視線1の続き
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頭に鈍い痛みを感じて目を開けた。
視界に入ってくる白。
それはシーツの白だった。
『…っ?!』
瞬時に自分が今どんな状況なのか把握できなくて、次第に心拍が早くなる。
俺がいるこの場所は部屋の1室のようで、自分が横たわっているベッドが一つあるだけだ。
真っ白なシーツと、グレーの枕。落ち着いている時ならオシャレだな、とでも思うのだろうけど今は違う。
ここはどこなんだ?
何でこんなところにいるんだ?
思い出したのは意識を失う前の出来事。玄関先で男に無理やり意識を落とされたこと。
多分、あれは瀬名泉だったはず。
でも俺は一切の関わりもないし、心当たりもない。なんで、なんで?
それしか頭に浮かばないが、考えれば考えるほど頭がズキズキする。強制的に意識を落とされた代償なのか鈍い頭痛に顔を顰めた。
とにかくここから出たい。
そうっと、音を立てないようにシーツをめくり床へ足をついた。
ひんやりとした冷たい床の感触が足裏につたわる。
誰かがいるかもしれないし、慎重に動こうと足音を立てず一歩一歩進み、部屋のドアまでやってきた。
耳をすまして、ドアの向こうの様子を伺ってみたが無音だ。
音を立てないようにドアノブを握り、ゆっくりと回した。
数センチあいたドアの隙間から外を見ると、廊下が続いて人の気配はない。
ゆっくりとドアを開いて、ひと一人通れる隙間になったところで廊下へ出てみた。
人がいないのも少し気味が悪いけど、誘拐は犯罪だ。そんな犯罪者と鉢合わせるのも避けたい。
左右を見渡し、玄関へと続きそうな方向へ進んでみる。角を曲がる前に少し顔をのぞかせて、人の確認をしながら廊下を静かに歩いた。
いくつか部屋があったが無視して玄関を探した。
2回、角を曲がったところで玄関が視界に入ってきた。
(よかった、これで出られる)
ほっとして少し早足になるが、慎重に足音立てずに玄関まできた。
玄関には男物の靴が1つあった。普通の一般人では履きこなせないようなデザインだ。
やっと出られる、と安心して玄関ドアの内側の鍵を慎重にゆっくりと回した。
カチリ、と音がしなかったが、ちゃんと開いているはずだ。ドアノブを掴んだ。
冷えたドアノブに指先から背中へと冷たいものが流れる。ゆっくり、ゆっくり、と回してドアを開くように押し込んだ。
が…
『…ぇ…?』
開かない。
もう一度、ドアを押し込むも、開かない。
内側のロックも外したはずだ。何で開かないんだ。
最悪の状況に何度もドアを開けようとしていると、トン、と音がして顔をあげる。
自分の手元から視線をあげると、俺の顔のすぐ横から腕が伸びて、手のひらが壁についていた。
『っ!!』
びっくりしすぎて、息を飲んだ。それと同時に、恐怖から震えが身体中を走る。
「ーーどこ行くの。」
耳元で聞こえるその声にいてもたってもいられずドアから震える手を離し、ゆっくりと顔を横へ向けた。
『っ!!な、』
薄い色素の髪と青い瞳、あの既視感を思わせる視線。
無表情で俺を見下ろす瀬名泉だった。
その顔が鼻の先にあって、体をひねって後ずさる。
それでも、俺は壁と腕の中にいて距離など取れるわけがなかった。
『あ、の、これ何ですか…どうしてここに…』
「どこ行くの」
『え、や、「どこ行くの」』
『どこって…家に、帰りたいんですけど、』
「なまえの帰るところはここだよ」
『は…?』
「何も心配いらないよ。ようこそ俺となまえの家へ」
にこりと笑って震える俺の左手をとって、手の甲へそっと唇をつけた目の前の男は、神聖そうに目を伏せて口付けたあと、上目使いに俺を見た。
その青い瞳に見られただけで、体が強ばる。
逃げることを許さないとでも言うような視線。
混乱する俺はとにかくその視線から逃れたくて、目を逸らした。
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