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(※注意 男主の進路描写あり 進学とエリアのみ固定。その他情報は今後も記載予定なし)
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「はい、じゃあこれで面談は終了です。手続きについてはまた話しますからね」

「ありがとうございました」

進路相談室から出て、扉を閉めた俺は教室に戻るため、長い廊下を歩く。

頭の中では今後のことを考えていた。

親からは「なまえの人生だからなまえの選択を尊重する。学びたいことがあるなら学べばいいし、働きたいなら就職でも良い」と言われていた。

自分で考えて選択しろと言われても、凡庸な俺はこれといってやりたいことや周りに言えるような夢を持ち合わせてはいなかった。

自転車競技をしたいという思いで高校を選んだが、自転車で食べていくわけでもなく、何か得意なことがあって活かせる仕事に就きたいというわけでもなく。

平々凡々な俺はこの先も普通にどこかの企業の会社員にでもなるんだろうとぼんやりとした将来しかなかった。

夏休みの間、自転車部の先輩に会って話を聞いたり、知り合いの人達に聞いたりして、最終的に専門学校へ進むことを決めた。

ロードバイクや寮生活等、お金のかかることばかりしてきた負い目もあって早く就職したいという気持ちがなかったわけではない。

消去法と僅かな興味関心があることと、織り交ぜて考えて出した結果。それでも正直、やりたいことってまだ分からないんだけど…というのが本音だ。

足を止めて廊下の窓から外で楽しそうに喋っている1,2年生達を見る。

(いいなぁ、あの子達はまだまだ時間がたくさんあるんだ…)

そして、もう一つ大きな転機があった。

専門学校に進んだ先輩から『凝縮されたカリキュラムを短期間で詰め込まれるから勉強とか割とキツいで。バイトする時間なかなか取れんわ』と聞き、覚悟していた矢先。

母親から『お父さん、次の転勤があるから来年は東京に引っ越すわよ』と言われて目が点になった。

そんな新しい話に家から通うならバイトも余裕を持ってできるかもと考え、俺は東京の学校を選んだ。

東京に行くとはまだ誰にも言っていないが、いずれ話すことになるだろうと考えながら教室に戻った。


***


SHRが終わった後、前の席に座る侑が振り向いてきた。今日は男バレ部のオフ日だ。

「帰るで」
「ん、」

黒リュックを机横から取って肩にかける。揺れるバレーボールキャラクターのキーホルダーは少し色が剥げ落ちている部分もあった。

自転車通学でほぼ毎日雨風太陽に晒されているのだ。劣化しても当然だとは思う。

席を立つ俺と侑に、角名は動こうとしない。

「あれ?角名は?」

俺ら今から遊びに行くけど、と声をかけると机に頬杖をついて携帯をいじる角名は目だけをちろりとこちらに向けて「今日はパス」と短く言う。

侑が笑って「ほな、置いてこ♪」と楽しそうに教室を出ていく。その背中を角名が何か言いたそうに見ていた。

「後から合流するか?」
「合流したら約1名吠える奴がいるから遠慮しとく」
「はは、吠えはしねえだろ」
「お散歩いってら」

散歩ってなんだよ、吹き出すも先程楽しそうに教室を出ていった侑を思い出して確かに尻尾を降っている様にも思えて笑ってしまう。

角名にじゃあまた寮でな、と返して教室を出た。
昇降口に降りると靴箱の前で女子に捕まっている侑を見つけた。

「宮くんのクラス文化祭何するん?」
「まだ決まってへんわ」
「私の組は出店狙っとるらしいわぁ」
「侑くん、またステージ?」
「んー、どうやろ」

囲まれている侑を一瞥して、自分の靴を取り出す。俺にも陽キャスキルがあったら、あの中に入り込んで行けてただろうかなんて想像しながら履き替えた。

「なまえっ、お前置いてくなや」
「え?もう帰るん?今日練習休み?」
「えっ!宮くん今から一緒に遊ばん?」
「ええねぇっ、カラオケとか!行こいこっ!」
良い事を聞いたと沸き立つ女子達。

