登校して教室に入ると、なずなと奏汰が話をしている姿が目に入った。
『なずな、奏汰、おはよ〜!』
アイドルだけあって笑い会う2人の顔がキラキラして眩しい。朝からこんないい笑顔が見れるなんて最高だと思いながら、鞄を自分の机の上に置いたあと2人のそばへ足をすすめる。
「おはようなまえ!ってどうしたその顔!」
「おはようございます〜なまえかおがあかいですね〜」
『うわあ…やっぱわかる?』
「茹でダコみたいだぞ。」
『実はさ〜…』
顔が赤い理由を話そうとすると、肩に手を置かれた。
振り向くと俺の顔が赤くなった原因者が立っていた。
「皆おはよ〜。なまえくん昨日はありがとね。おかげでいい1日が過ごせたよ。やっぱりなまえくんがいると違うね〜女の子がたくさん声かけてくれるからさあ」
『薫!俺こそありがと!久しぶりに行けて楽しかったし最高だった!俺がいてもいなくても薫なら誰でも声かけてくるんじゃないか?俺は1人で飽きるまで楽しんでたし結果オーライだけどなー』
何の話なんだと頭にハテナを浮かべている2人をそっちのけで話してしまい話を振り出しに戻す。
『顔が赤いのはさ…海行って日焼けしちゃって…。おかげで昨日から痛くてさー本当助けてほしい。』
「ああ!なるほろ!なまえと薫ちんで一緒に海に行ったんだな!」
『そうそう!楽しかったけど、油断して思いっきり日焼けしちゃってさ…さっき泉に怒られちったよ…アイドルのくせに…って』
苦笑いをしてなずなに返答しながら、さっきから静かに聞いている奏汰を見ると目を伏せて表情が分からない。
『奏汰〜?どうした?』
「なまえがぼくをさそってくれなかったのがかなしいです…」
『えっ?あ、いやあ奏汰この間予定あるって言ってたからさ、声かけても断られるかなあって思って!』
「たのしそうでいいですね〜。…ぼくはすこしおさんぽしてきますね」
俺がまた次の言い訳をいう前に奏汰は教室を出て行ってしまった。
『ええ〜、何かあいつ怒ってない?』
「えっ、奏汰くん怒ってたの?!全然分かんなかったんだけど…ていうか、なまえくん俺と一緒に海行くの奏汰くんに言ってなかったんだ…?」
『うん…言っても行かなかったと思ったし…』
「あらら…それは駄目だよ。道理で奏汰くんの機嫌を損ねるわけだよね。なまえくんも恋愛のいろはが分ってないよねえ」
『はい?!薫に言われたら終わりだわ…』
「とにかくさ〜なまえ!奏汰ちんのとこに行ってあげろよ!」
『…はあ、行ってくるよ』
奏汰が行きそうな場所を考えて、俺も教室を出た。
噴水か、部室か…はたまた屋上か…
とりあえず部室あたり行ってみようと廊下を早歩きしていると、視界に入った外の噴水に水色を見つけた。
目を向けると奏汰が噴水に入りかけているところだった。
『奏汰!!』
声をかけると眩しそうに俺を見た奏汰はへらっと笑って手を降っている。
ああ、濡れたらまた乾かさないといけないじゃないか。駆け足で外に出て噴水に近づくとすでに奏汰の足は水の中だった。
「やっぱりみずのなかはきもちいいですね〜。あついのはきらいですがみずがとてもきもちよくかんじるので…」
安心したような落ち着いた顔をするものだから何も言えず噴水に腰掛けて奏汰の水遊びを見守ることにした。
『俺も水の中は気持ちいいから好きだなあ…やっぱり泳ぐのも楽しかったし…』
昨日のことを思い浮かべながらポツリと呟くと後ろからグッと腕を引かれた。
「なまえ…」
『うぇっ?!』
引っ張られたことで重心が後ろに行き、視界に空が移った。盛大な水音とともに後ろへダイブした俺を奏汰は満足そうに見ている。
『ちょ、俺が一番濡れてるじゃん…!』
「いっしょにぷかぷかしましょう…♪」
『も〜…暑いから、まだいいけどさあ…』
顔に張り付いた髪のかきあげて、濡れた頬を拭う。
夏の風に吹かれて日焼けで火照った頬が気持ちいい。
もしかして火照った肌を冷やすために俺を噴水の中に入れたんだろうか。
「…うみはたのしかったですか?」
『…奏汰、怒ってる…?奏汰に言わずに海に行ったこと。』
「…なまえがたのしかったならそれでいいとおもいますよ〜」
ああ、奏汰ってそうやって優しそうに笑うくせに心の中ではそんなこと絶対思ってないのを俺は知ってる。
『ふふ、笑って言ってるけど顔にはすっごくムカつくって書いてあるよ』
いつも奏汰には振り回されるんだ。こんな時ぐらいはカマをかけても許されるだろう。
ニヤリと笑って奏汰を見ると、いつもの柔らかな瞳とは違う、ギラギラした光が見えた。
覚えのあるその目を見ていると、背中から何か這い上がってくるようにむず痒くなる。
「ふふふ♪なまえはわるいこですねえ。めっ ですよ」
『ご、ごめん。悪かったって、、う、わ』
ちょっと調子に乗りすぎたかなと焦った時にはすでに遅かった。
肩を押された俺はまた視界に空を入れて、水面に背中から倒れこむ。
先ほどと違うのは視界に奏汰がいるということだろうか、水の中に入るとわかると反射的に目を瞑った。
これは結構機嫌を損ねてるんだなあ。
後でちゃんと真面目に謝ろうと心に決めていると、唇に触れるだけの口付けが降ってきた。
数秒、いや5秒はあったか。解放されて水の上に上がると、俺を見下ろす奏汰にこれはもう逃げられないなと感じる。
「だれの『もの』なのか、わかってますか〜?」
『ん…奏汰のもの…。』
濡れそぼった髪を耳にかけて見つめてくるその目を見てると誰よりも男らしいと思うんだ。
その目に弱いんだよなあ。
毎度絆される自分にはほとほと呆れるけど、こうして奏汰の視線を俺に向けてくれるからやめられないんだ。
「ぼくの『もの』ならはなれちゃ、だめですよ…?♪」
『離そうとしないくせに…。』
しっかりと絡められた指を見る。
奏汰の海のように広いあたたかい愛情を感じてもう少しこのままでいたいと思った。
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