声で椅子に座るなまえの肩を掴むと「ゔっ」と呻いた。
「い、痛いんですけど侑くん…」
「痛くしてんのや」
「ひ、ひどい…」
「酷いんはどっちや。なぁ?どういうこと?臣くんと2人で飯行ったん?なぁ?」
肩を掴まれたなまえは痛みに顔を歪めながら、こてんと首を傾けた。
「……行った…かも…?」
「…………」
ギリギリと握る力が強くなるのは仕方がないと思う。
「いだだだっ!!ゴリラ!ゴリラ並!!俺の肩はリンゴじゃねえ!砕くな!」
「誰がゴリラや、誰が…っ!」
なまえの両手が俺の腕を掴み「説明するからっ」と言うので仕方なく解放してやる。
「言い訳はいらんけど?」
「い、言い訳じゃないし!別に…約束したわけじゃなくて、街中で偶然聖臣くんと会って、話してたら会話が弾んだから…。腹減ってたし、あそこ気になってるんだよねっていう話から…」
はぁ?!あの臣くんと会話が弾むってどういうことや!!
お前、そこで人当たりスキル発動すんなや!
人あたりの良さと持ち前のコミュ力で誰とでも話せるのはなまえの良いところではあるが、発揮するところを間違えてないか、と声を大にして言いたい。
「だから…成り行きっていうか」
「ふうん…楽しかった?正直に言うてええよ?」
怒らんから言え、と微笑んでやる。
「……そりゃ、まぁ楽しかっ、いだだだっっ!!おい!」
ああ、思わず手がなまえの肩にめり込んでいた。暴力反対と非難するなまえを睨み下ろす。
「飯食った後買い物した、言うとったよなぁ?」
「…言ったっけ…?」
「それも臣くんと行ったん」
「……同じ方面だったし」
「行ったんやな?」
「……行った…かも?」
「あ??」
調子乗んなよと凄めば、なまえは両手の平を見せ降参とでも言うように肩を竦めた。
「行きましたぁ、すみませんでしたぁ」
「あ?すまんで済むと思っとんか?」
「俺だって、帰ってから聖臣くんと出会ったよって言おうと思ってたけど!侑、帰ってきてから眠いってすぐ寝てただろ、言うタイミング逃して今日に至るんだよ」
携帯を手に椅子から立ち上がりソファに向かうなまえは、完全に俺から逃げようとしている。
「お前な、知らんうちに俺が他の奴と同じように歩いとったらどやねん」
俺の気持ちが分からんか?
聞いてみると、なまえはソファに座り、黙り込んだ。
「…別に、いいけど」
「本気か?お前それ本気で言うとん?」
腕組みをして睨めばなまえは唇を突き出した。
「……嫌だけど…」
目を伏せて言い直すなまえにぐっ、と堪える。
くそ、可愛ええのが腹立つ。
「せやろが。それと同じや」
臣くんに限った話やなくて、誰でも彼でもホイホイついてくなっちゅう話や、と釘を刺すとなまえは考え込むように腕を組んだ。
「…いや、でもさ俺はそんな誰かとどうこうなる可能性なんてゼロだけど、侑は違うじゃん」
「…はぁ?」
「侑はモテるんだから、俺と同じではないわ。一緒にしてもらったら困る。うん、やっぱ俺は良いけど侑はダメだわ」
うんうんと当然のように頷くなまえ。
「はぁぁぁ??」
何を言うとるんやコイツは。
「皆さ、モテる奴に隣で歩かれると勘違いしちゃうもんなんだよ。あっ、この人自分のこと好きなのかも…、とか一緒に過ごすってことは好意あるのかも…っとか。凡人な俺はこの目でそういう光景を幾度となく見てきたし…高校の時なんか、それはもうたくさん…」
だから俺は良くて侑はダメ、なんてジャイアニズムを掲げてくるなまえ。
あかん。こいつほんまあかん。
「ちょお誰か医者呼んできて!!今すぐコイツの頭を見てほしいっ!!」
顔を覆い、ため息を吐いている間にもなまえの戯言は続く。
