男主と2-Bの日常
「最近さ、このスマホゲームにハマっててさー」
授業合間の休み時間。隣の席の真緒とゲームの話をしている。
「おっ、それ今話題のやつじゃん」
「あ、真緒知ってる?友達登録したらアイテムめっちゃもらえんの!こうなりゃ即インストだろ」
友達を増やせばアイテムが貰える。
俺は「まじで面白いから!」と真緒におすすめしてゲームをすぐインストールするように勧めた。
「しかもさ、時間かかるけど材料発掘を開始して放置したら武器素材とかレア物手に入るんだよ!ちゃんと終了したら通知がくるし、授業中とかほんと効率いいんだよ。授業中発掘させといて、休み時間に確認してまた発掘させる。効率よくね?」
「へ〜このやつ?」
「そうそう!これこれ。」
真緒も興味が湧いたのかゲームをインストールしてポチポチと始めた。
「そうそう、このキャラ俺もかっこよくて選んだわ〜」
「なまえの言う発掘ってこれ?」
「そ、最初は30分しかできないんだけど、やるうちに1時間、2時間3時間って選べる」
「へー、じゃあ30分にしとこ」
「俺はあと30分したら発掘終了するわ。やった〜真緒のおかげでアイテムもらえた」
「おっ、俺も同じアイテム貰えてる」
そう、相互でレアアイテムがもらえる仕組みだ。もっと増やしたいなぁと思って、真緒の後ろの席で寝てる凛月が目に入った。
「そうだ、凛月も誘おう」
凛月〜凛月〜と肩を揺らして起こしてみる。
「凛月〜起きろ〜、」
「んん…邪魔しないでよ…」
「今面白いスマホゲームあるからやろうぜー真緒も今始めたからさー」
「んん…むにゃ…うるさい…すきにして…」
俺があまりにしつこいのか凛月は寝ぼけ眼でポケットからスマホを取り出して俺に押し付けてきた。
「え、いいの?ゲームいれちゃうよ?」
「……すぅ…」
凛月はもう夢の世界だ。
「すきにしてって言ってたし、いーれちゃお♪」
手早くゲームをインストールして友達登録したあと真緒と同じように初級の30分発掘を選択しておいた。
「なぁ、次って椚先生の授業だよな」
「ああ、今日は座学だろ?」
「じゃあ移動教室ないか。てか椚先生なら凛月起こしとかないとやばくね?」
やばいな、なんて言いながら2人でたたき起こしていると教室の扉が開いてコツコツと椚先生が入ってきた。
後ろの方で や〜ん今日もす、て、き♪なんて声が聞こえた。多分、いやきっと鳴上だろう。
「皆さん、今日は座学です。プリントを配ります。」
やっぱり椚先生だけあっていつもの授業より皆静かだ。しーんとしてる。
雑談してたらそれこそ目つけられたらどうなるかわかんないからな…。
俺も真面目にやろっと…。
そんなことを思っていたら、恐ろしい出来事は授業中に起きた。
授業終わりまであと30分、しーんとした教室で椚先生の声だけが通っている。皆真面目にプリントに書き込んだり先生の話を聞いたり。
そんな中俺は、授業終わったら購買行って〜昼飯買って〜今日は何買おうかななんて思っていた時だった。
ピロリンッ♪
「…………。」
え?
スマホの通知音が俺の近くで鳴った。割と大きく。
先生の声が途中でぴたりと止まって…黒板に向いていた体をゆっくりと正面に向けた。
「…誰ですか?授業中に携帯の電源を入れているのは。」
やべえええ、椚先生の凍てついた視線が俺の方向を見てる!!
いや、俺はマナーモードにしてるはずだし…。
ピポンッ♪
また鳴った。今度は別の音だ。でも2回とも俺の近く…。
まてよ…この時間になるってことは…あのゲームの発掘終了の通知じゃね…っ?!
