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部活が終わった後、寮に帰って課題をしていると携帯が震えた。

〘宮侑がスタンプを送信しました〙

ラインを開くと侑からスタンプだけのメッセージが送られてきている。
キャラクターがご飯を食べているスタンプ。

「なんだこれ」

そのまま放置して課題に取り掛かるとまた通知が来た。

〘宮侑がスタンプを送信しました〙

今度はご飯そのもののスタンプ。どういう事だろう、と考えていると

宮侑〘既読無視すんな〙

とメッセージが来た。

みょうじなまえ〘なに?〙
宮侑〘スタンプ〙
みょうじなまえ〘が、なに?〙

返事するとすぐに既読になり、いきなり画面いっぱいに宮侑の文字とアイコンが表示された。通話だ。画面をスライドして出る。

「ん?」
『ん?じゃないねん。スタンプ見たやろ!』
「うん」
『意味分かるやろ!』
「え、分からん」
『飯のスタンプっちゅうことは今から食堂行くいうことや!』
「いや、わかんねえよっ」
『分かれ!まだ食べてないやろ?』
「あー、まだ。課題中」
『ほな今から降りるわ。後でな』「はっ?え、ちょ、」

すでに通話は一方的に終了していた。

「……俺課題の途中なんですけど…」

角名みたいな面持ちになりながら、ため息を吐く。
携帯と鍵を持ってスリッパを履いた。

部屋から出て食堂に行くと侑と治、角名が座っていた。

今日のご飯は魚のフライがメインだった。白ご飯と味噌汁を盛って、メインディッシュを取り侑達の所へ向かう。

「侑さぁ、呼び方が雑すぎだろ」
角名の隣に座って携帯を机の上に置いた。
3人ともご飯が山盛りだ。
「飯のスタンプ言うたら、今から飯食う、しかないやろ」
ばくばくとご飯に詰め込みながら、ケロりと言う侑。
「みょうじ、言ったって無理だよ」
「さすが角名、慣れてるな。まぁいいや。いただきます」

サクサクとした魚のフライから手をつける。
「うめぇー」
「せや、食い終わったらなまえの部屋行こ」
「は、何でだよ」
「俺も課題する。サムは課題ないから言うて遊ぶやん。そんなん横でやられとったら、やる気なくすわ」
治は俺は悪くない、課題がないだけや、と横から言う。
「でも珍しいな。ツムが前日に課題終わらすとか」
「…まさか、お前俺の写す気じゃないだろうな…」
「……そんなまさかぁ!俺がそんなセコいことするように見えるか?」
胡散臭そうな顔で笑う侑。
「「見える」」
角名と被った。
「お前ら、人のこと寄って集って!真面目に勉強するつもりや!」
「本当かよ…」
訝しげに侑を見ると目を逸らした。あ、こいつ絶対チートするつもりだ。

4人とも食べ終わった後、侑は勉強道具持っていく、と言って部屋に戻っていった。
食べた後の課題だるいなぁと思いながらもしておかないといけない。

部屋に戻って数分立つと、部屋がノックされてドアを開ける。教科書とノートとペンケースを持った侑が立っていた。

「ええなぁ一人部屋!」

そういえば侑が部屋に入るのは初めてだ。羨ましそうに言う侑に適当に座って、と言うとベッドを背もたれにして座った。
床に置いてあるテーブルを挟んで向かいに俺も座る。

「まぁその分寮費高いけどなー。だから勉強は成績落とせないんだよな〜」

文武両道を掲げる両親に頭は上がらない。成績を落とせば怒られるし、平々凡々な俺は辛うじて授業についてはいけているものの、気を抜いたら成績は悪くなるだろう。

「ふうん、俺はバレーしに来たし授業よりバレーしたいねんけど」
「スポーツ推薦組はいいよなぁ。色々免除されてるし」

スポーツで成果を上げているからこそ、その恩恵があるわけなのでどっちにしろ勉学でもスポーツでも天才は優遇されるわけだ。
世知辛い世の中だ、と凡人な自分を棚に上げて不公平感を恨んでは見たものの虚しくなっただけだった。

「とりあえずさっさと終わらせよう」
英語の課題を片付けるために教科書とにらめっこしながら解答をノートに書いていく。

集中してやっていたけど、やけに静かだなあと前を見ると侑が目を瞑ったまま、動いていない。

こいつ…寝てないか…?

「侑…?」声をかけても動かない。
「侑!」少し大きく声を出すとピクりと動いた。

「んあ…」
「寝てただろ」
「寝てへん」 いや、寝てたわ。晩御飯食べた後眠くなるのは激しく同意するが頑張れよ。
「寝んなよ。俺は解答見せないからな」
「寝てへんし…」言ってる傍からまた船を漕ぎ始めている。
「侑!起きろ!」
「はっ…」目を見開いて頭を振る侑。
「よし、やるで…」キッとノートを睨んでシャーペンを持ち直した。と思ったら30秒後には、またうとうとしている。
「侑くーん、がんばれーー」
声をかけても意識と無意識の狭間にいるのか必死に睡魔と戦っているのか、目が開いたり閉じたりしている。
もしかして、これあのいつもの白目がくるやつか?