「あ、無理」

侑がばっさりと切る。おい、もっと言い方あっただろ、と遠くからツッコむが意味は成さない。

「えー、他の子とか?」
「もう遊ぶ予定入ってるん?」
「ん、約束してんねん。ほな、」

残念そうな女子達に手を上げて颯爽と去る侑に、無敵すぎるだろ、強すぎる…と心の声が漏れそうになる。

靴を履き替えて俺の隣に来た侑に「俺は別にいいけど、」と呟いた。
「は?」
「いや、だからあの女子グループと一緒でも…「なんやて?」うっ!し、締めんなっ!」

横並びに歩きながら、侑の鍛えられた腕が俺の首に回ってきた。
だって女子と放課後遊ぶなんて、俺一人じゃ到底叶わないことだ。このチャンスを掴まずして男が廃るじゃないか。

「お前は、誰と、遊ぶ約束してんねん」
「約束はしてない。俺は無理やり予定入れられただけ」
「うっさい」

出たジャイアン!自分で勝手に予定を入れ込んできたくせに約束したとかそんな捏造をしてくるこいつが恐ろしいよ本当に。

「だ、れ、と、遊ぶ約束してんねん」

キレ気味な侑に抵抗しない方が穏便に済ませられる。
「……あちゅむくんでぇす」
「なんや腹立つ!」

片手で頬を挟まれて俺の顔が崩れる。
「いひゃい!ごめんて!」
あれ?俺が謝る必要あった?と僅かな疑問は残るが侑の手から解放されるなら手段は選ばない。
やっと解放されて頬を撫でる。

「他ん奴入ってきたら意味ないやろがっ」

ボソボソ言う侑に何言ってんだと思いながらバス停に着いて、次の便を待つ。

俺は女子と遊びたいと口では言いつつも、内心は女子よりも俺を優先してくれる侑に少しばかりの優越感を覚えていた。
寄ってくる女子よりも優先される立ち位置なんだ、と思うと悪い気はしない。

隣から話しかけてきた侑を見上げる。

「ゲーセン行って〜からの店回ろうや」
「いいねーフードコートで何か食べる?」
「俺たこ焼き買お、なまえはバーガーな」
「って言って結局着いたら目移りするやつな」
「それはなまえやろ」
「だって全部美味しそうじゃん」
「食べ物でも目移りすんの何なん?」
「凡人の目には全てがよく見えるんですぅ」
「あかんわ、こいつ。眼科行けや」

あかんことはないだろっ、と返しながら来たバスに乗って商業施設に遊びに行く。

制服姿の侑はやっぱり視線を集めるようで他校の女子からもすれ違う時に目を奪われているのが分かった。

なお、俺には1ミリも関心がないようで俺と目が合う女子はいない。悲しい。

ゲーセンで遊んで、ぶらりとウインドウショッピングした後はフードコートに席取りして、お互いに食べたいものを買って座った。

平日の夕方と言えど、人は多いし、同じように遊んでいる学生も目立つ。

「結局、○ブウェイかよ」

極厚のサンドイッチをトレーに載せてきた侑は「ボリュームあるやつが食べたくなったんやもん」と言う。

「なぁ、見てみ。エビアボカドにチーズのせ、すごない」
「ボリュームすげえ、まぁ侑の一口なら余裕だろ」
「任せぇ」
「キリッとすんな」

ケラケラ笑って俺は自分のたこ焼きを口に入れた。もちろん、たこ焼きを侑に食べられて残りは7割程。
たこ焼きを飲み込んで「一口ちょーだい」と侑のサンドイッチを見る。
侑の腕を掴んだまま、サンドイッチにかぶりついた。

