「うるせぇっ!俺様は孤高の狼なんだよ!」

「…あっそう、そんだけ言うならもう話しかけないから。じゃ。」

些細なことでこーがくんと俺は喧嘩をした。

キレやすいこーがくんのことだからいつも俺がハイハイと流しているんだけど今日は何だか腹の虫の居所が悪くて売り言葉に買い言葉で返してしまった。

独りが大好きなら好きにやってくださいよ、と肩を竦めて俺はこーがくんと距離を置くことにした。

向こうも怖い顔で俺の事見てるから仲直りする気もないらしい。

こーがくんが謝るまで徹底的に話しかけないでいてやる。

どうぞお好きに、と自分の教室に帰った。


「…みょうじ、どうした?気分が悪いのか?」

「んーん、大丈夫。ありがとうアドニス。」

携帯も何もかも全部無視してやろう。

心に決めた俺は決意を固めて授業を受けた。

まずは昼休み。いつもは一緒に食べるけどそれもやめだ。

「アドニス〜、一緒に食べよ。」

昼飯は近くにいたアドニスと一緒に食べて、ふらりと校内を歩いていると1人でレオンと戯れるこーがくんを見つけた。

何だ、別に1人でも余裕そうじゃん。

今に謝ってくるかと思ったけどあの俺様ならそれはないか。まぁ長期戦、嫌いじゃないし。と俺はスルーして教室に戻った。


それから放課後。

いつも帰る時間とかやり取りするけどそれもなし。
一人でさっさと帰ることにした。いや〜いつもこーがくんのレッスンとか待ってたりしたから割とこれいいかも。なんて思いながら早く家に帰ってしたいことをした。有意義な時間だ〜と過ごした。


そうして早3日が経った。

まだまだ俺は余裕。でも相手はどうも違ったみたい。

今日は学校に来ると視線がチラチラ来る。
誰の視線かって?そんなのこーがくんしかいないじゃん。

廊下歩いてる時も、購買行ってる時もちらちら俺を見かけたら見てくるし、わざわざ俺の様子を見に廊下を通ってるのも見える。

1人で笑いそうになったくらいだ。
ほんとーにこーがくんはわかりやすい。

謝りたいなら素直に謝ればいいのにねぇ。と思いながら孤高の狼くんのために俺はその視線をわざと全て無視する。

でもガン無視じゃ面白くないから、たまにちろりと視線を合わせてみる。
そしたら、こーがくんはビクッとしてそれからさっさと歩いていく。

ほんとーに面白い。

そうやって数日間遊んでいるとアドニスが困り顔で話しかけてきた。

「みょうじ…大神が…」

「…?どしたの?」

「最近大神が荒れ狂っていて、相談相手になるといっても話を聞いてくれない。」

「へえ〜…。」

荒れ狂ってるのか…簡単に想像できた。

「そういう時はね、みょうじがそんなこーがくん、最低だって言ってた。って話してみるといいよ。」

「わかった、言ってみよう」


****


「みょうじ、伝えたら大神はさらに怒り狂った…」

「あちゃー…失敗だったか…」

嘘。アドニスを巻き込んでごめんけど1発かましてやったという思いで俺はすっきりしていた。早く謝らないのが悪いんだ。

アドニスに力になれずごめんねと謝って俺は教室を出て構内を散歩することにした。

てこてこと庭園に行く道を歩いていると朔間先輩と出会った。

「なまえくん、いいところで出会ったのう」

「…?俺に何か用事ですか?」

「わんこのことでのう…。最近荒れまくって縛り付けておるがどうもおさまらんみたいじゃ。喧嘩でもしたかえ?」

「さすが朔間先輩、そうです…。でも俺はもう話しかけないって決めたんです。」

「…そうか。2人の喧嘩に口出しするわけじゃないがわんこの話も聞いてやってほしいんじゃが。」

「話しかけてきたらもちろん聞きますよー?でも向こうから何も言わないんじゃ俺もねえ」

「くく、そうじゃのう。わんこの試練か。早く仲直りしてやっておくれ。」

朔間先輩にそう言わせるなんてどんだけ荒れてるんだろうと少し気になったけど、俺ははーいと軽く返して朔間先輩と別れた。

朔間先輩と話してから数日経つと今度はこーがくんの元気がないとアドニスが言い始めた。

しょんぼりしている、とアドニスもしょんぼりした顔で話すから俺は少しだけ罪悪感を感じた。

いやいや俺は悪くないよね。だって話しかけてこないこーがくんが悪い。

まぁ確かに廊下ですれ違った時に明らかに元気なさげに見えたけど…。怒ったりしょぼくれたり本当にこーがくんはわかりやすい。話しかけることに躊躇してるのが見え見えなのだ。

