※誘拐は犯罪です。年の差注意、一時的ショタコン男主。閲覧注意





若気の至りという言葉では済まされないと知っていたけど…。

多分その頃の俺は何が正しくて何が間違いなのかわかってなかったんだ。

高校に入ったばかりの頃、無理をして入った高校の勉強についていけず、友達もうまいことできなくてすごくどん底にいる気分だった。

だから、憂さ晴らしにやってしまったんだ。

誘拐、という名の犯罪を。

俺はその頃から小さい子供に特別な感情を抱いていた。それも同性の、男の子に。まだ何も知らない綺麗な可愛い男の子を見ると言いようのない気持ちになっていた。

それは人に理解されることのない性癖ということも自覚していた。

だから誰にも言うことはなかった。

でもある日色々と追い詰められて何を血迷ったか俺は男の子を誘拐した。

それは夏休み、公園で見かけた子だった。

赤くルビーみたいな髪色、白い肌に丸々として大きな瞳。長いまつ毛に縁取られて本当に可愛くて人形みたいだった。

その子は何することもなく、ベンチに座っていた。


その子を見た瞬間、正常な判断ができなかった俺はああ、欲しいなって思ったんだ。

スクールカバンを握りしめてベンチに座るその子に近寄った。

「…こんにちは。一人?」

できるだけ警戒されないようにしゃがんで、その子より低い位置から笑いかけた。

そのキラキラした大きな目が俺を見た。さらに欲しいという気持ちは強くなった。

小さな唇が動いて声を発した。

「…知らない人と話してはいけません…。」

小さなその声は凛としててすごく綺麗で、今まで見てきたどんな男の子よりも意識を持っていかれた。

「大丈夫だよ。一人ならお兄ちゃんと一緒に遊ばない?」

「…何をして遊ぶのですか…。」

その子は小学生低学年くらいで、小さかった。

俺が立ったら腰までしかないんじゃないというぐらい可愛くて部屋に連れていきたくなった。

「ブランコしよう?シーソーもあるよ…!」

ああ、欲しい。欲しい。この子が欲しい。
可愛くてあどけないこの子が欲しい。

小さな手を取ってブランコの方へ連れていく。

「おなまえは何ていうの?」

「……すおう…つかさ…です」

「つかさくん!俺はね、みょうじなまえ。」

「…はい。」

「一緒にあそぼっか」

つかさくんと公園の遊具で遊んで俺に警戒心が薄れたところで俺の家で遊ぼう、もっと楽しいこといっぱいできるよ、とつかさくんを言いくるめて無理やり家に連れて帰った。

疑いもなく俺を見上げるつかさくんの目はどこまでも真っ直ぐで手を繋いで帰りながら俺はすごく嬉しかった。

俺の家は片親だけだったし、ちょうど出張でずっと空けていたから俺はつかさくんを部屋に押し込んだ。

おやつやジュースを用意して数時間したら、つかさんくんは帰ると言い始めた。

「…つかさくん、ずっとここにいたらいいよ…。」

「…あの、帰らないといけないので帰ります…」

「待って、ここにいたら楽しいよ?ねえ」

立って部屋から出ていこうとする細い腕をつかんだ。

つかさくんは怪訝な顔をして俺を見た。

「はなしてください、お兄さま。」

「…だめ。だめ。帰らせない。だめだよ、もう家の中に入ったら出れないよ。」

訳の分からないことを言いながら何がなんでもつかさくんを帰らせたくなくて俺は気が狂いそうだった。

だってもう誘拐したと言われてもおかしくないところまで来てたんだから。
もう帰せない。

「ここにはいれません。さようなら、おにいさま」

首を降って俺から離れようとするつかさくんを引っ張ってベッドに押し倒した。

「だめだって!!!」

つかさくんは怖かったかもしれない。びっくりしたように俺を見上げた。

俺はもう切羽詰まっていたから自分がどんな顔をしているか何て分からなかった。

「ここにいてよ、ここにいてよ、ここにいて…俺のものになってよ…」

現実から逃げたくて、勉強も友達もうまくいかない日常から逃げたくて、自分の好きなものだけを眺めて生きていきたくてそんな欲から俺は変になっていた。

それからつかさくんを無理やり帰さなかった。