「おい、いっちゃんエビとアボカドあるとこっ」

語尾に怒りマークの絵文字がつきそうな勢いで頬を膨らませている。

「美味ひぃ」
わざとです。狙ってそこを食いました、なんて言ったらたこ焼き1つまた取られるのでニヤリと笑って黙っておく。

唇についたソースを舐める俺を見て、侑の動きが一瞬止まった。

あー、楽しいな。
居心地が良くて楽しくて、友達と遊ぶって最高だな、と高校生活の良さを改めて感じる。
雑談をしながら口にたこ焼きを運んだ。

「文化祭何するんだろうな」
「今週やろ実行委員決まんの」
「あー、また文化祭マジックが至る所で発生する季節がやってくるわ」

文化祭マジックめ、俺にマジックかかったことは皆無なのに、と恨む。

「文化祭マジックてなんなん」
「特別可愛くみえたり、かっこよく見えたり。カップル誕生したり」
「ふうん。まぁ俺はいつもかっこええけど」

大口開けてサンドイッチにがっつきながら言われてもな、と自意識高い侑を一瞥する。

「はいはい分かったよ、あちゅむくん」

ムッとしたように俺を見てきた。

「文化祭でなくてもいつも告られてんじゃん、彼女とか作んないの。協力するべ」

言ってしまった後にあ、やばい、と思った。これ、この間のデジャヴ。宮家に遊びに行って帰る時に駅で言ったことと同じような事を言ってしまった。

あの時の侑は冷たい表情だった。が、今はニコニコと笑っている。

「なぁ、お前は…ほんま…」

笑ってはいるがどうやらキレているようだ。
学習能力て言葉知っとる?という侑に、お前には言われたくないと返す。

「…告白されたから、て誰彼構わず付き合うわけちゃうけど、告白されたら付き合うてもええかなあ、て思うてる奴ならおるわ」

侑の目がじっと見てくるものだから途端に落ち着かなくなる。

「へ、へぇ…」

セルフサービスの水をごきゅりと喉に流し込む。もうコップの水は空だ。

お前のその言ってる奴って俺…ではないよな。うん、絶対に違うよな。そんなの俺こそ自意識過剰だよな。

「可愛い子?」
「いや、可愛くはない」

可愛くないんかい。

「じゃあ髪は?ショート?ロング?」
「短い」

うん、ショートの女子が好きな人も多いし普通だよな。

「明るい?大人しい?」
「んー、目立たんし空気みたいに影薄いけど、内輪やとノリええし、よう笑う」

影薄いってひどくね。まあ、そういう人ってよくいるタイプだよな。俺ではないだろう。

「ふうん…部活は運動部?文化部?」
「運動部〜、日焼けしとる」

日焼け…。自分の腕をちらりと見下ろした。
いや健康的に焼けてる女子はいくらでもいる。女子テニス部とか、女子サッカー部とか。

「どんな子?」
「んー、教室で寝とる時とかヨダレ垂らす奴」

思い出したようにからから笑う侑に口元がヒクりとする。
心当たりがある自分がいて頭を抱えたくなる。そんな女子もきっといる…いや、教室でヨダレ垂らす女子なんているか?いやいや、いるかもしれないし、まだ確定じゃない。

「年上?年下?」
「同い年」

喉がヒヤリとした。段々と狭まる範囲。まるで犯人として特定されているかのような気持ちになってくる。

「…違う組だよな?」
「5組ぃ。席、近い」

とどめを刺すようにそれはそれはいい笑顔だ。
席近いってもう、それは。かなり限られてんじゃねえか。

俺は押し黙った。これ以上聞いたら今度は俺が苦しくなるような状況だ。まるでカードゲームでもしてるかのような緊張感が走る。

ジョーカーは残り1枚、侑の手の中、次のターンで引き抜かれるのを待っている。

「………」
「もっと聞いてもええで?」

頬杖をついて楽しそうに笑う侑とは裏腹に俺は机から距離を、侑から距離を取って仰け反る。

「いや、いい。遠慮しとくわ…」
「あとはなあ、たまにむっちゃ怖い顔で部活しとるしぃ、あ、言いたいこと言わん時は腹立つこともあんねんけどなぁ、あと何でも俺のせいにしてくんのも腹立つしぃ」
「おい、いいって!ストップストップストップ!!」

