※3-Aトリオ+天祥院
みょうじ なまえ、高校三年生。腐男子。
通っている高校は夢ノ咲学院 アイドル科。
何を隠そう己の欲望のためにこの科に入った。不純な動機で全国のアイドルを目指す人達に申し訳ないけど、どう見ても平凡でアイドル向きな顔じゃない俺がなぜか入れてるわけだ。合格させた学校が悪いということにしておこう。
おかげで俺の学校生活は毎日がパラダイス!周りを見渡せばどこも顔整った奴らばかりで妄想の宝箱!妄想が尽きない!
俺のクラスは3年A組。
アイドルたちと同じ教室で勉強しながら、アイドルたちの闇の深さを知りながら日々妄想してるわけだ。
天祥院と蓮巳のやり取りとか、守沢と羽風と瀬名のやり取りとか聞いてるともう必然的に頭で妄想しちゃうよね。
学校はいいところだぞ。クラス、委員会、部活、ユニット、それぞれの組織があってそれぞれの関わりが…くっ、妄想始めるところだった…
俺的にはUNDEADの朔間さんと羽風とかまじあの2人の関係性に妄想しては激萌えしちゃうだよな。あと先輩後輩もいいよね。この間、購買のところで2年の氷鷹が1年の真白にジュース奢ってあげてるの目撃しちゃったわけだ。
「わぁぁっ!北斗先輩っありがとうございます!大好きです!」
とか嬉しそうな顔で言っててもう俺購買の菓子コーナーの棚に頭打ち付けそうになったから。悶えすぎて。付き合っちゃえ!お前ら付き合っちゃえ!え、ていうかもう付き合ってる?
という俺の妄想は止まらない。
今は放課後の前の終礼中。
昨日買ったBL本をそのままカバンにいれたまま学校に来てしまった俺は今日は寄り道せず早く帰るつもりでいる。
それにしてもさっきから終礼中なのにこそこそ話してる羽風と守沢よ。
お前たちの会話は聞こえているぞ…。
「羽風っ!お腹空いたな…」
「俺何も持ってないからね。」
「むぅ…育ち盛りの男子高校生はエネルギーが必要だ!」
「…守沢うるさいんだけどぉ」
「瀬名!何か持ってないか!お腹がなりそうだ!この静かな空間で俺のお腹が鳴ったら恥ずかしい!」
あああ、お前たち可愛すぎ!三つ巴とかもありかも!ぐふふ、ご馳走様です!にやけそうな口元を隠して終礼が終わるのを待った。
先生が出ていったら教室には賑やかさが戻ってくる。俺はカバンを持ってすぐ帰ろうと教室のドアに向かった。
机の間をすり抜けようとしたら、勢い余ってカバンの紐が机の端に引っかかってしまった。
「あっ」
カバンが盛大にひっくり返ってペンケースとかスマホとかが床の上に散らばった。
ひえー、いっぱい出ちゃったな、と急いで拾おうとしていると俺じゃない手が散らばった床に伸びてきた。その手が伸びる先を見て俺は固まった。
そ、そ、そ、それは……っ!!!
だ、だめだ!!
俺が取るよりも先にその手はそれを取った。見上げると守沢が不思議な顔をして、俺の大事なBL本を持っていた。
しかも表紙は肌色が多くて際どいやつ。帯もついていて【激萌え間違いなし!!俺様先輩男子×ピュア後輩男子* 僕が知らなかったあんなことやこんなこと…先輩が全部教えてくれた…。】なんていう読まれたら爆死する帯を守沢はガン見している。
「そ、それは……っ!!」
「激萌え…学園青春びーえる…??」
読むなああっ!帯を読むなああっ!!慌てて立ち上がって守沢から奪おうとしたのに守沢の周りには羽風と瀬名、それから天祥院が立っていた。
皆、守沢の手元を覗き込んでいる。
ああああ、終わった!終わった!!君たちの目を触れていいものじゃないんだよそれはああっ!