まあそこに気づきながら、敢えて無視する俺も俺なんだけどね。

どうしたもんかなぁと校内のベンチに座って考えているとタッタッと駆けてくる音が聞こえて足元見るとハッハッと息を弾ませるレオンがいた。

「おー、レオン〜久しぶり〜」

懐かしい再会にもふもふと首元を撫ででやる。嬉しそうに短い尻尾を振る姿が可愛すぎる。

可愛いなぁなんて言いながらもふもふしていると視界に誰かの足が目に入った。

多分、こーがくんだろうなと見上げるとむすっとしたこーがくんがいた。

「………。」

まぁ、俺は話しかけないって言ったし。ちらりとだけみてまたレオンに話しかけた。

「レオン〜、うわっ、唇は、くすぐったっ、」

レオンを抱き抱えるとレオンはぺろぺろと俺を舐めた。
くすぐったくて、笑いながらこーがくんをちらりと見た。

「〜〜っ!!!」

さらにむぅぅ、っとした顔で地面を睨んでいる。

あ〜…もしかしてこれは…レオンに嫉妬してる…?


「レオン〜もふもふだね〜」

ぎゅっと抱きしめてやるとレオンは嬉しそうにワンッと鳴いた。

「っレオン!こっち来い!」

そこで初めてこーがくんは声を出した。
こーがくんに言われてレオンはくぅんと鳴きながら渋々俺の膝から降りる。

こーがくんはレオンを抱き上げた。そのままどっか行くのかと思いきや、レオンを腕に抱えたまま突っ立っている。

話がしたいのかな?でも俺からは絶対話しかけないからね。

その場に突っ立っているこーがくんに気にせず俺は一人でいるものとしてスマホを取り出した。

「…おい、」

こーがくんの声が聞こえて俺は顔を上げた。

「…なに?」

こーがくんがやっと俺に話しかけた。

「…レオンが会えなくて寂しがってるから連れてきてやったんだ…。」

……いや、それ今言うこと?!何、レオンが俺と会えないから寂しがってるって?!それは嬉しいけどもっと違うことがあるんじゃないのこーがくん…。

「ふーん、そう。」

「…っ、」

軽く遇うとこーがくんはまたムスッとして突っ立っている。

「…何か話すことでもあるの?レオンが寂しがるのはこーがくんのせいじゃん。」

「………。」

「まぁ俺は別にいいけどね〜。こーがくんは別に俺が話しかけなくてもレオンみたいに寂しくないみたいだし?いいよ、別に」

「……さみしい。」

「え?」

こーがくんがぼそりと呟いて聞き返した。

「…っ寂しいっつってんだろ!」

………もー、ほんとこーがくんはどこまでツンデレなんでしょう…。

吠えるように言ったその言葉に不覚にもやられてしまって俺は目が点になった。怒ってるみたいな顔なのにちょっとだけ耳が赤い。

まさかここまで素直になるとは思わなかったから。せいぜい、そっぽ向きながら謝るくらいかと思ってたのに…。


「……寂しいならどうするべきか分かってるでしょ…」

「何で俺様が謝らねぇといけねえんだよ、むかつく…」

「じゃあこのままでいいよ」

「…っあー、はいはい、悪かったつーの!」

「誠意がない。」

「…っ、大体なまえが映画見たいって言うから!」

そう…、俺たちは何の映画を見るかで喧嘩したのんだ。ほんとうに些細なことで。お互いの見たいものを主張し合って折り合いつかず喧嘩になったって感じ。

「もういいよ。別に映画なんていつでも見れるし。俺も悪かったよ。」

何だかお互い謝ったあとはムズムズする。
照れ隠しにレオンを奪い取ってもふもふした。

「レオン〜こーがくんはほんとーに素直じゃないよね〜今まで我慢して寂しかったらしいよ〜」

「…っ、今日からうち来るんだよな」

こーがくんを見上げると地面を睨みつけながら聞いてきている。多分、来て欲しいんだろうな。

「どうしよっかな。俺が行かなくて寂しかった?」

「〜〜っ…」

何か言いたそうに唸りかけたけど、こーがくんは唇を噛み締めて小さくこくりと頭を動かした。

あ〜〜〜、可愛い。

レオンを更にもふもふして喉を鳴らして笑った。

「じゃあ、行ってあげよう。お泊まりだ!ね〜レオン。」

「…チッ、飯作るの手伝えよ。」

面倒くさそうに腕組みをしたけどこーがくんの耳と尻尾がパタパタ振られてる。

素直なのか素直じゃないのか…。こーがくんは今日もツンデレなのです。



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