ヤンデレ真緒×男主
「うー、飲んだし家帰って寝てえ〜」
「おい、なまえ、あとちょっとなんだろ〜」
大学の友達2人と歩きながら、自分の家に向かっていた。
2人の帰り道の途中に俺の住んでいるマンションがあるから、途中まで一緒に帰ろうということになっただけだ。
べらべらと喋りながら歩いているとマンションが見えてきて酔っ払って肩を組んできている友達の腹をつついた。
「俺んち着くから離せって」
「あーー?とか言って構ってちゃんだろーー?」
「この酔っ払いうぜっ!」
ケラケラ笑って未だ解放してくれない友達と肩を組んだままマンションの下にきた。
夜も遅くて暗いのに、入口付近に人が立っている。
誰だろうとふわふわした頭で見たら、その人はこちらに向かってきていた。
あ、と思ったときには目の前にきていた。
「なまえ。」
何を考えているか分からない目。何の表情もないその顔に見下ろされていた。
少し焦って、肩を組んできていた友達を無理やり退けた。
「ん、何なまえの知り合い?」
俺に向かって聞いてきた友達に静かに頷いた。
「…うん、」
俺の目の前に立っている真緒。
俺の友達なんて一切見てなくて、真緒の目は俺しか見ていない。それがまた居心地が悪くてぞくりとした。
「じゃ、じゃあな、おつかれ」
早く別れたほうがいいと思って、友達2人に手を降った。
友達たちも分かってないような顔をしていたけど、特に気にせず じゃあまた行こうな〜なんて言って帰って行った。
友達の背中を見送って、真緒に向き直るために後ろを振り向けば、すぐそばにいてその近すぎる距離に得体の知れない恐怖がじわりと生まれた。
「た、ただいま…。」
「……。」
何も発しない真緒が怖くなり、咄嗟に目を逸らした。
何を思っているんだろう。
真緒は俺の同居人で、そして恋人だ。
つい最近付き合うことになったけど、付き合い始めてから真緒は前と少し、いやかなり変わった気がする。
明るくて笑顔が眩しいのはいつもなんだけど、たまに見せる無表情な顔にどくりとさせられる。
俺が他の人と歩いていたりすると必ず真緒はそういう顔をする。じっと俺を見て、まるで俺を責めるかのように他の人じゃなくて俺を見るんだ。
「さ、寒いし中入ろう」
へにゃりと笑ってみせ、中に入ろうと促して歩こうとしたらガシリと真緒が俺の腕を掴んだ。
痛いくらいに握られた腕に、少しビクついた。
「……楽しかったか?」
真緒は静かにそう言った。
ごくりと喉がなった。
「……そんなわけないじゃん。真緒の隣じゃないからつまらなかった…。」
俺は嘘吐きだ。
楽しかったはずの飲みをつまらないと言い、真緒がいないと嫌だ、と言う。
それが真緒を怒らせない方法だから。
震えないように、しっかりした声で、そう伝える。
すると真緒はそれを聞いて初めて顔をほころばせた。
「ははっ、だよな。ずっと待ってた。早く家の中入ろうぜ」
俺の腕を引いてマンションの中に真緒と入った。
部屋の鍵を開けて、靴を脱げばやっと開放感がやってきて眠くなった。
真緒の機嫌も損ねなかったし、早くシャワー浴びて寝たいなと自室に入ろうとしたら、後ろからぐいと引かれて真緒に抱きしめられていた。
「真緒…?」
ぎゅうう、と少し強く腕の中に収められ、真緒が俺の首元へ顔を埋めた。
すう、と音が聞こえたのち、真緒がゆっくりと声を出した。
「……何で他の男の匂いがするんだろうな。」
その言葉を聞いた瞬間、さぁぁと血の気が引いたように俺の顔は青くなった。
「ご、ごめん。」
「…許せない。許せない。許せない」
ボソボソと許せないと繰り返す真緒に俺は焦った。
早く、機嫌を直さないと、じゃないと…。
「真緒っ、ごめ、」
噛み付くようなキスで口を塞がれた。
長いキスのあと、離れた真緒の顔を見て、あぁもう駄目だと悟った。
何の色もない目で俺を見ている。
こうなったらもうダメなんだ。俺にはどうにもできないんだ。
ぐいと引かれて真緒の部屋に連れていかれる俺にはもう抵抗する術はなかった。
抵抗したら、俺を縛る鎖はさらに酷くなる。
俺だけしか見ない真緒。俺を縛り付ける真緒。
怖くて、今にも壊されそうな不安があるのに、そんな真緒に少し快感を覚える俺も俺なのかもしれない。
▼ back ▼