(宮侑)
昼休み、1組の治の机に集まり弁当を頬張っていると、治がニヤニヤとした顔で見てきた。
「ツム〜、見とったでぇ」
「サム…」
「お前、みょうじくんに負けたやろ」
「あぁ??お前かて負けたんやろ」
「惨敗やったやん。窓からよう見えたわ」
「こいつ…!!」
ムカついて卵焼きを箸で取り上げ食べてやると治は目を開いた後、青筋を立て睨んできた。
「おい…俺の卵焼き…食べたな?」
「はん、余計なこと言うからや」
鼻で笑いおちょくる俺に、治の手が伸びてきて俺の弁当箱から唐揚げを取りやがった。
「おまっ、…おいブタサム…肉やで?肉っつったらメインやろが。お前それを…」
「ああ?卵焼きもタンパク質やろがクソツム」
食べてる途中でやり合おうとした時、隣に居た角名が「噂をすれば張本人」とぼやいた。
「ああ?」
1組のドアから教室の中に入ってきたのはみょうじなまえだった。
俺らとは離れた席の奴のところに行って自転車が表紙の雑誌を手渡した。
「茶川、さんきゅー」
なまえは教室のドアに向かう途中、俺らの近くを通った。俺の視線に気づいて肩をビクつかせる。
「うおっ、侑と宮…。な、何だよ。視線が怖い」
「どないすんねん。なまえのせいで俺の唐揚げが失われてもうたやろ」
「え?え?俺?」
「完全なる当てつけで草」
角名が鼻で笑った後、困惑しているなまえに説明した。
「持久走でみょうじに負けたのを治が言ったら侑が治の卵焼き食べたんだよ。で治が侑の唐揚げ食べた」
「え…何かすまん」
「やめえ!余計腹立つわ!」
「こんなんしかないけど、許してくれ」
なまえはポケットの中から個包装されたクッキーを取り出して治に渡した。
「おお、美味そうや♪おおきに」
「何でサムにあげんねん!」
「え、だって侑が最初に食べたんだろ」
「煽ったのはこいつからや!」
はいはいと頷きながら、じゃあお前にはこれなと飴を出してきた。
サムはクッキーで俺は飴ちゃんかい、と頬を膨らます。
「保育園の先生みたい」と角名が言うから「こんなでかい保育園児、強烈だろ」と笑うなまえは手を上げて教室を出ていった。
「なんやみょうじくんと仲良うなったんか」
さっきまでの言い合いはすでに終了し、また弁当を頬張り始める。
「あぁ?何で仲良うなんねん。次の体育で絶対に潰したるで」
「侑て言うとったやん」
「宮宮言うてどっちの話かわからんから侑でええて言うたんや。そしたらな、アイツなんて言ったと思う?小さい頃から転校ばっかで下の名前呼んだの久しぶりやって抜かしよってん」
「ふうん」
「可哀想なやっちゃろ。せやから俺が名前で呼んだんねん」
「お前が一番可哀想なやっちゃわ」
その夜、治が寮の部屋に戻ってきた時に
「さっき風呂上がりの自販機んとこでみょうじくん発見してな。俺も治でええで、て言うたら嬉しそうに笑いよったわ」と報告してきた。
下の名前呼ぶだけなのに喜ぶなんて変なやつやなあ、と思った。