バッと真緒の方を見てみた。
真緒もやばいって顔をして俺を見ている。気づいたか…。
「……そこ付近で聞こえましたけど…。」
教壇から椚先生がコツコツと靴を鳴らして俺と真緒の近くに来た。
やばいやばいやばい、バレたら没収どころか反省文かも…。
真緒とどうするんだよ?!みたいな会話を目でしてみたけど真緒もどう切り抜けるか思いつかないみたいだ。
「さて…誰ですか?」
うああ!やばい!椚先生が俺と真緒の近くで立っている…。
「みょうじくん。君は心当たりありませんか?」
「……ありません…。」
うえええ、吐きそう!俺今吐きそう!ヘビに睨まれたカエルみたいに!
だって本当に俺のがなったかなんて携帯を見て見ないとわからないもん!仕方ないだろ!発掘終了しちゃったんだから!鳴るもんは鳴るよ!なんて意味不明な理由が頭の中でぐるぐるした。
「ではみょうじくんはどこから聞こえたと思いますか?」
うう…俺に聞かないでくれ…!
胃が痛くなりそうになりながら必死に考えた。
とにかく俺と真緒から遠ざけなくてはいけない…。
ふと、真緒の前の席に座っている弓弦が目に入った。きちんと背筋を伸ばして座っている。俺は今にも死にそうで前かがみなのに…!
「……そ、そうですね…伏見くんの方から、っ」
ギンッと弓弦の目が俺を射抜いていた。
てめぇ、俺を巻き込んだらぶっ殺すぞ?みたいな顔なんですけどぉぉぉ!!怖いぃぃぃ!
「あ、やっぱ違います!」
「…では、もう一度聞きます。どこから聞こえたと思いますか?」
真緒をチラ見してみても、明後日の方向を向いている。ちっくしょー…。
こうなりゃ絶対切り抜けてやる…。
「…………」
「みょうじくん?」
「……先生の…空耳じゃないでしょうか…」
教室内の温度がさらに下がった気がした。
「…私の耳がおかしい、と?」
「いや……まぁ…」
我ながらかなり無理な回答であるとは断言できる。でもな…クラスの力が1体となれば…っ!
切り抜けられるかもしれない…っ!!
「では、聞きましょう。皆さん、この付近で携帯の音は聞こえましたか?」
皆…!今こそ2-Bの力を合わせる時だ…!!
皆が聞こえてないと言えば俺は助かる…!!
頼むぞ!
「「「「「聞こえました」」」」」
おいいいっ!お前ら!おいいいっ
はぁっ?!と周りを見ると皆パッと目を逸らした。
お前らぁ〜〜……っ!
真緒に至ってはごめんっみたいな顔してるしまじおこ。
「…みょうじくん後で職員室に来るように。」
少しだけ笑った椚先生に俺は絶望して机に頭を打ち付けた。
さいあくだ……。
授業の後半はどんな話だったかも覚えてない。
結局、鳴ったのは俺の携帯と凛月の携帯だった。
まあゲームに無理やり誘ったのは俺だから1人で反省文を書くことにした。
でもさ、何かちょっとこのままじゃやりきれないじゃん?
だから、俺は反省文の原稿用紙3枚に、ゲームの素晴らしさと効率的な作業方法、ゲームによって青春がどれだけ素晴らしいものになるかゲーム研究部並に書きあげてやったわけ。
最後に1文だけ、授業中に音が鳴ってごぺんなさい、みたいなことを書いて。
もちろん、俺のそんな熱い文を出したら椚先生に怒られたけどね!!
***
「あー、よかった、俺じゃなくて!」
「…ひどい、真緒の薄情者!」
「わりーって!でもまじ笑えた!先生の空耳じゃないですかって、おま…っ」
「いや、それは俺でも無理あると思ったわ」
「弓弦巻き込もうとしたのも、も〜笑いそうになった…」
「いや、弓弦。まじであれはごめん。悪意はない。」
「…巻き込んでいたら今頃みょうじさまはこの教室にいなかったでしょうね。」
「こわぁっ!暴力反対!」
「わたくしは別に暴力をふるなどとは言っていませんよ。ただ…♪」
「こわいいっ真緒助けて!」
「ふぁ〜〜うるさいなぁ…。何かあったぁ?」
「凛月〜〜お前のせいでなぁ〜〜っ!いや俺のせいでもあるけど!」
むぎゅむぎゅと凛月の頬っぺを揉んでやった。
何はともあれ、罰は反省文だけで携帯を没収されることはなかったので俺のゲームライフは守られたわけだ!
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