周りの迷惑にならないよう、目立たないように声を潜めながらも侑の口をたこ焼きで遮る。

侑はラッキーと言わんばかりにたこ焼きをもぐもぐと咀嚼している。黙らせることに成功した俺はほっと胸を撫で下ろした。

絶対的なことは言わないのにほぼほぼ確定しているその情報に俺はどぎまぎする。

というか、さっき言いたいこと言わないとか聞き捨てならないことが耳に入って来た気がするんだが。
何でも俺のせいにしてくるって何?何でもじゃない、侑のせいで起きることが多いから侑のせいにしてるだけであって俺が悪い時は素直に認めてるじゃねえか、…多分。

言い返したくなったが、それはある意味認めてしまうことになる。俺がその相手なんじゃないか、と思ってしまっていることを。

「好きて一言、言えば叶うんやけどなぁ」
「………」

ちらりと見てくる侑の顔が見返せない俺は、残り一つのたこ焼きをガン見せざるを得ない。

「…そ、の人が侑のこと好きかどうか分かんないじゃん」

「え、俺のこと?好きやで。好き好きオーラ出過ぎとって、しつこいもん」

「はぁっ?!?!」

俺がいつそんなオーラ出した?!思わず声を上げて侑を見た。
ケラケラと笑う侑に俺はしまったと慌てて目を逸らす。

何か話題を、話題を変えなければ…。

「そ、そうだ。もう進路の面談、順番来た?」
「進路ぉ?」
「うん」
「んー、まだやけど、一応考えとることはある」

考えていることとは?不思議そうな俺に侑が耳貸して、と言ってきた。

「内緒やねん」

内緒話、秘密、それはとても人を魅了する。自分だけが特別であるかのような、そんな話に興味を持たないわけがない。

侑に片耳を寄せると侑が大きな手を添えて囁き声で耳打ちしてきた。

「俺な、プロのスカウトから話来てん」
「?!?!?!」

勢いよく侑を見る。叫ばないように俺は自分の口に手を当てた。
そんな俺の反応に侑は子供のように無邪気に笑う。

「ま、ま、まじで」
「まじや。どや、すごいやろ」
「すごい…すごい…」

語彙力のない俺はすごいを呆然と言うことしか出来ない。
目を見開いて侑を見ると、口元を緩めていた。


周りに聞こえないよう声を潜めて侑をみる。
「え、プロ入りすんの?」
「大学行ってバレーするか、このままプロ入りするかはまだ考えてんねん。決めるまでもおちょい時間あるし」

どっちにしてもプロ選手になるつもりやし、と当然のように言う侑にやっぱり最強のセッターは言うことが違うなと感銘さえ受ける。

「すげえ、鳥肌立った。見ろほら」
「見せてくんなや」

くすくすと笑いながら俺の腕を突つく侑に、俺も笑いが出てくる。

すげえ、俺の親友マジですげえ。

「お前ってやつは…、どこまでも予想不可能…、本当にすごいよ…」

感嘆の意を込めて侑に言うと、嬉しそうに目尻を垂らした。

「なまえは?」
「え?」
「進路」
「あー…」

振られて自分の進路の話になった途端、さっきまでプロだなんだとすごい世界の話をしていたせいで自分の話が次元の低いとてつもなく普通の話に思えてくる。

さらには俺の進路なんて消去法により選ばれた選択肢だ、侑や治のように夢があって掴み取ったものでもない。

「俺はー…、適当に専門とか」
「ふうん、何したいん?」

夢を持って進む侑を前にして、引け目を感じ少し胸の内がモヤモヤとした。
プロという優れた人しか進めない道を行く友達と深く考えず流されるまま進学する俺。

どう考えても雲泥の差がある。途端に情けなく感じて喉が締まった。自分の話なんて同じレベルで話せるものではない。

勝手に言い出しにくくなり、進む分野をさらっと答える。早く終わらせたい一心だった。

「ほーん、それならどこでもありそうやんな。大阪とかにもあるやろ?」
「ん?うん、あるだろうなー…」
「ほな、プロ入りしたら大阪やし、すぐ遊びに行けんで」

楽しそうに話す侑にははは、と下を向きながらその笑顔を作る。
乾いた笑いしか出ない俺は「そろそろ行くべ」と残り一つのたこ焼きを一口で口の中に放り込んで立ち上がった。

