泉先輩相手に調子に乗る
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「ゆ〜うくん!」
真の姿を見かけて軽い足取りになる泉先輩、とそれに全く気づかない真。
肩を叩かれて振り向いた真の顔…、心底嫌そうな顔してるぞ…。そんな2人のところへ俺も向かう。
『い〜ずみ先輩っ!』
語尾に星でもつくような口調で泉先輩の肩を叩けば今度は泉先輩が心底嫌そうな顔をする。
反対に安堵の表情を浮かべている真。
『あれ、泉先輩ひどい。俺は今日も大好きな先輩に会えて幸せなんだけどな〜』
「っ…あんた…、どこから湧いてでたの。チョ〜うざいんだけど」
『え〜、泉先輩がいるところには俺もいるよ、当たり前でしょ?』
「はぁ?」
『あっ、今から真と2人で勉強会するんだけど先輩も一緒にします?』
「2人で?!ゆうくんと2人で?!」
青い瞳の刺すような眼差しにさすがモデルだけあって迫力がある。
『そっ!一緒にやるならもちろん先輩は俺の隣ね〜♪手取り足取り教えてくださいね♪』
「ふざけないでよねぇ。ゆうくんがいるなら…一緒にやりたいけど、あんたがいるなら話は別」
せいぜい赤点取らないようにしなよねぇ と引き返していった先輩を見て、真がホッと息をついていた。
「なまえくん、助かったよ…いつもなまえくんが来てくれると泉先輩が引いていくからかなり助かってるよ」
『泉先輩、俺という後輩がこんなにも慕ってるのにさあ、退けるなんてひどいよね!でもああいう先輩見ると、押したくなっちゃうんだよね』
「ははは…なまえくんも物好きというか…」
『まあ、ああいう押しの強い先輩は逆にこっち側も押しを強くすれば案外すんなりいくかなって思ってさ。ちょっと興味本位で押してみてるんだよ』
「ううーん、悪い顔してるよなまえくん」
『ふふ、わざとだよ〜よし、じゃ図書室行くか!』
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シャーペンがノートを走る音、消しゴムで消す音、静かな空間に響く音が心地いい。
2人で課題を終わらせて、自主勉強ということで問題集を解き答え合わせをする。
「…これで終わり!結構やったね!」
筆記用具を投げ出して、大きく伸びをして体をほぐす。
『んん〜!疲れた!』
「疲れたけどここまでやったら達成感あるね!何か飲み物買ってくるよ!なまえくん何がいい?」
『お、ありがと。じゃあ炭酸系で』
ついでに俺の飲み物も買ってきてくれるという真に小銭を渡して机に突っ伏す。
真が出ていく音を聞きながら、頭を使うって結構疲れるんだなあとか考えてると頭の上から声が降ってきた。
「ゆうくんは?」
この声は…泉先輩じゃないか?と顔を上げれは腕組みをして俺を見下ろす泉先輩が立っていた。
『あ〜泉先輩、お疲れさま〜。練習着ってことは練習終わったあとですか?真は今飲み物買いに行ってますよー』
「ゆうくんを使うとか許せないんだけどぉ…あんたが買いに行けばいいでしょ」
『も〜先輩、ゆうくんゆうくんってさあ。こんなに慕ってる後輩がいるのに邪険に扱ってひどくないですか?俺もそろそろ我慢の限界ですよ』
いつものようにゆうくんゆうくんとうるさい先輩にこちらも押して畳み掛けてみる。
どんな反応をするんだろう。興味本位でちょっかいを出しているけどある程度予想はできている。
きっとまた嫌そうな顔をして あんたには関係ないんだけどぉ、 とか はぁ?? とか言われるのがオチかなあと思ったり。
「ふうん。我慢の限界ってどういうことぉ?」
んん?そこに食いついてきたか。ちょっと待って、考えるから。どう答えればいいかを少し考えて言葉にする。
『先輩がゆうくんゆうくん言ってると嫉妬するってことですよ〜。いつも先輩に声かけてる俺が恵まれないっていうか…意味ないならいい加減、愛想尽きるってことです!』
少し拗ねたように言ってみたけど、これで 愛想尽いてくれて本望、 とか言われたらそれはそれでショックだ。
そんなことを言われても、でもやっぱり先輩が好きなのでこれからも頑張りますよ! とか言ってやるスルースキルくらいは持ち合わせてるから大丈夫だけどな。
「はぁ?勘違いしないでよねぇ。ゆうくんとあんたは別だから〜」