「か、返して!」
守沢からぐい、と奪ってすぐにカバンの中に突っ込んだ。
「こ、これはその違うから…!」
何が違うんだとかそんなツッコミが来る前に俺は教室を飛び出た。うわああ、どうしよう終わったよ。明日からあいつホモ本持ってた、とかあいつホモなんだってって後ろ指さされたらどうしよう…。
俺は腐男子なだけで恋愛対象は異性なんだよ…。明日の学校が怖すぎる…。今まで皆を不純な目で見てきた罰か…?俺の腐男子生活の危機にその日はご飯が喉を通らなかった。
翌日、学校に行ってみたらさ。想像してた斜め上をいってて俺は驚いた。
「みょうじくん〜、おはよ♪」
朝から羽風に遭遇して俺は固まった。
「は、はよ…。」
えっ、昨日羽風もあの本見てたよな…。ドン引きされてたり…したんじゃないのか…?それなのに羽風はにこにこ笑って近づいてきた。
え、え…。
俺は後ずさりしたけど後ろは壁だ。近づいてくる羽風。俺の顔の横にとんと手をついて、羽風の腕の中に閉じ込められた。
「は、羽風…っ?」
な、なに?何が起こってるんだ…?
「みょうじくん、これ好きなんでしょ?」
にやりと笑って近距離で俺を見下ろす羽風にごくりと唾を飲んだ。か、壁ドンじゃないか…!!え…、ていうか好きって何がだ?!
「ご、ごめんっ」
とりあえず謝って俺は羽風の腕から飛び出した。
「あっ、逃げた。」
走って羽風から離れる。イケメンの壁ドン威力は半端ない。何で羽風にあんなことされたのか分からない。どうしたんだ羽風は…。
教室についてドアを開けると瀬名や守沢と目が合った。
うっ…昨日のことがあるから気まずい…。そろりと目離して席に座った。俺は誰かから何か言われるかとビクビクしていたけど何もない。いつも通り授業を始まってあっという間に昼になった。
喉が乾いたと自販機に行くと瀬名がいた。ミネラルウォーターのペットボトルを手にしている。
小銭を出そうとしたら瀬名が話しかけてきた。
「喉、乾いたのぉ?」
「あ、うん…」
「…これ、あげる。」
「え…?でも瀬名飲んで…」
「はい」
「え、ちょ、」
胸に押し付けられたペットボトルはキャップが空いている。
「間接キス、だから」
俺を見て口角を上げた瀬名はそう言い残して歩いていった。
「……えっ?」
とりあえず今日の様子を見ると羽風も瀬名も俺のこと気持ち悪がってはいない感じ…?というより前よりも話すようになってる気がする。でも壁ドンといい、このペットボトルといい、俺じゃなくて他の生徒でやってくれれば激萌えで嬉しいんだけど…。
不完全燃焼のまま、階段を登って教室に戻ろうとしているとつまづいて転けそうになった。
「危ないっ!」
ちょうどすれ違った守沢が俺の体を支えてくれた。
「ご、ごめん。守沢ありがとう」
「いつでも助けるからな!」
ありがとう、ありがとう守沢。でも顔が近い!整った顔をそんな近づけないで!これも俺じゃなくて高峯とか明星とかなら萌えるんだけど…。
放課後になって俺は天祥院から話しかけられた。
「なまえくん、生徒会室に来てほしいな」
「……えっ?」
「大丈夫、今日は誰もいないから」
「え、俺…?」
「うん、美味しい紅茶を淹れるよ」
にこりと笑う天祥院英智さまに拒否などできるはずもなく…。
俺は生徒会室に連れてこられていた…。確かに紅茶も美味しい。そして天祥院と話すのも楽しくないわけではない。ただ…俺じゃなくて1年の紫之とかだと萌えるな…って思うんですけど…。
なぜに俺…?
昨日から可笑しいぞ?BL本見られてから萌えるシチュが尽く俺に降り掛かってるような…。
「ねえ、なまえくん」
「ん…?」
「君を狙ってる子、多いから気をつけてね」
「…え…?」
「あんな本見て、同性もOKだなんて分かっちゃったら皆動くに決まってるよね」
「天祥院…意味がよく…」
「君の持ってた本で言う平凡受け?かな。それとも総受け…?詳しくないからよく分からないけど、身の安全を守ることだ。」
「は…」
「狼達が狙ってるよ。もちろん僕も含めて。ね」
学院トップの天祥院英智の微笑みはそれはそれは神々しい。間近で微笑まれた俺には言ってることが理解できなかったけど、天祥院の神々しさだけは理解できた…。
そうして、これを機にイケメン男子たちのわちゃわちゃを見て妄想に馳せる俺の快適腐男子生活は無事終了しました。
▼ back ▼