行く宛もなく、飛び出してしまった。

出てすぐに振り向いたけど、玄関から凛月が出てくる気配はなくて、本当に俺は何とも思われてないんだと分かった。

「…っ」

強がったって、欲しい人の心は手に入らない。
追いかけてももらえない俺は恋人でも何でもないただの他人だったんだろうか。

すぐ追いかけて抱きしめてもらえたら、なんて思ったって現実は違う。

追いかけられることもなければ走る必要もない。俺は力の入らない足取りでマンションを出た。

適当にどこにでもあるカフェに入って暖かいドリンクを注文した。

一人、窓際の席に座って窓から見える街ゆく人を意味もなしに眺めた。

楽しそうに腕を組んで歩く恋人たちを見て猛烈に悲しくなった。

人と人が好きになって、両想いになって、付き合う確率ってどれくらいなんだろう、なんて途方もないことを考えた。

俺は凛月とあんな風に街を歩いたことはない。

さり気なく横について歩くだけだった。お互い会話もなく、俺が話しかけたら答えてくれる程度。

…俺は本当に愛されてなかったんだな。

家の中でたまに甘えてくれる凛月に本当に嬉しくて飛び跳ねたいほど幸せだと感じていた俺はこんなにも辛い思いをするなら最初から凛月を好きにならなかったらよかったと思った。

最初から話しかけずに惹かれても無視をしていればよかったのに…。

夜のカフェは人は多くなく落ち着いた空間で、その中で一人肩を揺らして泣くわけにはいかなかった。

必死で涙を堪えようとカップを見下ろした。

もう何を見てもこぼれ落ちそうな涙にまた情けなくて涙腺を広げる。

「…なまえ?」

そっと小さな声でかけられたことによって、俺はぱっと横を見た。反動で涙がぽろりと落ちた。

「…真緒。」

「だ、大丈夫か…?!近く通ってたらなまえを見かけたから…」

「ああ…うん、大丈夫…。」

ぐいと親指で涙を拭った。声が震えてないか心配だった。

「泣いてたのか…?何かあった?話聞くぞ。」

とりあえずここ出よう。という真緒に連れられて店の外に出た。
外は暗くて俺の涙に気づく人などいない。

「俺の家来る?」
「いいの…?」
「おう、もちろん。」

同じ学年で同じクラスだった真緒は凛月と俺の仲を知る一人でもある。
それがまた俺の心を締め付けた。凛月と繋がっているということが俺の心から凛月を消してくれなくて悲しみが深くなる。

「で、何があったんだ?泣いてた理由は?」

真緒の家に上がらせてもらいソファに座った。その時に携帯を確認したけど着歴もメールも何も来ていなかった。
少しだけ心の中で期待していた凛月の連絡は尽く砕け散った。

「…凛月と別れたんだ。」

「え…?」

「…何か…最初から俺だけ舞い上がってたみたいで…、最初から…凛月は俺のこと好きじゃなかったから…」

「そんなこと…」

「…っ、ははっ、なんか馬鹿みたい。一方的に好きで幸せに浸ってたとか…っ、」

「なまえ…。」

きっと俺は酷い顔をしていると思う。ぐにゃりと歪んだ視界からぽろぽろと涙が落ちた。

堪えるように泣いても嗚咽は止まらなかった。

「ふっ、ふふっ、ほんと、馬鹿だよ俺っ…、凛月に好かれるわけないのに、馬鹿みたいにしつこくして、それで…っ、得たものなんて何もなかった…っ、」

真緒はじっと黙って俺の話に耳を傾けている。

「す、好きに、ならなかったらよかった…っ、好きにならなかったら…っ」

口でそう言えば言うほど、心の中で それでも好きで好きで好きで仕方ないんだという思いがこみ上げてきた。

そうしてぐちゃぐちゃになってまた涙として俺の外に出ていく。

好きなんだ、凛月が。

俺のことを好きでいてくれなくても、俺は、凛月が好きなんだ。

どうしようもなく好きなのに。

好きな人から好かれないというのは辛いものだと知っているのに、いざ自分の身に降り掛かって初めて本当の辛さを知った。

「なまえ…。我慢せず泣いたらいい。」

真緒の腕が俺の頭を包み込んだ。

「好きに…、なって、ほしかった…っ、」

真緒の腕の中で、泣いて泣いて体中の水分が出たんじゃないかというほど涙を流した。

泣きすぎて目の下はぷくりと腫れ上がり喉はひくついた。

真緒にしばらくここに泊まったらいい、と言われそのまま泣き疲れて俺は目を閉じてしまった。

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