え、ちょっと待って。スルースキルあるから大丈夫とか思ったけど、その言葉は結構グサッとくるものがある。
『…先輩ひどい…、いくら俺がうざいからってそんなに直接言うなんて…もう俺立ち直れない』
興味本位だったけど割と健気に先輩に懐いていただけあって、ダイレクトに言われてしまうとさすがの俺も少しばかり凹む。
もう構わないでくれ、泉先輩なんて知らないと言わんばかりに再度机に突っ伏した。
「何勘違いしてんの。あんたに対する気持ちとゆうくんに対する気持ちは違うって言ってんのぉ。」
『だから、それはさっき聞きましたよう…。俺は真以下で先輩に声かけることすらウザがられてるんでしょ…』
ああ、自分で言って何かさらに凹みかけてる。
これも全部泉先輩のせいだ。勉強で疲れた頭では上手く考えることもできず落ち込む一方だ。
「はぁ…本当にウザがってたら今ここに来てないんだけどぉ。俺もそこまで暇じゃないし」
『じゃあなんでここにきてるんですかあ…どうせゆうくんでしょ。さっさとゆうくんでも探し出して愛の言葉でも何でも伝えてきたらいいじゃないですかあ…』
もう金輪際先輩にちょっかい出すのはやめようと突っ伏した頭をグリグリと机に押し当てていると肩を掴まれて机から離された。
『…なんですか』
「だからぁ、今はゆうくんじゃなくてなまえに会いにきたって言ってんの」
『はぁ…?先輩、ここに来た時から ゆうくんは? って1番に言ってたじゃないですか…』
「それは…口実だからぁ…」
口実?あれ?泉先輩は別に俺を嫌ってるわけじゃないのか?この様子だとわざわざ俺に会いに来てくれたと言ってるようなもんだけど…
俺のちょっかい精神がまたむくむくと元に戻ってきた。
『それならそうと最初に言ってくださいよ!可愛くない!』
いやいや、どの口が言ってんだかと自分にツッコミたくなるがこれが俺の通常運転だから気にしないでおく。
「可愛げのないあんたに言われたくはないんだけど」
なんだ、いつもより素直になった先輩じゃないか。これなら調子に乗っても優しい先輩のことだから、また 何言ってんの? と冷ややかな目で見てくることたろう。
勉強で疲れた頭では普段は絶対言えないようなことでも簡単に発言させてしまう。
『後輩にショックを与えた罰として、慰めのハグとちゅーをどうぞ!』
ニヤリと笑って腕を広げる。
いつもの流れからすると、きっと頭をパシっと叩かれるか冷ややかな目で射て殺されるか、だ。
さてさてどんな反応かなと待っていると、青い瞳が俺だけを映し出して、いつもよりさらに澄んだように見えた。
いつもよりこんな間近で見ることがあるだろうか、いやないな。
じゃあ、なんでこんなに綺麗な瞳が目の前にあるんだろうと考えた時には、泉先輩の唇で俺の唇が塞がれていた。
まさか、そんな、本気にするとは思わなかった俺はびっくりして目も開けたままされるがままだった。
口付けて、数回啄まれて静かに離れた唇はとても柔くて、その柔らかさに頭がクラクラしてぐっちゃぐちゃになった。
自分のものではない泉先輩の唇が触れたという事実が頭の中で理解するよりも早く顔に出ていたようで。
「顔、真っ赤」
『……すると思ってなかった…』
本当にするとは思ってなかったからびっくりしすぎて心臓がうるさい。
おまけに立っている先輩は座っている俺を包み込むように抱きしめている。
「キスしろって言ったのはそっちでしょぉ」
『せ、先輩が…するとは…俺、お、男だし…嫌われてるし…』
「はぁ?好きじゃなきゃキスなんてしないんだけど」
『じゃ、じゃあ真にもキスするんですか…』
「あんたバカだよねぇ。ここまでしても分からないんだ」
デコピンをされて地味に痛い。
「誰にでもキスするわけないでしょ。なまえだから会いに来てるし、キスもしたの 」
『せ、先輩それって…』
少し頬が染まっている先輩を見上げて、今から言う言葉を考える。
ただ調子に乗って声をかけていただけなのに、こんなにも心臓が高鳴るのは、また別の気持ちが芽生えていたからなのか。
『泉先輩、好きって言ってよ』
そしたら、俺が満点の回答をするからさ。
仕方がないという顔で俺の頬を包み込んだ先輩から愛の言葉が降ってくるまであと少し。
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