黒リュックを肩にかけてトレーの上のゴミをボックスに捨てる。

ああ、東京に行くって言いそびれた。

プロ入りの話を聞いて、俺の小さくてちっぽけな見栄とプライドがこれ以上進路の話をすることを邪魔した。

フードコートを出た後は、適当に商業施設に入っている店を練り歩いた。進路の話もそれっきりで、忘れたように俺は放課後を楽しんだ。


***


寮の部屋に帰り自室でぼーっとしながら、頭の中で考える。

このモヤモヤは何だ、と自己分析をした。

侑のプロ入りと自分の進路を比較してしまい胸のモヤはあるものの、それもきっと時間が経てば消化されるだろう。

自分に対してモヤモヤしているだけだ。侑はすごいし、プロ入りしたって全くおかしくないほど才能に溢れている。
ただ、その隣にいる自分があまりにも平凡すぎてモヤモヤしただけなのだ。

「はぁ…」

何処までも平々凡々な自分にどうしようもなく感じつつ、洗濯物のカゴを掴んだ。

部屋を出てランドリールームに降り、洗濯機の中に洗濯物を詰め込む。

スイッチを入れて轟音を立て始める洗濯機をじっと眺めながら、また物思いに耽っていた時、治がランドリールームに入ってきた。

「おー、治じゃん」
「なまえか。どやった今日」
「どうって?」
「遊びに行ったんやろ」
「うん、治も来ればよかったのに」
「行けるわけないやん、うっさいのがおんのに」
「皆で行ったら、もっと楽しいんだけどな」
「そう思っとんのはなまえだけやで」
「えぇ」

治も洗濯物を洗濯機に詰め込んだ後、2人で並んで腰掛け、揺れ動く洗濯機を眺めた。

「…治は進路、どうするんだっけ」
「俺?調理師の専門行くわ。なまえは?」
「俺も。専門行く」

横に座る治はやっぱり侑と同じように背も高いし、筋肉質で俺の体とは大きさが違う。

椅子に座って伸ばした足も長さの違いが目に見えて分かる。

「どこの専門?」

進みたい分野を伝えると「へえ」という相槌が返ってきた。

「…東京の」
「……東京ぉ?」

治が眉を潜めて首を傾げる。

「うん」
「東京の学校に行くん?」
「うん。親が引っ越すから、家から通えたらなーって」
「……それツムに言うた?」
「いや…」

治が面倒臭そうな顔をした。まだ誰にも言ってなくて治に話したのが一番最初、と付け加えると治は、上を見上げて顔に手を当てた。

「あかんわ…何で言うてへんねん」
「だって…侑、何かまだ進路迷ってるぽかったし、俺の進路の話するより、しっかりそっちの方を考えたらいいんじゃないかなって」

そんなのただの言い訳だ。分かっている、それでも自分のちっぽけなプライドが邪魔をしただけとは言えなかった。

「プロスカウトの話聞いたんやろ?」
「うん」
「多分、そのままプロ入りするつもりやでアイツ」
「そうか…」

そこでまた改めてすごい奴だな、と感じる。

「すごいなあって思うし、もちろん友達としてすっげえ嬉しいしんだけど!…ちょっとその場では言い出しにくくて、さ…」
「……聞かんかったことにするわ」
「え?」
「俺はなまえが東京行くことは知らん。ツムに先に言ったげや」

そう言うと、治は手を上げて部屋に戻るわ、と出ていった。
背中を見送って『それが出来たらなぁ』と思う。

俺のこのモヤモヤが消化されない限り、自ら進路の話を切り出すのは自分の首を締めるようなものなのだ。

俺のちっぽけなプライドが消え去ってモヤモヤが解消されたら言おう。そうしよう。

そう決めて俺も部屋に戻った。

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