コポコポ…
沸騰したフラスコの中には何やら怪しい液体が入っている。
実験器具がおかれた机の上にその液体が入った瓶を置いた。
「ついに完成…?」
「ああ。これで…きっと効果があらわれるだろうネ」
「夏目すごい…」
緑の色をしたかと思えばピンクのような色にも見えるその液体。
光にかざして見てもどんな色なのか説明できないほどの怪しさだ。
「なまえくんのお願いダカラネ。」
「ありがと〜〜夏目大好き!」
「はいはい。わかったヨ。ほらこれで遊ぶなり何でもしてくればイイヨ。」
俺をいつも楽しくさせてくれるから大好きな夏目にギュッと抱きつく。
昔から可愛がってるだけあって、あしらうふりをしても顔が本当に嫌そうな顔をしてないからまた可愛いのだ。
「わーい、じゃ早速いってきまーす!」
「誰に使うか知らないケド気をつけてネ」
「はーい、大丈夫大丈夫!」
軽快に笑いながら実験室から出ていく俺を夏目はため息を吐きながら見つめた。
俺はと言うと廊下を走りながら今からこの液体を被せてやる人間を思い出してニヤけた。
「ふふふ、絶対にアイツに……」
悪い顔をして笑っている自覚はある。ゲスな笑みを浮かべてお目当ての人間を探そうとしていると曲がり角で人とぶつかりそうになった。
「っ、おい!!廊下を走るな!!」
「あ、はっけん。」
「ったく、度し難い。貴様はいつもいつも…」
何度注意したら分かるんだと眼鏡をくいと直しながら言う蓮巳敬人に、瓶の蓋をカポっと開けて液体をふりかけた。
「なっ!!何を!」
ピシャリとその液体が蓮巳かかった瞬間、もくもくと煙が出てきて少し後ずさる。
ドキドキしながら、煙がおさまるのを待った。中心の蓮巳はどうなったのか…少しずつ近づいた。
「全く、いきなり何だ…」
声の発生場所はかなり下から聞こえる。
下を見下ろすと学生服が肩からずり落ちて、眼鏡も大きくてとれかけている蓮巳がいた。
しゃがみこんでじいっとその顔を見る。容姿的には5歳前後に見える。ふっくらと丸い頬。黒目がちの目。小さな鼻。あの蓮巳の面影はあるけれど、数倍いや何百倍も可愛い顔の整った子がいた。
「……〜〜〜っ、あははは!!可愛い!うける!」
笑っていると蓮巳は訝しげに俺を見た。まだ自分の状態が把握できていないようだ。
スマホを立ち上げてパシャと写真をとり、それを蓮巳に見せてあげる。
「っ?!?!?!?!な、な…」
「なにこれ〜可愛い〜ほっぺぷにぷに!」
蓮巳のふっくらと赤い頬をぷにぷにする。触り心地最高だ。
「…おい、貴様どういうことだ。これはどういうことか説明しろ!」
「え?ただ小さくなっただけ。」
「度し難い!今すぐ戻せ!」
「ブハッ!その状態で言われても可愛いとしか言えない!可愛いでちゅねえ〜」
ギャンギャン言っている蓮巳は声までもが戻っていて、高い声で精一杯呂律を回して喚いている。
「何の恨みがあってこんなことをしたんだ…っ」
「えー?いつも蓮巳が廊下走るなとか栄養が偏ってるとか怒ってくるからムカついて。」
「……度がつくほどの阿呆だな。信じられん。」
「その阿呆にこんな小さくさせられて…プププ。」
蓮巳の脇に手を入れて抱え上げた。
「…なっ!」
いきなり目線が高くなった蓮巳が俺にしがみついた。
「抱っこ抱っこ〜♪軽っ!」
「おい!早く元に戻せ」
「…戻し方わかんないんだよね」
「はぁ?この…!!」
蓮巳が俺のほっぺをぐいぐいと押してくる。来ている制服が大きくて袖から手がでていない。
やめろよー、なんて言いながら蓮巳を抱き抱えながら片手で袖口をめくって蓮巳の手を出してあげた。
「うわ!もみじみたいなおてて!可愛いー!」
こちらもふっくらとしたらお手手が出てきてキャイキャイ騒ぐと、蓮巳が自由になった手で本格的に髪の毛やら頬を引っ張りだした。
「いて!いて!髪の毛とか反則!いて!乱暴!副会長が乱暴する!」
「全て貴様のせいだ」
「このまま他の生徒の前に突き出してやってもいいんだからな!」
「………」
俺の言葉に蓮巳の攻撃が止んだ。
「よし、じゃーお兄ちゃんとお散歩しよっか!」
この可愛い子供を抱っこして歩いてたら多分皆に注目されるだろうな〜とニヤニヤしながら動く。
「覚えていろよ…この愚行…必ず…」
小さな可愛い男の子が可愛い声で俺の耳元で呪いの言葉を言っていて面白くて吹き出しそうだ。
「あー、あの副会長が今俺の腕で抱っこされてるんだよ?うけるわ…」
「とにかく戻る方法を教えろ。液体か何か知らんが作ったやつを教えろ」
「えー企業秘密だから無理。」
「…大方予想はついている。お前と繋がっているといったら逆先だろうな。」
「……夏目は悪くない!」
「気持ち悪い。俺をギュッと抱きしめるな、顔を埋めてくるな、気持ちが悪い。」
「2回言うな!」
「本当のことだから言ったまでだ。」
「もう元に戻してやんないぞ!」
「もう少しまともな方法をとったらどうだ。こんな方法で何がしたい。」
「蓮巳を懲らしめたい。」
「嘘が下手だな。俺にちょっかいをかけたいだけだろう。」
「はぁぁ?!何言ってんの?!頭も幼稚園児に戻っちゃったのかなぁぁ?!」
「うるさい。喚くな。確かに俺も忙しくて構ってやれなかったからな。」
「どこの構ってちゃんだよ!ちげーし!」
「案ずるな。俺を元に戻せば解決してやろう」
「そんな手に乗らない!」
廊下で騒いでいるといきなり蓮巳の体が重くなり始めた。
「え、ちょ、おも、おもく、」
ポンッという音と煙で俺の手には蓮巳から抱っこしていた感覚が消えていた。
そして……俺の目の前には鬼の角が生えたかのように恐ろしい顔をした…蓮巳がいた。
「アレ…モドッタ…カワイイハスミガ…」
「覚悟はできているんだろうな。みょうじ」
「デキテナイカラニゲル!」
「貴様にはみっちり説教をしてやろう。」
逃げる前に捕まえられてしまい、腕を引かれながら連行される。
「説教聞くのはいいけどお茶と茶菓子くらい出してよね。」
「誰が出すか。」
「じゃあ生徒会室にいる真緒くんにでもお茶だしてもらおうかな〜」
「…はぁ、度し難い。」
「あ、俺ね今日は最中がいいなあ。」
俺のお願いを蓮巳はピシャリと跳ね除けた。
それなのに、ちゃんと最中を出してくれたりするところが嫌いではない。
別に好きかと言われると……
まあ、好きかもしれない。
最中を食べながらパサパサする〜と文句を言えば、お前が選んだんだろうと叱られた。でもお茶をそっと出してくれる蓮巳にニヤニヤしたらまた怒られた。
あとで夏目に試験結果を報告しにいこっと♪
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