チャラ男はNOせんきゅー の続き



自販機の前でお目当てのものを買おうと財布を取り出していると、目の前にお目当てのものが出された。

「………。」

「はい、どーぞ♪いつもこれ飲んでるよね?みょうじクン」

女子が好きそうな笑顔で俺にお目当てのジュースを差し出す羽風先輩を睨んだ。

「…いりません」

「えー?でもこれ買おうとしてるでしょ?」

「この間からしつこいんですよ。ほっといてください。」

この間の1件から何かと俺の前に現れる羽風先輩。

転校生への熱意はどこへいったのやら、度々俺の前に来ては話しかけてくる。

「仕方ないなぁ…飲んじゃお。」

ペットボトルのキャップを開けて、ゴクリと羽風先輩の喉が動いた。

嫌いだけど、顔が整ってるからやっぱり色っぽい。

ああ、見せつけるようで何か嫌だ。やっぱりこの人嫌い。

ケッといいたくなるような気分になった。

「欲しい…?間接キスする?それともーー」

ペットボトルを傾けて間接キスなんて馬鹿なこと言い出したかと思うと俺に顔を近づけてきた。

「口移しで飲みたい…?」

「ち、か…!」

近すぎる距離に思わず仰け反る。手首をパシリと掴まれているため離れることができない。

ここが人がほとんど通らないところでよかったと切に思った。

「ねえーそろそろ凝りたら?一緒に遊びに行こうって行ってるだけじゃん?」

そう言って上目遣いで覗き込んできた羽風先輩の首元に目がいった。シャツの下にちらりと見えた赤い痕。

ああ、やっぱり…この人は…

「っ…離れろよ!」

羽風先輩を思い切り押して距離を取った。

「ハッ!そんな痕つけといてよく言えるよな。タラシが…」

口先だけなんだ結局。皆そうだ。
言葉だけは欲しい言葉をくれる。でも最後は結局俺を捨てていく。

「あー…。これね。」

羽風先輩は自分の鎖骨下をトン、と指で叩いた。

「これは遊びだけど、みょうじクンは遊びじゃないよ?」

「ふざけんな!そんなこと言われて嬉しいとでも思ってんのか?!あんたって本当さいてーだな。」

「ひどいなあ。そんなんじゃ彼氏もできないよ?」

「っうるさい、余計なお世話だ!女子の後でも尻尾振って追いかけてろよ!」

少し言い過ぎたかもしれない。でもこの人が悪いんだ。俺を構って何が楽しいのか知らないけど、この人と話すたびに調子が狂う。

いつもはこんなに感情を表に出さないはずなのに…。


「…まあみょうじクンより女の子の方が可愛げがあるよねぇ。」

「っっ!!」

抉るようにその言葉が突き刺さった。暗にだからお前は男からも振られるんだと、誰にも相手にされないんだと言われているようで胸が苦しくなった。

「あー、ほらまた泣きそうになってる。」

「さ、わん…な…」

誰が泣きそうだって?何馬鹿なこと言ってんだ。

払いのけようとしたのに手を引っ張られてそのまま羽風先輩の腕の中にすっぽりと収まった。

「よしよし。素直になったら可愛いと思うよ?ね?」

思いのほかしっかりしてる体に、長い襟足、耳元で喋られる擽ったさにどうしようもなく胸の鼓動がはやくなる。

「あれれ?大人しくなった。もしかして慣れてない?こういうの。」

慣れてるわけないだろ。誰もがあんたみたいに恋愛経験豊富なわけじゃない。
経験が少ない俺には抱きしめられるだけですごく動揺する。

「えー、あはは、なんかそういうのも可愛い。」

くすくす笑って俺の頭をぽふぽふと撫でる羽風先輩に言いようのない恥ずかしさを感じて抵抗した。

「香水くさい。離せ…」

「つれないなー。この匂いきらい?それならやめるよ?」

「…何で俺に合わせるわけ?関係ないし。」

「みょうじクンに嫌われたくないし。…俺のこと嫌い?」

嫌い。女たらしでチャラくて遊んでて人をすぐに捨てる人。首に赤い痕をつけて平気でいる人。嫌い。そんなやつは大っ嫌い。

「……きらい。」

「ええ、そこは嫌いでもない、とかそういうの期待したんだけど。」

さも予想してたかのようにあははと笑った。

「でも俺はみょうじクンのこと好きだよ?」

首を傾けて少し高い位置から俺の顔を見下ろす羽風先輩は微笑んでいた。

ああ、チャラいほんと。こんなこと平気で言うから嫌い。

でもその笑顔に顔が赤くなった自分の方がもっと嫌いだ。


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