「侑が誰彼構わず他の人と2人で歩いたら『宮選手、熱愛!』って噂されるかもだし、っていうか相手もその気になるかもだし……え、何か自分で言ってて不安になってきた……やめてくれよ?不安にさせんなよ…」
自分で好き勝手言っておきながら、しょんぼりと力無い表情をしている。
「どの口が言うとんじゃ、ゴラ!俺やなくてそっちの話や!!なまえが臣くんと歩いとったんやろ!」
「だから俺は別にどうこうなるとか「それが勘違いすんねん!なまえの味を知った奴が一番タチ悪いねん!」」
「なんだよ、味って」
「おでんの大根の美味さに目覚めた時と同じ感じや」
「いや、意味不明」
「普段気づかんのに何気なく食べたら、美味さに飛び上がる時があるやろ。あれや」
「なんか味気ないって言われてる気がするんだが」
「とにかく俺は今、怒ってんねん」
「ん、許して」
なまえは片手でごめん、と顔の前で手を立てる。
「ええよ、ってなるかいな!」
「じゃあ何したら許してくれんだよ」
「…んー、そやな。自分からキスして」
「え……無理」
「はぁ?ほな許さんわ」
「………」
なまえからキスしてくる以外の解決策はないと伝えると、黙り込んで携帯をいじり始めた。
逃げやがったな。
「話、終わってないんやけど」
ソファに近づき、なまえの携帯を手で覆うとなまえは渋々顔を上げる。
「無理だって」
無理、ってそんな拒絶ある??そんなに嫌?傷つくんですけど。
「はぁ…そんなに嫌ならもうええわ」
ショックと素直にならないなまえに対する苛立ちで俺はきっと面白くない顔をしているだろう。
なまえは携帯の画面から視線を上げた。
「かっこいいから自発的に顔を近づけに行くとか恥ずかしすぎて無理」
「…その言葉を無表情で言えるお前が怖いわ」
「…したいけど、無理」
「無理なんかしたいんかどっちやねん」
これで無理って言われたらマジで泣くわぁと思っているとなまえは間を置いて、視線を床に落とした。
「……したい」
……くっっそ、コイツほんま…っっ!!!
さっきまでのショックも苛立ちも、全部身悶えするような感情に塗り替えられていく。
極めつけにチラッと見てきたなまえに全部持って行かれた。
ああ、腹が立つ。
自分から出来ないからって俺にさせようとしているのが分かる。
そしてそれに応じてしまう自分も相当コイツに惚れてるんだと自覚しているし、俺が動くことを分かっているなまえにも腹が立つ。
ソファに座るなまえに近づけば、顔を上げて見上げてきた。
腰をかがめなまえの頭に手を回す。顔を近づけると、なまえが目を瞑った。
俺からキスをすれば応えるなまえに、軽く啄むだけにしてリップ音を立て顔を離す。
「…ッ、」
名残惜しそうに俺の唇を見たなまえ。
物足りなさそうなその顔に理性が飛びそうになる。
「なんちゅー顔しとんねん…」
「…ずるいぞ」
「なにが?」
ニヤリと笑って唇を舐めた。
「分かってんだろ…」
分かってる、もちろん。
まだ足りないというなまえの顔を見れば分からないはずがない。
「さぁ?」
「…はぁ、もういい…」
どれだけ欲しくても自分から求めるのは恥ずかしいのか、拗ねたように顔を背けてソファにもたれかかった。
自分の唇をすり、と指の腹で撫でる姿がどうしようもなく情欲を掻き立てる。
無意識なのか、意図しているのかは分からないが、俺を煽っていることに違いはない。求めてくるまで応えてやるものかと思っていたのに。
唇を撫でながら、指なんかで満足できないと言いたそうな顔で俺をちらりと見上げてきた瞬間、意思はぐらりと傾いた。
呆気なくやられてしまった自分に悔しさを感じざるを得ない。
「…っほんま腹立つわ」
日を追うごとに底なし沼のように引きずり込んでくるなまえに恐怖さえ覚える。
「おい、こっち向けや」
