「よぉし、今日も行ってきまーす!」

気をつけてな〜と口々に言われて事務所を出た。

俺の仕事は記者。担当は芸能ニュース!

同僚たちが書く記事は売れに売れるネタばかり。

俺も負けてられないと目をつけたのが…

「今日こそ暴いてやる…朔間零!!」

そう、朔間零。

世界的にも有名で知らない人はいないんじゃないかという頭脳明晰、容姿端麗、完璧な美貌。ハイスペック人間。

そんな人のスクープ、ゴシップ、暴いちゃったら……

という夢のような目標を掲げて早半年。

朔間零の行動に張り付くのは簡単だけど、なかなか隙をみせないのが朔間零だった。

ここ半年しつこいぐらい追いかけているのに1つもそれらしいものが見つけられなくて事務所内でも俺の評判は下がりつつあった。


そんな状況を打破するためにも絶対に特大スクープが欲しいのに!!

「もううぅぅ…まじ早く女でもひっかけろよ…」

今もおしゃれなカフェテリアで取材を受けている朔間零を遠く離れた席から見ている。

こういうところに入るのも自費だし、俺の財布も、底をつきそうなんだけど…と自業自得なイラつきを朔間零にぶつけたくなる。

半年追いかけていれば朔間零のことにも詳しくはなる。大体どこに出現するとかもわかる。ポ〇モンかよ、なんて自分でツッコミながらだらだらと取材が終わるのを待つ。

あれが終わったら、女でも来ないかな〜なんていつも考えるのに、朔間零は女の影も全くない。

意味がわからない。

あんな容姿なら選り取りみどり、引っ張りだこだろうに。

くっそ…俺があの体だったら毎日遊びまくるのに…と下衆なことを考えてる間に取材が終わりかけていた。

「あーぁ…俺が女ならなぁ…」

俺が女ならもうこんな状況我慢できなくて、自分の体使ってハニートラップでもかけてしまいそうだ。

それでスクープが取れて爆売れして…俺の名前も売れて……

ああ、いけない、また空想に浸かっていた。


取材が終わった朔間零はまだここのカフェテリアでお茶するらしく、居座っていた。

いや、もしかしたら誰か来るかも…?!?!

おおお、スクープだ!カバンに入れて肌身離さず持っているカメラを掴む。

ドクドク…と心臓を高鳴らせて今か今かとその時を待った。

朔間零が席を立った。

その行動の意味は?!

早くスクープが欲しい!

目だけで朔間零の行動を追う。

どこへ行くのかと思っていると、何と俺の方向へ向かってきていた。

おおお?まさか俺の近くに朔間零のお目当ての人がいたのか?!

誰だ?!誰と密会だ?!ときょろきょろと当たりを見渡す。

俺の座っている席は店の隅っこなので、周りはあまり人がいないし、いても少し離れている。

どこへ行くんだ朔間零…!!


「くくくっ、お主じゃよ。」

「……え?」

朔間零は目を見開く俺の目の前に座った。

足を組んで肩肘をついて俺を見てきた。

朔間零をこんな間近で見たことはない。まさに圧倒されるというのはこういうことだ。
見られて身動きができない。

「半年前からちょこちょこと後ろをついてくるひよこがいるもんじゃから気になってのう」

それって俺のことか…?最初からバレていたのか?!

「我輩なんかに付いてても何もなかろう?なんだか可哀想になってのう…」

「なっ…!」

こ、こいつ何のネタも取れない俺を馬鹿にしてるのか?!

「みょうじなまえくん、じゃったかのう。まぁお茶でもどうじゃ」

くすりと笑って俺の珈琲を飲んだ朔間零は俺の口をあんぐり開けさせるには充分な破壊力だった。


▼ back ▼