携帯をそっと握ってカメラをオンにする。ピッと音が出た。

そのまま携帯を侑に向ける。
「侑、起きろ」
「ん…」必死で起きようとするも、睡魔に落とされかかっているのか目が不安定に動く。その結果、白目になった。
「ぶっふぉぉ!!……くくくっ、ひぃっ……ひぃぃっ、おま、ぶはっ」
必死で笑いを堪えるも携帯を持つ手が震える。笑っていると侑の頭が大きくガクンとなった。
「ふぁ…」やっと睡魔との戦いを終えたのか、眠たそうに伸びをした。そこで初めてカメラを向ける俺に気づく。

「おま、白目、やばっっ、ひぃ……っ」
「おい、何撮ってんねん」
侑の手が伸びて携帯を取ろうとしたため、すぐに退ける。画面はブレブレだ。

「ちょ、やめ」
「消せやゴルァ」携帯は動画がオンのまま、床に落ちた。
「いだだだだ!お前かためんな!」

プロレス技で絞めてきた侑から命からがら逃げ出し携帯を取る。
すぐにラインで双子、角名、銀の5人グループに送信した。

〘みょうじなまえが動画を送信しました〙

すぐに既読に1がついた。

角名倫太郎〘ふぁwwwwwwwww〙
角名倫太郎〘みょうじグッジョブ〙

角名の返信の早さは凄まじい。その後も通知が続く。

銀島結〘‎白目( ꒪⌓꒪)〙
宮治〘アホやん笑〙

「おい、なまえ!撮りやがったな!しかも動画!」
「起きない奴が悪いだろ、…ぶはっ、くくくっ」
「思い出し笑いすんなや!許さん!」
また侑の手が伸びてきて狭い部屋の中で逃げる。

「ぎゃあっ、来んな!」

部屋の隅に追われて、逃げ場がない俺は侑を見上げる。

「ふっふ、もう逃げられへんで…」

目が笑ってない笑顔の侑に手のひらを向ける。

「悪かった悪かった!頼むから絞めるのだけは!ご勘弁を!」
「…どうしても技掛けられたくないんやったら、英語の解答で手をうってやってもええで?」
「お前…ここでそれを言うか…?!」

こいつ、変なところで頭の回転が早いというか…。悔しいが痛いのはごめんだ。

「…今回だけだからな」
不服そうにノートを差し出すと侑は当然というように受け取った。

「なまえが撒いた種やろ」

いい笑顔で笑うな!代償は払ったが白目の侑を捉えることができたのでイーブンとしよう。



***


翌朝、教室に入る前に廊下で角名に出会った。朝出発のタイミングが違えば寮で会うこともなく、今日顔を合わせたのは学校に来てからだ。

「昨日のナイス」
「見た?あれがな、授業中に振り向いたら不意打ちで来るんだわ。あれは吹くだろ」
「あれはやばい」
「授業中、堪えるので必死だわ」

口を開かずとも口角を上げながら笑う角名を見上げる。双子よりも少しだけ高いが俺に取っては双子も角名も変わらない。

少しだけ会話して教室に入る。銀に「昨日のやつ、最後絞められとったやん。大丈夫か?」と言われた。

「銀…神だ…。優しすぎて涙が出る」
「お、おう」
「すぐ絞めにかかってくるあいつどうにかしてくれ」
「うーん、治とはよくやり合っとるけど、みょうじは特にやられとるよなあ」
「俺も治並のタッパと力があればやり返せるのに! 」

銀に見下ろされて悲しくなる。どいつもこいつも背高すぎだろ!

席について一時間目から体育だったことを思い出す。

そういえば前回の体育で、先生が次はバレーやるとか言ってなかったっけ。

朝のSHRが終わった後体操服に着替えて体育館に向かう。

今日はバレーをやるみたいで男子女子に別れてコートに入った。ミニゲームをするらしい。

「バレー部、本気出すなよー」
「宮こっちのチーム入ってやー」
「ほな銀島こっちにきてー」

やっぱりバレー部は取り合いになる。皆勝ちたいもんなぁ。
俺はというと球技は得意じゃないので、そっと文化部男子で固まったチームに入ろうとした。

「あ、みょうじこっち入るか?」

銀から声をかけられた。
「えっ、いや、そのメンバーえぐい」

バレー部の銀をはじめ、野球部、バスケ部、サッカー部、柔道部と本気のメンバーばかりだ。俺はまったり球拾いでもしたいなあ、と断ろうとした。

「ええやん、ええやん!なまえそっちのチーム入っとけ!俺がぶっ潰したる!!」

コートの向かいから侑が俺を指差している。

「なにあいつ。怖いんだけど」
「昨日のお返しや!」
「まだ根に持っとんのかい!」

昨日の白目動画のことだろう。俺が入るなら侑が本気でやるという言葉に他のメンバーがテンションを上げている。

運動部怖い…。いや、俺も運動部だけど、こんな陽キャじゃないんだが…!