覆い被さるようになまえの顔の横へ手をついた。筋肉をつけた腕は高校の時よりも太ましく、なまえの体を無理やり開くのも容易いほどに力を持っている。
「盛大に煽っといて、後で無理とか言わんといてな?」
「…何も言ってないし、煽ってもないんですけどぉ…」
「言うてなくても、目が煽っとんや自覚せえ」
キレ気味に見下ろすと、なまえは足を抱え込みソファの上で体育座りをした。そんでもって、言いにくそうに俺を見て一言。
「……なぁ続き…まだ?」
……あぁ、ほんっとうに腹が立つ。
主導権を握っているのはどっちなのか。
「…ええ加減にせえよ、ほんま」
結局、許してやらざるを得ないのだから。
こっちはまだ怒っとんぞ、となまえの体に手をかけ持ち上げる。
「ぎゃっ!」
「責任取ってもらうで」
「どこ行くんだよ!」
「ベッドに決まっとんやん」
「ちがっ!そこまでは求めてないっ!キ、スだけっ」
「は?求めてないとか知らんわ」
なまえの体をベッドに投げると「ぶへっ、」と可愛くもクソもない声を上げた。
「さあて、しっかり責任取ってもらおか」
上に来ていたTシャツを脱ぎ上半身を露わにする。自慢じゃないが鍛え上げた筋肉は自分で見ても惚れ惚れするほどだ。
そんな俺を見てなまえはベッドの上を這いつくばり逃げようとした。腰を引っ掴んで自分の下へ押さえ込む。
「諦めや。スイッチ入れたんなまえやからな?」
「……俺は軽く、スキンシップできれば、それで良いと思っ、んっぅ」
ごちゃごちゃ言うなとなまえの唇を塞いだ。
お望み通り好きなだけキスしたるから黙っとけ、と言わんばかりにその唇に噛み付けばすぐに蕩けてしまうのだから、どうしようとない奴だと呆れてしまう。
臣くんと飯行ったことを俺に黙っていて怒らせた分と煽った分、許しを乞うまで攻め立ててやろうとなまえの腰に手を滑らせた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(宮侑、みょうじなまえ)
「で、臣くんと何話したん」
「寮で侑から使用済みタオル投げられた話とか…」
「……」
「聖臣くん、引いてた」
「風評被害やわ!嘘言うな!」
「嘘じゃないだろっ」
「かっこええ侑くんのイメージが崩れるやろが!」
「大丈夫、もう崩れてるから安心しろ?っいたたたっ!シメんなっ!」
「腹立つぅ」
「侑の話も聞いたぞ」
「はぁ??」
「侑の言い方、腹立たない?って聞いたら『たまに本気で消したいって思う時ある』って言ってた」
「こっっわ!!臣くんこっっわ!!」
「でも、トスがしっくりきた時は『まぁ悪くはない』って」
「上げ下げ激しいわ!」
「ふふっ、だから『ウチの侑くん頑張ってるだろ』って言っといた」
「…嬉しそうにすなアホッ」
「照れんなよ〜っ」
「うっさい!」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(佐久早聖臣、宮侑)
「臣くん、こないだなまえとランチ行ったらしいなぁ」
「お前、俺にタオル投げてきたら…分かってんだろうな」
「はっ?!何で俺が使用済みタオル投げるキャラみたいになっとん?!紳士の俺がそんなこと、するわけないやん!」
「………」
「その目やめてぇっ!? ちゅうか、なまえと何話したん?話すネタある?あいつバレーのこと分かってへんで、下手やし」
「…掃除方法の話とか、オフシーズンの体力の作り方とか…自転車の話聞いた」
「あっ、めちゃくちゃ健康的な話やんー!安心したわ!!」
「お前のことかっこいいとか言ってたけど…餌付けでもしてんのか」
「え…?ほんま?」
「『アホだけどたまにかっこいいからプラマイゼロ』って」
「……アイツ…!一瞬好きなもん買ったろ、て思ったけど消えた!」