親は帰ってこない、つかさくんの保護者はきっと夜になっても家に帰ってこないつかさくんを心配してるだろう。

でも俺にとってそんなこと関係なかった。これからどうやってつかさくんを隠していこうということしか考えてなかった。

夜になったらつかさくんにおにぎりを作ってあげて空腹を凌いだ。

2人でお風呂に入った。真っ白で小さなその体は本当に綺麗で写真にとってずっと眺めていたかった。
でも、もういいんだ。だって本物が目の前にいるんだから。

二人で同じベッドの中で寝た。

つかさくんが逃げ出さないように部屋の鍵もしめて、ベッドの中でしっかり抱きしめた。

そんな生活は数日で壊れた。

家の扉の鍵が壊されるほどの豪快さで黒服を来た人達が大勢入ってきて、俺の部屋を開け放った。

俺はつかさくんとトランプをして遊んでいるところだった。

俺は乱暴に部屋の外に出された。

俺は警察に連れていかれるのかとそこで初めて怖くなった。

そしたらつかさくんがきて、このお兄さまとずっと遊んでました。楽しかったから家に帰らなかったんです。ごめんなさい。と謝っていた。

「なまえお兄さま。また、遊びましょうね」

そう言って黒服を人たちと一緒につかさくんは家を出ていった。

あとから知った話で、つかさくんは大きな財閥の一人息子で朱桜司くんと言うそうで、誘拐されたと大騒ぎになっていたらしい。

そんな偉い人の子供を誘拐した俺は逮捕されるのかとびくびくしていたけど、一向にそんな気配はなかった。


だから、俺は時が過ぎるにつれてそのことはもう記憶の深く奥底にしまい込んだ。

なかったことにしようと思ったのに。


「なまえお兄さま。久しぶりですね。」


そう言ってふわりと笑って俺の目の前に現れたのは間違いなくあの日俺が攫った司くんだった。



司くんだと分かった瞬間、俺は過去のことを罰せられるのかと思い怖くなってその場から逃げた。

逃げたけど無駄だった。
あれよあれよと俺は捕まり、どこへ行くのか知らされないまま大きな屋敷に連れてこられていた。

広い一室の中で司くんと二人。

小さな頃の面影を残しつつ、司くんは成長していた。

整った顔、姿勢の良さ、人当たりのいい笑顔を浮かべて椅子に座っている。

「あの…ここはどこ…ですか…。」

「ここは私の家です。」

「な、なんで…。あ、あの、過去のことは…、あ、謝ります…。あの時は…ちょっと可笑しかった、っていうか…い、今は別に…そんな好みは…。し、仕事とか世間体とかあるので…、大事にはあまり…したくなくて…」

しどろもどろになりながら何とか考え直してもらうよう目の前にいる高校生くらいの司くんに話した。

「何を勘違いされているのでしょう?なまえお兄さま。」

何を勘違い、って、司くんが俺をここに連れてきたのは俺を裁くために然るべきところに突き出すつもりで…。

「私を欲しがったのは貴方じゃありませんか。だからこうして今度は私が誘拐してあげたのですよ?」

「ゆ、誘拐って…」

「もうこの部屋に入ったからには出られません。もう貴方は私、朱桜司のものです。ずっと待ってましたけど、全く音沙汰もないので私から攫いに来ましたよ」

くすりと笑って司くんは俺に手を差し伸べた。

「あの時はかなり大きな騒ぎになっていたみたいで、きっと私がなまえお兄さまを突き出したらどうなっていたことか…。もちろんそんなことはしませんけど…。 」

「ふふ、あの時から私の心はずっと貴方に誘拐されたままみたいです。切り詰めたような顔で私を離すまいとするなまえお兄さま…。あの時から…。」

俺を見る司くんの目はあの時と変わらずどこまでも真っ直ぐだった。思わず身震いをした。まさか司くんがそんなことを言うとは思っていなかったから。

「もうなまえお兄さまはこの鳥籠の鳥のようなものです。これから二人でゆっくり、遊びましょうね」

司くんの見せた笑顔は極上の幸せを感じたのかと思わせるぐらいうっそりとした微笑みだった。


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