結局成されるがままに銀と同じチームになった。相手は侑を入れた運動部チーム。

笛がなって銀がサーブを打つ。相手のチームがボールを取って、侑が上に上げる。それをバスケ部のメンバーが叩いた。
皆運動部だけあってそれなりに動けている。

「何も考えんと腕振ったらええで。俺がボールをそこに持ってったるから」

頼もしい侑の言葉に おおぉ、と関心する相手のチーム内。銀も侑も体育ともあって皆のレベルに合わせて力は加減しているようでゆっくりとボールを上げてスパイクも初心者にも取りやすいような勢いで打っている。

相手チームのサーブになり、侑がボールを持った。

「……さて、」

侑がサーブを打つために後ろに下がった。素人の俺たちが取りやすいように軽く投げてくれるだろう。と思っていた。
真っ直ぐに俺に向けて指を指す。

「覚悟しときや」
「えっ……」

ボールが侑の手から離れて上に上がる。
侑の助走が始まった。

え、え、え???さっきまでその場から優しく打つようなサーブじゃなかった??え?何で助走してんの?

相手もこちらもコート内全員が侑を見る。
綺麗に上がったボール、ジャンプした侑は最高到達点でボールを力強く叩いた。バシンッ、と強烈な音が聞こえたと思ったら、ものすごい勢いでこちらに向かってきた。

「は、……」

俺に出来ることはただただ大砲みたいなボールを避けることのみ。当たったら吹っ飛ぶ…!
「ぎゃっっ!」
必死で体を動かして横に飛び退いた。

俺の居た位置にドンピシャで叩き込まれたボール。

「…………」

沈黙の後、うぉおおおおすげぇぇ!!とコート内が沸き立つ。

「なんだよ今の!」「やべぇ球速ぇ!」「あんなん吹っ飛ぶで!」興奮しているチーム内。

俺はというと心臓バクバクで膝をついていた。

「あ、あいつ…本気じゃん……!!!」

本気出すなって最初に声かけあっただろ?!授業のレベルじゃないし、素人に向けるボールじゃないだろ!

ニヤニヤと笑う侑に俺はコートから叫ぶ。

「おい!加減しろよ!」
「はぁー?ちゃんとしとるで。もう一本っ!」

また剛球が俺目掛けて飛んできた。

「ぎぇっ!!無理無理無理取れんわ!」

あんなの取ったら腕持ってかれるだろ!楽しそうに笑う侑と点を取ってハイタッチする相手チーム。

「銀!助けて!!」
「はぁ、侑も大人気ないなぁ」

銀が俺の傍に来てくれた。銀使うとかセコいでー、なんてアホなことを言う侑。

ふざけんな!お前のせいだろが!ボールに怯えながら侑のサーブに構える。

飛んで来た剛球を避けると銀がレシーブをする。
ドシ、と当たる腕が痛そうで俺はやはりあんなボールは取れないなと確信する。

やっと上がったボールにチーム内も対応して点を取っていく。
それからというものの、侑にボールが回る度に、侑からスパイクやサーブが俺に向けて投げられた。しかも、どう考えても素人レベルじゃない勢いで。

スパイクが顔の横をかすった時なんか、俺は微妙だにせず、固まったまま、早くコートから出たいと切実に願った。

そして一回サーブを取ってみようと手を出したら、ものすごく痛かったので逃げることにした。

一回のサーブで真っ赤になった腕がパワーを物語っている。

授業が終わって、制服に着替える。
「しっかり取らんとあかんやろなまえくん」
ニヤニヤしながら近寄ってきた侑。逃げ惑う俺を見てさぞかし楽しかっただろう。
「ふっざけんな、あれはレベルが違うだろ!みろこの腕っ」
バッ、と侑に腕の内側を見せる。真っ赤になった皮膚。
「取り方が下手やねん」
「あんなボール取れるわけないだろ。弱いものいじめ反対」
「いじめてないやん。楽しくバレーしたやん。体育の目的やろ『楽しくスポーツをする』。あー、楽しかった!特に飛び退くなまえ!おもろかったわぁ」

くそぅ、完全におもちゃ扱いだ…。

またバレーしよな!
と笑う侑に、俺を殺す気か!と返しておいた。

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