大神晃牙×飼い主男主
「いってきまーす。」
家の玄関を出て真っ先に視界に入ってきたのは、ムスッとした顔で背中を壁に預けてるおおがみこーがくん。
「はよー。」
「遅せぇよ!20分も待っただろうが!」
「嫌なら先行ってくれてもいいけど。」
「……別に嫌とは言ってねぇだろ!」
「はいはい。」
歩き始めた俺に並んで歩くこーがくん。
なんと、彼は俺の彼氏らしい。らしいっていうのは俺からしてみればペット、って感じだからあんまり彼氏って感じじゃない。
物好きな人間もこの世にはいるようで、こんな平凡な俺にしっぽを振ってきたのがこーがくん。
うちの家はペット禁止だから癒しの動物に触れ合える機会もなくて同じクラスのこーがくんちのわんこと遊ばせてもらったのがきっかけでこーがくんは俺の彼氏になった。
レオンを可愛がってたらなぜかレオンではなくおおがみこーがくんに懐かれた、という。
俺はいつも彼のお尻にしっぽが見える気がしてならない。
2人で並んでると近くを車が通って排気ガスがちょっと煙たかった。
俺が道路側歩いてるからうげぇ、と思ってるとなんとこーがくんは俺をちろ、と見たあと俺と道路のあいだに入るように移動してきた。
「俺、男だし別に大丈夫だよ?」
そんな女の子みたいに気を使ってくれなくても…という意味で伝えた。
「はぁ?関係ねーだろ。」
済ました顔で言うこーがくんに少しイタズラ心が湧いてきた。
「…いい子、よくできました。」
俺は少し手を伸ばして、犬にやるように喉元をこしょこしょ、っとしてあげた。
「ばっ!や、めろよ!」
そんな俺にこーがくんは拒否してきた。でも俺は耳が赤いのを気づいている。仕方なく、手を除けて歩きながらこーがくんにお礼を言った。
「…大神、ありがと。」
わざと苗字で言ってみる。そしたらこーがくんはむすっとした。
「……晃牙って名前で呼べよ…。」
「…こーが。」
名前を読んでちらりと見上げると明後日の方向を向きながら顔を赤くしてた。俺は耐えきれず吹き出した。
ほんと、こーがくんはかわいいわんちゃんである。
***
こーがくんは根は真面目。
トマトの水やりをちゃんとやっているこーがくんに俺はついてきていた。すごいと思う。俺はめんどくさがり屋だからすぐに枯らしてしまうけどこーがくんはちゃんとやってる。
「ちゃんと水やりしてえらいね。」
「んなの、当たり前だろ。俺様がやるからにはしっかり美味いトマトにしてやる。」
「ふーん、頑張れ。」
こーがくんはほんと真面目だ。いつも噛み付いた態度で誰彼構わずキャンキャン吠えてるけど懐いたら相当かわいいのは多分あんまり知ってる人はいないだろう。
水やりをしていると向こうから朔間先輩が来ていた。
「あ、朔間先輩こんにちはー」
「おお、わんことなまえくんか。」
「こーがくんが朔間先輩のために頑張ってますよ〜」
「はっ?!そんなんじゃねぇ!こんな吸血鬼ヤロ〜なんかのために!」
「こら、こーがくん。先輩。」
先輩に向かって吠えるこーがくんに注意する。
「……くそっ、」
ムスッとして睨みをきかせるこーがくんに俺は笑いそうになった。ほんとは朔間先輩が好きなくせに無理やり隠してるこーがくんに俺は純粋だなあ…と思う。
「うちの駄犬がいつもすみません。」
ぺこりと朔間先輩に謝っておいた。隣で俺は孤高の狼だと言っているこーがくんはスルーしておく。
「くっくっく、わんこの躾はなまえくんで充分じゃのう。」
「いえ、朔間先輩からの方が効くのでよろしくお願いします。」
「おお、そうじゃ、これを貰ったんじゃが多くて配り歩いておるんじゃ。」
そう言って俺の手に乗せられた飴玉二つ。
「いいんですか?ありがとうございます。」
朔間先輩は手をひらひらと降ってまた歩いていった。
「はい。」
こーがくんに飴玉一つ渡そうと手を差し出した。こーがくんも普通に掌を差し出している。
こーがくんの手のひらに飴玉を置こうとして、止めた。
「…お手。」
逆に俺が手のひらを差し出した。
その手を見てこーがくんは、はぁ?と怪訝そうな顔をした。
「お手。」
こーがくんの目を見てもう一度言うと、こーがくんは舌打ちをして「何で俺様が…!」とかブチブチ言いながら俺の手の平に手を置いた。
それを見て俺はにやりと笑って、よく出来ましたと頭を撫でた。
「っ、やめろ!」
ギャンと吠えたこーがくんは顔が赤い。吠えながら嬉しそうなのがかわいいと思う。
ご褒美に飴ちゃんの袋をピリッと破いて、飴玉をこーがくんの手に。
「ご褒美〜……と見せかけて食べる」
こーがくんの手に乗せようとして、そのまま乗せずに俺は自分の口に放り込んだ。
砂糖で固められた飴玉は甘く口に広がる。
多分俺にからかわれたのが我慢できないのかこーがくんはぷるぷると震えている。
口の中でコロコロと転がしながら、こーがくんで遊んで満足した俺はもう一つの飴玉をちゃんと渡そうとした。
そしたら、ぐいと引かれてこーがくんの顔が目の前に来ていた。
「ん…?、っ」
一瞬のうちに、こーがくんにキスされて無理やり口を開かされ飴玉は奪われた。
「…はっ、俺様で遊ぶなんて100年早いぜ…!」
ドヤ顔でぺろりと唇をなめるこーがくんに俺はきょとんとした。
「こーがくん、ここ学校。」
しれっ、と言うとこーがくんは今気づいたみたいにハッ、となってそれから顔を赤くした。
ほんと、うちの駄犬は。
そういうのは家に帰ってからシテクダサイ。と注意するとまたムスッとしていた。
こーがくんといると自由なわんこをリードをひいて連れている気になってしまう。
ちゃんと躾けないとなぁと思って、夜に2人でキモチイイコトしてた時に、「まて」と言ったら、フーフー唸ってたけど、待てずにがっつかれてまだまだ躾が足りないなあと思った。「よし」なんて言う前に俺はもう息絶え絶えだった。
うちの駄犬は夜だけは主導権を握られたくないらしい。
終わったあとは頭をぐりぐりしてくる甘えたなところがまたほんとーに…。
ほんとーにうちの駄犬は可愛くて仕方ない。
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